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ダニエルの行動

お読みいただきありがとうございます。

 ダニエルはぼんやりすることが多くなった。リチャードとララがいなくなったせいだろうか。きっと自分は寂しいのだろう。幼いときから側にいたリチャードが側にいない。帰ってくるかどうかもわからないからだ。安心できるまでララの側にいると言っていた。


安心できるまでとはいつだ?自分で働けるようになって街にも馴染んだ頃だろうか。ララが出で行く前には引き止めろと何度も言ってくれていた。随分怒っていた。呆れていたのかもしれない。



ララは契約を守って約束通りに出ていった。もっと引き止めべきだったのだろうか。契約結婚を持ちかけた時のララの驚いたようでそのくせ嬉しそうな顔が忘れられない。

一瞬輝いた目の光は綺麗だった。


女性のギラギラした目しか見て来なかったダニエルは慌てて蓋をしてしまった。騙されるものかと思ってしまったのだ。




誰かがいなくなるのが寂しいものだとは改めて思い知った。心の中に鉛を飲み込んだようだ。忙しくしていればそのうち慣れるだろう。ダニエルは無理矢理そう思い込もうとした。



デスクの前には処理しなければならない書類がたくさん溜まっていた。そのうちララにしてもらっていた物やリチャードに与えていた書類も回ってくるに違いない。文官を増やそうかとダニエルはぼんやりと考えた。



メリーがお茶を持って執務室に入って来た。

「顔色がよくありませんが大丈夫ですか、眠れていないのではありませんか?」

「大したことはない」

「奥様と別れてしまわれるからですよ、お楽しそうでしたのに。メリーはこれでやっと安心して見守っていけると思っておりましたんです」

「契約だったから仕方がないんだ」

「女性は押しに弱いんです。一度や二度断られて諦めるなんて男らしくありませんよ」

「無事に着いたのだろうか?」

「リチャードがいるので大丈夫だとは思いますが途中の峠は盗賊が出るらしいですからね」



メリーはしれっとダニエルを脅しておいた。盗賊が出る話はダニエルもよく知っていた。護衛をもっと付けておけば良かったかもしれない。今更だが心配になって来た。



夜会で周りを騙すために近づいてきたダンスの時のララの身体の柔らかさや、ワインを飲んでほんのり赤くなった顔の可愛いらしさや看病をしてくれていた時の心配そうな顔が目に浮かんだ。


契約の延長を申し出てみたが断られてしまった。あれはダメージが大きかった。

しかし契約でしかなく好意を持っていない相手に頼まれたところで断るのは当たり前だ。何故それに気が付かなかったのだろう。


ララを愛しているのだろうか?想いを分かっていない男はもう一度自分の目で見て確かめようと思った。


「メリー、ステビノ、隣国へ様子を見に行って来る。留守の間を頼んでもいいだろうか。取り敢えず急ぎの書類は片付けた。ララとリチャードは執務を終わらせて出ていったらしく無かった」


メリーたちは顔を見合わせ恭しくお辞儀をした。

「奥様たちにお会いできますよう祈っております。護衛をお連れになって行ってらっしゃいませ。いい報告をお待ちしております」

「ああ、行ってくる。砕け散る覚悟はできているが」

「戦う前からいけませんよ。勝利をお祈りしております」



やっと前に進めた主人の後ろ姿に古くから勤めている使用人は込み上げて来るものを飲み込んだ。

「奥様はお元気なのだな」

「ええ、リチャードから楽しそうにしていらっしゃると報告が来ているわ。人生のご褒美で旅行をお楽しみくださっているみたいよ」

「それは良かった。これで告白をして連れて帰ってさえくだされば言うことはないが」





リチャードはララに仕事を見つける前に王都を観光しませんかと言ってみた。仕事を始めたら前のようにそればかりになってしまうからと説得したのだ。



その時メリーから早馬で知らせが届いた。ご主人が決心してそちらに向かっているから王都から出ないようにと。

リチャードはニヤリとした。ご主人案外早かったじゃないですか。



王都で観光できる場所は多い。急いで頭の中の地図を広げ始めた。宿の受付に

さりげなく行く当ての所を言っておけばご主人は追いついて来るだろう。

手のかかることだとリチャードは密かにため息を零した。




奥様と街歩きを楽しんでいる時にご主人が遠くで見ているのが分かった。護衛が一人側にいる。後は分からないように隠れているのだろう。


奥様は見るもの全てが楽しいようで笑いかけてくださるけどご主人、なんともないの?嫉妬しないのかな。雑貨のアクセサリーでも髪に当ててみようかな。



髪のアクセサリーを手に取った途端ご主人が飛んで来ようとしたのが見えた。

その時だった。

「ダニエル様じゃないの、どうしてここにいるの?もしかして私に会いに来てくれたの?」


輝くような美女がご主人に向かって話しかけた。

奥様はご主人がこの国にいる事と美人の知り合いがいたことに驚いたようで固まってしまわれた。それはそうだろうな、理解の範疇を超えてているんだから。



「先に来ていた妻に会いに来たんだ。君は誰だ。名前を呼ぶことを許した覚えはない」

「恥ずかしがらなくてもいいのよ。私との縁談を整えに来てくれたのでしょう?」


隣国からの縁談来てたかな、多すぎてわからないけど皆断っているはずだ。

蕁麻疹が出るんだから。しかもこの美女話を聞かない。


「ララ様助けてあげてください、今に蕁麻疹が出ますよ」

「でもとても美しい人だわ、お似合いじゃないかしら」

「痒いのを我慢している顔です。全身に広がったら死にますよ」

「えっそうなの?そんなに怖いの、蕁麻疹って」

「内臓まで行ったら死ぬそうです」

「頑張ってみるわ」




「ダニエル様、来てくださってありがとうございます。会いたかったですわ」

「ララ、君と離れている間何も手につかなかった。寂しかった。会えて嬉しいよ」

「私もです」



驚いたことにご主人がララ様を抱きしめた。

謎の美女は蕩けるような顔のダニエル様を見て退散して行った。


「さっきの方はどなたですか?過去の婚約者の方ですか?」

「知らない人だよ、婚約者なんているはずもないじゃないか。リチャード何処かカフェに入ろう。水が欲しい。薬を飲まないと痒みが止まらないようだ」

「かしこまりました。直ぐそこにカフェがありますので入りましょう」




カフェで落ち着いて薬を飲んだダニエルはララにいきなり抱きしめて悪かったと詫びた。




切ない恋にしたくて書き始めたのですが難しいです。

蕁麻疹は酷いものだと呼吸まで出来なくなり死に至ることがあるそうです。怖いですね。

誤字報告有難うございます。大変助かっています。

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