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辛い思いと新しい出発

お読みいただきありがとうございます。暇つぶしにしてくださったら幸いです。

 書類に正式にサインをする前にダニエルにきちんとお礼を言おうと執務室をを訪れようとしていたララはリチャードがダニエルに詰め寄ってくれている話を聞いてしまった。

「奥様をお好きではないのですか?」

「嫌いではないが、どうしても欲しいわけでもない」

やっぱり私はここでも必要とされていなかった、悲しみが胸を染めた。

リチャードが出てくる前に立ち去らなければとララは踵を返した。



契約を反故にして欲しいわけではなかった。無関心だった二年以上の月日がそれを証明していたから。けれど少しくらい温かな言葉があってもいいじゃないか。貴重な戦力だったと思っていて欲しかった。


ララの心は暗闇に沈んだ。









三年の契約期間が満了を迎えた当日、ダニエルとララは離婚届にサインをして別れた。隣国まではリチャードが送っていくと言い張ったので付いてきてもらうことになった。女性の一人旅は危ないので危険ですと言われればその通りなので言い返せず馬車まで出してもらった。



なんて恵まれた再出発なのかしらとララはありがたさを噛み締めた。隣国までは二週間かかる。途中には峠もあり野盗が出てもおかしくはない。リチャードは剣の嗜みもある心強い味方だった。途中には観光地もあり滅多にないチャンスだったので思い切って楽しむことにした。


観光地は貴族が手放したお屋敷が手入れされ有料で見学出来るようになっていたりメインストリートに屋台がズラッと並んでいたりして目を引いた。



初めての事が多すぎてララは弾む心が抑えきれなかった。



雑貨屋に入ってリチャードにペンをプレゼントした。彼の瞳の色の深い青だった。遠慮していたが記念だからと言うとお返しにと綺麗なレースのハンカチをプレゼントされてしまった。



そう言えば元旦那様からはダイヤモンドを断ってから何も無かったなと思い出した。


それまでは小さな花やお菓子をくださっていた。傷付けててしまったからなのだろか。それとも契約だと思い直ししたからかしら。



ララもプレゼントはしていなかった。

贈ったのは手づくりのクッキーだけだ。

ダニエル様のお金を使う事に抵抗があったのだ。いただいていた給料の中からなら使う事が許されたのかもしれないと今更だが思え、情けなくなってしまった。




「奥様いかがされました?」

「もう奥様ではないわ、でも他人から見たらどう見えるのかしら?」

「貴族のお嬢様と執事でしょうか」

「もう貴族ではないのに?」

「いきなり関係が変わるのも変な感じですのでこのままでお願いします。奥様がお嫌ならお嬢様でも構いませんが」

「名前でお願いできないかしら、今更お嬢様も変でしょう」

「ではララ様で」

「有難うございます、リチャード」



宿は中級クラスのところに泊まることにした。あまり高いところはこれからの生活を考えれば手を出さないほうが良いと思ったからだ。リチャードが宿代は払いますよと言ってくれたが付いてきてもらうだけでも有難いのにそんなわけには行かないと言って断った。


大通りで買い物やお茶を楽しんだ後宿に入った。一人には充分な広さの部屋にはお風呂やトイレも付いていてゆっくり休めるところだった。


思い返せば街でお買い物なんてしたことがなかった。実家暮らしではきる訳がなく、公爵家では外商が来ていた。それに執務や勉強が忙しく外に出ようと思う意識もなかった。


いい体験ができて良かったとしみじみ思った。付き合ってくれたリチャードのお陰だわと眠くなった頭で考えて意識は闇の中に沈んだ。





リチャードは奥様が気の毒だった。あれほど短い間に教育の成果を上げられたのに、元々優秀な旦那様は当たり前過ぎて気が付かない。蕁麻疹が出ない相手など探してもそうそういるわけもないのに手を離してしまった。




触れ合いたい欲が無ければ困ることはないだろうが。子供の頃の歯を食いしばっていた姿を見ていたから幸せになって欲しかったのだ。


だから敢えて奥様に付いて来た。嫉妬という感情が芽生えれば良いと思っているのだが、行動を起こしてくるだろうか、駄目なら奥様の側にいるのも楽しそうだ。守ってあげたくなってしまう魅力がある。自信のない二人がどう出るのか面白そうだ。



侍女のメリーには話を通してある。旦那様に上手く言ってくれるだろう。

なんと別れてしまい、ついに国を出ました。メリーさんが何か仕掛けますかね?

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