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第5話 身だしなみチェックの日


 早朝、明るくて熱い日差し。

 そして煩く鳴り続ける蝉の声。

 そんな環境の中、『鏡山中学校』の正門の前に、一人の女性教師が竹刀を持ち、仁王立ちで待ち構えていた。


「おはようございます! 盛山監督!」

「おはよう山田。(じっーー)」

「ッ……」

「問題なし! 流石は私の育成したバレー部員、きちんとしてよろしい! あと部活以外では監督じゃなくて先生と呼びなさい」

「は、はい! (良かった。問題ありだったら生徒指導室に連れて行かれるところだった。それにしても毎回この日になると盛山監督――じゃなくて先生は張り切ってて困るな)」

「はい! 次!」

 

 今日は全校集会の日だ。なのでそれに合わせて生徒達の身だしなみチェックされる。

 その為、生徒指導の役職に就いている盛山にとっては、自分の存在感を示せる一大イベントであるので、いつもの倍気合が入っているのだ。


「おはよう……ございます」


 続いてやってきたのは普段は大人しく、地味で目立たない女子生徒の瀬名陽向だった。

 

「……行ってよし」


 スルー


「はい。(なんでだろう。スルーされて問題無いのに物足りない気がする)」

「(これといって問題のある生徒はまだ来てないな……むっ!)」

「おはようございます」


 スルー。


 何事もなく盛山の横を通り過ぎようとする生徒を、盛山は竹刀で遮った。


「待て蟻塚。お前の身だしなみチェックはまだ終了してない」

「そうですか。別に問題はないと思いますけど」

「見たところ問題大有りだ! まずは、その髪型はポニーテール禁止だ」

「何故ですか? この季節は長い髪のせいで、首元が熱くなるので、ポニーテールにした方が涼しく感じるのですが?」

「それでもダメだ。ポニーテールはうなじが見えて男子生徒を誘惑する。それから何か間違いを犯す生徒が出現する可能性があるから禁止だ」

「そうですか……(チッ)」

「今すぐ髪を解いてうなじを出さないようにしろ蟻塚」

「……失礼します」

「蟻塚! 無視するな!」

 

『シャアアアアッ!!!!』


 盛山は注意したその瞬間、蛇に威嚇されて怯んだ――がしかし! 


 実際は、蟻塚が放つ危険で何か仕掛けて来そうな雰囲気に盛山が怯んで、そういう風に脳がイメージさせただけである。


 とはいえ盛山は生徒指導担当、ここで反抗的な生徒に怯んだとあっては、今後学校の秩序は乱れて行くことだろう。


 けっして怯んてしまった事を相手に悟られず、自分こそが上の存在であり、尚且つ指導する立場であることを生徒にわからせてやらねばならない

 

『出る杭は徹底的に潰す』


「蟻塚ぁ! なんだその反抗的な態度は! なんなら今すぐに私がバリカンでお前の頭を刈って、バレー部みたいにベリーショートにしてやるぞ!」

「やれるもんならしてみては? その代わり、盛山先生は後悔することになるでしょうね。ウチの親は社会的地位もあることですし」

「くっ……」

「では失礼します。引き続き生徒指導頑張って下さいね、盛山先生」


 蟻塚が去ったあと、盛山は悔しと屈辱で身体が震えた。


 一方その頃、


 丁度能天気に会話を続ける男子生徒二人組が正門へと歩いて来ていた。


「あのさあ千秋、さっきからずっと聞きたかったんだけど、なんでスボンの裾折ってんの?」

「そんなの決まってんだろマコッちゃん。暑いから」

「確かにそうだけどさぁ……」


 気温が上がると制服の長ズボンは薄い生地を使用して作られてるとはいえ、蒸れて暑い。

 その為、千秋みたいに裾を捲って、少しでも冷たい空気を入れたい気持ちを、マコトは分らなくもなかった。


「あともう一つ聞くんだけどさあ、お前の足がやけにツルツルしてるみたいだけど、もしかして脛毛剃ってる?」

「あったり前だろ! もしかしてマコッちゃん脛毛剃ってないのか!?」

「えっ……んなわけないって、勿論脛毛剃って処理してるぜ?」

「だよな〜」

「(脛毛なんて全然処理なんてしてない。てかそんなの前の世界で気にした事もなかったぜ)」←冷や汗ダラダラ

「やっぱり夏は短パン履いて生足を見せつけないとな」

「誰に?」

「女子達にだよ。そうやって露出を増やして、女子の視線を俺達に釘付けにして今年は彼女作ろうぜマコッちゃん!」

「えっ……お、おう」

「有馬パイセン、おはようございます」

「ん? 後ろのその声は……この前の会った狭間光か?」


 放課後デートの時、佳奈と一緒に居たムカつく後輩の声が聞こえた為、マコトは振り向いた。


 するとそこには、長ズボンの裾を何枚も折って膝丈より上にあげて、もはや半ズボンの状態に近い状態にした、挾間光が立っていた。


「プッ……ちょっ! お、お前なんて変な格好してんだ? ダッサ。悪い事言わねえから、さっさと元に戻した方がいいぜ」

「ムッ……」

「いや、やるな後輩」

「へ? 何言ってんの千秋」

「だって女子に生足見せつけるためにここまでできる男子は中々居ないぜ。しかも足が綺麗だし、レベルが高いぜ」

「ふふん♪ 有馬パイセンの隣にいる、もう一人の先輩は分かってますね。それに比べてなんなんですかー有馬パイセンのその普通の格好。そんなんじゃ佳奈先輩は振り向いてくれないでしょうね」

「え!? マコッちゃん、やっぱり山田さんの事好きなん。だとしたらマコッちゃん! この子よりズボンの裾を今すぐにあげて露出を増やさなきゃ!」

「やめろ! 俺のスボン引っ張るな! あと別に佳奈のことなんでどうも思ってねえよ!」

「あっそ。ではお先に失礼して、さっそく佳奈先輩に僕の生足を見せつけちゃって来ますね♪」

「あーそうかい。勝手にしてこい変態野郎」


 そう言ってマコトはムカつく後輩を先に送り出した。


「良いのかよマコッちゃん。もしかしたら山田さん、あの後輩にコロッと堕とされるかもしれねえぜ?」

「だからぁ〜! 別にどうでも良いつーの! それより前様子を見とこうぜ千秋」


 マコトに促されて、千秋は先に正門へと向かった後輩の様子を眺めた。


 すると、前から生徒指導の盛山の怒鳴る声が聞こえて、後輩をおそらく生徒指導室へと連行して行った。


「あぁ……なるほど」

「な? それにしても、夏が始まったな」


 男女逆転世界では夏はどのように変わるのだろうか。


 マコトは何と無くさっきのやり取りでロクな事が起こりかねない雰囲気を感じとり、ため息をつくのであった。


 続く。


 

 

 

なんか女子のポニーテールを禁止してる学校があるみたいでなんか変ですね。それと作者は昔、男子の髪は短くする校則に反抗して襟足を伸ばしてました。

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