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第1話 男女逆転

 男子達よ。

 突然だけど、女子ってなんであんなにウザいんだろうな。


 例えば、この間昼休憩中に俺等男子が集まって学年で可愛い女子ランキングを作って盛り上がってたんだ。そしたらさ――


「ちょっと男子! その話題女子の間で不快なんだからヤメなさいよ!」


 そう言って山田佳奈――(俺の近所の幼馴染で正義感が強く、間違った事が大嫌いな性格で色気も何もない女)が、ズカズカと俺達の話題に首を突っ込んできた。

 

「うっせーな佳奈。お前はランキング圏外だから関係ねえよ。ていうかお前は学年ブスランキング上位だから自覚したほうがいいぞ」

「――ッ!!」

「おいおいマコっちゃん、名前が『真』なだけに直接本人に真実を突きつけるのやめなって」

「いいんだよ。でしゃばり女にはガツンと現実を言ってやらねえと絡んで来てうぜえかんな。そうだ! この際今教室に居る女子に向けて、一人ずつ順位を発表しまーす」

「いい加減にしなさいよマコト! 不快だからやめろって言ってるでしょうが!!」


 激昂した佳奈が俺の襟首を持って掴み掛かってきた。

 

 一応佳奈はバレー部で身長も俺より高く、近くに寄ったら俺を見下ろす感じになる。

 

 けれど所詮こいつは女子。例え運動部でも男子の足元にも及ばないから全然怖くない

 

「おいおい。冗談だって(笑)」

「冗談でも言って良いことと悪い事があんのよ! そんなこんな事もわかんないの!? このチビ! あんたこそ、なんなら今ここで学年で身長低いランキングでも言ってあげようか?」


 チッ……

 こいつ、うぜぇ。


 俺はお調子者でクラスの人気者(自称)だが、唯一コンプレックスがある。それは男子の中では身長が低いことだ。下手すれば女子と同じ身長。

 

 だから陰ながら牛乳を毎日飲んでカルシウムを取ってみたりして努力をしてみたりしてるが中々効果が無くて悩んでいる。

 

「うっせー! 将来余裕でお前よりデカくなるわ!」

「ハッ、多分無理ね。だって一番身長が伸びやすい時期でその身長でしょ? 残念だけどアンタはずっとチビのまんまよ。あっ、そっか! だからあんた自分より弱い女子ばっか攻撃するんだ。同じ男子相手だと敵わないからね。ほんっと男のくせに器が小さいわね。小さいのは身長だけにすれば?」

「……」

「クスクス……」

「!?」


 教室の隅で俺と佳奈の様子を観ていた女子の集団がバカにした笑いを俺に向けている。しかもその中には、俺が密かに想いを寄せている学年一の美人――蟻塚さんもいて、同上品に口を抑えて笑っていた。

 

 その瞬間俺は自分のプライドが粉々に砕けた。

 よくも恥をかかせてくれたな佳奈……。このデカ女のくせにマジでもう許さねえ。

 

「おい佳奈! 流石に言って良いことと、悪い事があんだろ!」

「はぁ?どの口が言ってるの?」

「うっせー!! お前にも俺と同じ屈辱を味あわせてやる!」

「――へっ?」

 

 俺は佳奈のスカートを男子の達の前で思いっきり捲ってやった。


「な! なななな、なにすんのよ! この変態!!」

「うわ、ダッセえパンツ。何だよイチゴ柄って。佳奈は体はでかいくせに、センスはお子ちゃまでちゅねえ。なぁお前らどう思う?」


 俺が振り返って他の男子達の様子を確認すると、前かがみ気味の姿勢の奴、目を見開き注目する奴、あとは離れた席の方から興味が無い風を装いながら、チラチラこちらを確認するムッツリな奴まで多種多様だ。


「おいおい、嘘だろお前ら。この佳奈のパンツだぞ? 全然色気ねえじゃん。だいたいこいつ髪も短くて男っぽいし、女じゃねえじゃん。ヤバいって」

「ッ!!」

「お、おいマコッちゃん。流石に言い過ぎ……って、ヤバ!! 後ろ!」


 親友の千明が警告したくれたけど、もう遅かった。

 振り返れば佳奈が高く飛び上がり、バレーのスパイクを打つ姿勢になっていた。

 そして次の瞬間、俺の脳天にズシンと衝撃が振り下ろされ。俺は頭が潰れたんじゃないかと錯覚した。


「はぁはぁ……最低! 幼馴染だけど、アンタがそこまでクズだとは思わなかった」

「……」

「おい大丈夫かマコト! ヤバイ! 意識が無い! 早く先生を呼んで来い!」

「……」


 俺は何故か天井から俯瞰して意識が無い状態の俺と、混乱し悲鳴をあげるクラスメイト。そして、呆然として俺を見下ろす佳奈を確認していた。


「えっ?要するにこれって死んだって事!? おっ!? なんか体が浮く!」


 意識を失っている方の俺の顔色が悪くなっている。それにつられて霊の俺身体も重さを感じなくなり、上に上昇し始めている。


「嘘だ! まだ死にたくねえよ! ごめん佳奈! 調子に乗った俺が悪かったから! 嫌だ! 死にたくないよおおおお!!」


 最後にものすごい速さで、教室――校舎――街全体――日本列島――そして宇宙へまるで引き上げられるかのように景色が飛び。やがて俺は何もかもが分からなくなった。

 

「――ていうのがここ最近の出来事の筈なんだけど、千明、お前本当に知らないのか?」

「マコッちゃん。何かの訳わかんない事言ってんの?」


 今朝、親友の千明に佳奈の暴力事案について伺ってみたが、知らないという。

 

「そんな暴力事件学校じゃ起きてないぜ? 病み上がりで記憶が曖昧になってんじゃねえの?」

「そう、なのか?」

「そうだぜきっと。だってその日はマコッちゃん、急に前触れもなく倒れて意識を失ったからクラス全体が大騒ぎになったんだぜ?。それから山田さんはお前に危害を加えるどころか、逆に助けたんだぜ?」

「佳奈が……俺を?」

「そうそう、マコっちゃんを王子様抱っこして保健室まで運んだんだぜ」

「王子様抱っこ? なんだそれ?」

「またまたぁ、恥ずかしがんなよ。男子の憧れの抱きかかえられ方だろ? 女子じゃ中々できる人居ないから、されたお前がマジで羨ましいよ」

「ちょ、ちょっと待て。あのさ確認だけど俺がされたのってこういう事?」


 俺はお姫様抱っこをするポーズをしてみせたが、千明はそうそれ! と肯定した。


「うわぁ! ちょー恥ずかしすぎる! 女子に抱きかかえられて運ばれてる所を学校中の奴らに見られちまった」

「まぁ気持ちはわかるぜ? けど男子達の間では俺も山田さんに王子様抱っこやられたいって羨ましがってる奴ばかりだよ」

「いやいやさっきからおかしいって、王子様抱っこじゃなくてお姫様抱っこだろ? あと普通は男が女を抱っこするだろ?」

「マコッちゃん、もしかしてお前マゾ? お姫抱っこなんて、乱暴な女が支配した男に強制的にやらす虐待行為じゃねえか」

「えっ? お前さっきから言ってんの?」

「?」


 俺と千明の間にハテナが浮かぶ。

 というから意識を失って学校に復帰する間、微妙におかしい事ばかりだった。


 例えば、俺が目が覚めた時、病院に居て、男の看護師さんが身の回りの世話をしくれた。


 けど動けるようになって病院を移動してみると、何か違和感がある。


「あれ? 俺の勝手なイメージかな。なんか男性看護師が多くないか?」


 社会の授業で習ったが、男と女も平等に自由な職業に着くことができる。なので男性看護師が居ること事態間違いじゃない。


 けど、明らかにこの病院には男女偏りがある。圧倒的に看護師の男性比率が高いのだ。


 まっ、たまたまそういう病院だったんだろう。


 そして、退院して今朝の自宅。


「ふぁ……おはよう」

「あら? おはようマコト。体調はもう大丈夫なの? 学校に行けそう?」

「うん、大丈夫だよ母さん。それにしても朝余裕そうにしてるけど、朝飯は?」

「――ととと!!! スマン! 寝坊した! 今すぐ朝ご飯作るから待ってくれ」

「あなた、お茶いれて」

「今バタバタしてるのがわかんないのか! これだから女ってやつは――」

「えーと……父さん、母さん、もしかして喧嘩でもした?」


「「別に?」」

「あっ、そう……」


 珍しい光景だ。

 普段母さんば毎朝慌ただしく動いて、俺と父さんの朝飯を作ってくれる。

 そのあいだ俺はダラダラと歯磨きや携帯を弄っていたり、

 父さんは優雅に新聞を読みながらコーヒを注文して母さんを苛つかせる。

 それが日常だった。


「あちゃー! やってしまった。スマン、目玉焼が焦げた」

「なにやってるのあなた、家事もまともにできないの? 呆れるわ」

「……スマン。っと、そろそろ会社に行く時間だから出るぞ!」

「いってらしゃっーい」

「……」


 父さんが出ていったあと。

 俺と母さんだけが残って焦げた目玉焼を食べた。


「ほんっと、仕事はできても料理が下手な男。いいマコト、男の子は将来仕事と家事両方できなきゃ、婿に行けないんだからね! 今のうちに鍛えときなさいよ」

「うん……え?」

「さーてと、今日はどこにランチに行こうかしら」


 ……


「おーいマコト? どーしたぼーっとして……」

「なんでもない」

「そっか……おっ! 噂をすれば来たぜお姫様が」


 教室の扉が開く音がしたあと、俺に脳天スパイクを決めた筈の恐ろしい女――山田佳奈が入ってきて、こっちをじーっと見ている。


「ほらほら、山田さんがこっち見てるぞ、多分お前に気があるんだよ。助けてくれた礼ぐらい言いに行けって」

「あのなぁ、今日のお前なんかキモいぞ、なんでもかんでも恋愛に話を持ってくような奴じゃなかったじゃん。けどまぁ助けて昏れたんなら礼ぐらいいうべきなんだろうな」

「ヒューヒュー! ツンデレツンデレ

「うっせ死ね!」


 畜生、俺の記憶だと佳奈にちょっかいをかけたせいで危害を加えられたのに、なぜか全員と認識が違う。

 理由がわからない。


「よぉ佳奈……」

「あっ、マコト……おはよう。その、体調大丈夫なの?」

「あぁなんとかな。それとお前が俺をお姫様抱っこ――じゃなくて王子様抱っこ? とかいうので運んでくれたんだってな。ありがとな」

「ま、まあね。それよりもあんたちびなんだから、体調管理気をつけなさいよ! 急に倒れたのも、女子に王子様抱っこされたくて、無理して変なダイエットしたからじゃないの?」

「はぁー!? んな訳あるか! てか二度と誰にもやらせねえ!」

「えっ? それって……」

「――てか流石に背が低いとはいえ、俺も男だし? 流石にお前意外の女子には持ち上げられねえよ、舐めんなよデカ女」

「……(カー///)」

「ん? どした? おーい佳奈ー?」

「どれどれ?」

「――わっ!?」

「!?」

「へぇ、マコト君、意外と私でも持地上げれそう。今度はご所望なら私が王子様抱っこしてあげるよ?」

「あ、蟻塚さん!?」


 流石の俺でもこれはショックだ。

 まさか意中の女子に抱き抱えられるなんて、どんだけチビで貧弱な体なんだ。


「蟻塚さん、なにしてんのよ! 急に男子の身体に触って抱っこするなんて、それセクハラどころかはんざいよ!」

「えっ? けどこの前山田さんも勝手にマコト君を抱っこしてたじゃない」

「あれは緊急事態だからいいのよ! てか早くマコトを下ろして」

「はいはい。ふぅ……」

「……(ドキドキ。蟻塚さんにギュッと抱っこされた)」


 下ろされた時、ちょうどチャイムがなって担任の教師が教室に入って来た。


「全員席につけ、出席とるぞー。おっ、有馬! 今日から復活したようね」


 担任教師の佐藤柚希先生だ。

 今のところまだ変な様子はない。


「蟻塚と山田、なーにやってんの? 早く席につきなさい」

「はい、わかりました」

「……」


 佳奈は蟻塚さんを睨みつけて見送ったあと、俺の方に近づいてボソッと呟いた。


「あんた隙ありすぎ、特に蟻塚さんは〇〇〇〇って噂があるんだから気をつけなさい」

「え?」


 佳奈の口からとてもじゃないが言えない放送禁止ワードが差囁かれた。


「どうなってんだ? やっぱりなんか周りがおかしい」


 俺は周りの環境の微妙な変化を探る為の、昼休憩に学校の中を探る事に決めた――。


 続く。

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