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まさかの入学式 後編

なんとか眠らずに校長の話を聞き終えた、おそらくスカートはいてなきゃ完全寝てた…、俺は今、1年4組の教室にいる。


入学式が終わったらさっさと帰れるもんだとばかり思っていたがどうやらホームルーム的な物をするようだ。教科書も今日配られるみたいだ…。


しかし教室は静かで、ほとんどの生徒が着席してじっとしている。

ちらほら2、3人のグループを形成して喋っている奴もいるようだ。まあおそらくそれは中学からの知り合いかなんかなんだろう。

今日から数日間の自分の行動がそのままこれからの新しい交友関係につながるのだ。教室が変な緊張感に包まれていても仕方ないと言えば仕方ない。


ちなみにこの教室にはユージもいる。まあ寝ているようだが。

そう。あの鈴木湧二だ。本来ならば俺はこいつと喋っていたんだろうが残念ながら今の俺、響子では初対面だ。

まったく、ユージが同じクラスとは……ボロが出なきゃいいんだが…。肝に銘じろ俺!俺は今ユージと初対面なんだ…俺はユージと初対面!

そしてこの学校において現在、俺が唯一喋りかけられる相手、鏡哉は、なんか入学式の後先生に連れて行かれた。これは俺の推測だが、教科書を運ばされているのではないだろうか?ほかにも数名の男子生徒が連行されていたからな。


俺がボーっとしていると突然横から


「あーーーーーっ!!」


という声が響いてきた。教室中の全目線がこちらに集中する。


「あなたは!!」


どうやら俺を見て仰天しているらしい女生徒。なんだ?何かしたか俺?


「あの時の人じゃないですか!?」


何のことかさっぱりわからないが……。

同い年の奴に敬語を使われるというのは気持ち悪い。


「えぇと。何のことかわからないんだがとりあえず敬語はやめてくれないかな?」


「あ!え?そうですか!?ゴホン!では改めて…あなた一昨日駅前でガラの悪い男にからまれてた人だよね!?」


あぁ。あの時の野次馬か…。そういやこんな奴がいた気がする。警察に通報してくれたいい奴だ。

まあそのおかげで家までダッシュすることになったんだけども。


「あー。…うん。そうだけど?」


「やっぱり!!いやあの時はホント焦ったよ~。もうなんかこの人殺されちゃうんじゃないかって!でもおんなじ歳でおんなじ学校だなんてすごい偶然だよね!?」


おいおい。大げさだなこの娘は…見ろ。俺たちへの視線がより一層強まったじゃないか…。

とか思ってたらもう一人出てきた。


「へぇー。あなたが藍花の言ってた人ね…。私は千堂実希せんどうみき。こっちのうるさいのが伊藤藍花いとうあいかよ。よろしく。えーと…?」


この千堂とかいう人はこの伊藤という人の友達なんだろう。

しかし長い髪だな…。ブロンドがかったその綺麗な髪は、腰にまで届こうかというくらい長い……委員長とかが似合いそうだな。雰囲気がソレっぽい。

伊藤さんとやらは…なんというか子供っぽいな…。背が低いというのもあるが…この髪形とこの童顔のせいだろう。

しかし自己紹介されちゃあこっちも返さないわけにはいかない…。


「…斎藤…響子です。」


「もう。敬語いらないってあなたが言ったんじゃないの。響子ね。タメ口でいいわよ。それより…藍花の言ってること、本当なの?この娘の言うこと結構当てにならなくて…。」


なかなか女言葉で喋ろうとしても上手くいかないもんだなぁ。

斎藤響子よ…。うわダメだ。これはいかん。


「もう!ほんとだって!!言いよってくる男をかっこよくあしらって、うわカッコいいなって思ってたら、捕まえられちゃって大ピンチになったの!!そこに颯爽と誰かが走ってきて目にもとまらぬ速さで悪人たちを蹴散らしたのよ!!」


…なんだかところどころ若干違うような気もするが概ね合っている様な気もする。


「んー。まあそれで合ってるかな。」


「ほらね!?」


「本当だったんだ…!」


「だから言ったじゃない!あたし警察に通報したの初めてなんだから……事情聴取されたとき様にムービーも撮ってたし。………あ。」


なんだって?


「え!?それなら速く見せてくれたらよかったのに!!」


「あはは。ごめんうっかりしてた。」


おい……!!そんなこと言ったら……。


「なになに?俺にも見せてよ。」


ほら見ろ。

何とかほかの人(主に女子)と喋ろうとしてたアホそうな奴がここぞとばかりに話に入ってきやがった。

そうなるとまたもう一人、また一人と寄ってくる。


「お?俺も俺も!」


「え?何?何見んの?」


なにが何?だよお前ら。ずっと聞いてただろうが!


俺はできるだけ目立ちたくなかったのに…。


「よし。それじゃあ再生するね。」


もはや教室にいた7割以上の生徒が伊藤さんの携帯の画面に群がっている。何なんだよまったく。

なんか恥ずかしいじゃないか……。


いやちょっと待て。肝心なこと忘れてたよ。俺チャラ男の顔面に蹴り入れてんじゃん。

やばいって!そんなの上映されたら俺の平和なスクールライフが…!!

俺は喧嘩なんて全然しない普通のやつなんだよ!!あの件だけ例外なんだよ!!


「へっへっへっへ。捕まえたぜ……」


ん?俺がすでに捕まえられている。


「うわ。ヤベーじゃんこれ。マジだよ。」


「この男サイテーだよね。」


どうやら問題のシーンは撮られていないようだ…。

よっしゃ!!よくやった伊藤さん!!


「斎藤さん…。大丈夫だったの?」


見知らぬ奴が聞いてきた。俺は名乗った覚えはないが…。まああんな静かな教室で自己紹介しちまったんだ。仕方ないか。


「ん、まぁだいじょ…」「ほらほら見て!ここであの人が現れるのよ!!」


………思いっきり鏡哉のシーンは写っていた。あちゃ~。


「キャーーーッ。」


「なに!?かっこよすぎじゃない!?」


「……すっげぇな。」


「何者なんだ!?」


教室が一気に騒がしくなった。うん。まああの蹴りがカッコいいのは認める。

俺は悪くないぞ。この流れは止められなかった。俺を恨むなよ鏡哉。伊藤さんを恨め。


その時教室のドアが開き担任と思しき男が入ってきた。


「お?もう仲良くなったのかお前ら?感心感心。」


後ろに、教科書の入った段ボールを持った生徒たちを引き連れて。


「……え?おい、アイツ…。」


もう気づきやがったかこいつ。アホみたいな顔して、以外と鋭いじゃないか。


「うおっ。おまえは!?」


「おぉーーー。」


「これまたなんという偶然。」


「わぉ……。」


再び教室がざわつく。


「…ぐぐ………む?……おう!鏡哉じゃないか。」


今ユージが起きた。


「鏡哉…!鏡哉っていうのか!是非!一緒に空手部に入ろう!!」


「なっ。君にはきっと柔道の方が向いているぞ!!」


なんか勧誘し出す人が現れた。


「はぁ?いや俺は…」


「是非!!」


「おいこらー。いい加減席に着けよお前らー。サッサとすることして帰りたいだろー?」


そこでやっと皆が席に着き、一応騒ぎは収まった。


しかしまた、よくわからん状況になってきたぞ。まぁ俺には実害なさそうだしいいか。

鏡哉も少しは苦労するがいい。


こうして俺の高校生ライフは幕を開けた。







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