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まさかの入学式 前編

4月5日。今日は、俺、斎藤鏡哉の入学することが決まっていた県立陣台(じんだい)高校の入学式の日である。

しかし入学式の7日前に突如女に変貌してしまった俺、現・斎藤響子は当然、この高校に入学することはできない。そう思ってたんだが…。

俺は今、陣台高校の制服を着て、陣台高校の門の前に立っている。こんな展開、誰が予想できただろう?


昨日の朝、俺と鏡哉は母さんに叩き起こされた。


「なんだよ……まだ8時じゃんか……昨日ずっとゲームしてたから眠いんだよ…。」


鏡哉が目をこすりながらテーブルにつく。


「…………眠ぃ。」


これは俺だ。元々朝は弱いのだが、どうにもこの体になってからより一層ひどくなった気がする。


「あんた達、昨日二人して夜中までゲームしてたんでしょ?明日入学式なんだし、はやく生活リズム元に戻さないと駄目よ?特に響子、夜更かしは肌に悪いのよ?」


…そうか…明日はもう入学式なのか…。

ああ。と鏡哉が答える。


「ちょっと聞いてるの?響子?」


「…ぇ?」


「あんたも!目ぇ覚ましなさい!あ。そうだ!後で制服取ってきなさいね?ほら。あの、中学の制服買ったところ。覚えてるでしょ?」


はい?今なんと?制服だって?


「…え?なんで。」


「なんでって?明日っから学校じゃないの。まだ寝ぼけてんの?」


「……俺が?」


「あんたがよ。」


「鏡哉じゃなくて?」


「鏡哉もよ。」


「陣台高校に?」


「…嫌だった?」


いやいや。嫌なはずがないが…そんな簡単に…?


「そんな簡単に…?手続きとか…いやそれ以前にもっと色々…。」


どうやら鏡哉も初耳のようだ。


「知らないの?あの高校、定員割れしてるのよ。だから特別に編入許可もらえたわ。…嫌だった?」


「いやすごいありがたい。」


母さんの行動力はすごい。


「いや入学式から編入とは言わんだろ…。それに入試受けてねぇのになんで?そもそもどこの中学も卒業した記録がない奴が…なぁ?」


鏡哉は納得がいかないようだ。


「そこにはさすがの母さんも苦労したわ。まあなんにもやましいことはしてないから安心しなさいな。」


「なんじゃそりゃ!?安心できねぇ!」


鏡哉、うるさいなぁ。俺は朝からこんなテンション高かっただろうか。いやそれにしても眠い。


「じゃあ後で制服取りに行ってきなさいね?もうお金払ってるから。」


「制服って本人が行かなくても作れるのか?」


「昨日ザイエーで測ってもらったじゃないの。それを教えたら済む話でしょ?昨日パート行くついでに注文したのよ。明後日入学だから急いで!!ってね?」


「あぁ。なるほどね。」


「さて、朝ごはんできたわよ。…いい加減響子も目ぇ覚ましなさい!!今日の朝ごはんは昨日のカレーよ!」


「はぁ!?」


「うげ!?」




そんで、なんだかよくわからないうちに入学式本番を迎えてしまったわけだ。そして、またなんだかよくわからないうちに始まった式も、もう後校長のあいさつを残すのみとなった。どうして校長という生き物はそろいもそろってみんな話が長いのだろう。話し始めてはや20分経っているじゃないか。


昨日は眠くてよく考えてなかったが、俺はほんとに入学してよかったのだろうか?そんなに多くないとはいえ、中学からの顔見知りもちらほらいるんだが……。一体母さんはどんな方法を使ったのだろうか…?


そしてこの制服。なんてことはない、普通のブレザー…なんだが。


スカートが……スカートがスースーして落ちつけねぇ!!こんなもの俺は衣類として認めんぞ!

春とはいえこの体育館、結構涼しい。足が寒い。


ふと隣を見ると、鏡哉が居眠りをしている。出席順で男女交互に並んでいるのだ。こいつも俺も7番目。俺は朝が予想以上につらいと分かったため、そうそうにゲームを切り上げて寝ることにしたが、こいつはそのあとも、しばらくやっていたらしい。

俺が朝早くに母さんにまたしても叩き起こされて髪の毛やらいじられている間も寝ていたくせにまだ眠るとは…。呑気なもんだぜまったく…。


幸い俺と鏡哉は同じクラスだったが、それでも俺はこれから上手くやっていけるのだろうか…?

高校に通えるのは嬉しい限りだが、それが不安で仕方がない。


はぁ。とりあえずは今日、無事に一日が終わりますように。














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