第55話 ドライベリーを作る
ベリーのジャムは黄色が2本、赤が2本できあがりました。黄色のほうが甘味が強く、赤のほうが酸味が効いています。
山ほどのベリーを採らせていただいたので、黄色と赤を1本ずつ、おばあさんにプレゼントしました。
「あらあらあら、いいのかしら」
「ええ、どうぞ貰って下さい」
ちなみに、双子たちが摘んだり、食べたりした場所だけ、ぽっかりとベリーのない緑一色の空間になっています。でも、それ以外の場所では、ベリーはまだたくさんなっています。これを、全部収穫することなんてできるのでしょうか。
そして肝心の双子の手元のカゴは、山盛りのベリーです。さすがに食べ過ぎたのか、もう食べる気にはならないようです。
私たちはそのままカゴを抱えて泊まっている部屋へと戻ります。
「さてと、ダニーたちが採ってきてくれた物はどうしようかな」
生の状態でカゴのままインベントリにいれてもいいのですが、2つあるので1つは生、もう一つはドライフルーツにしてみることにしました。
私は試しに大きめの赤いベリーを1つだけ手にしてから、『ドライ』と呟きます。
「わー」
「しわしわー」
掌にのっていた赤くて艶々だったベリーの実が、乾燥して赤黒く変わり、皺皺になっていくのです。双子たちが声をあげるのも当然かもしれません。
「さて、味はどうかな?」
私はポイっと口の中に放り込みます。
「んっ!?」
あまりの甘さに声がでません。
表面を乾燥させた感じなので、中はまだ水分がある状態です。そのおかげで、ねっとりとした食感があります。例えるならば小さな『干し柿』でしょうか。
味のほうは、生の赤いベリーは酸味がたっていたのに、乾燥させたものはとんでもなく甘く変わりました。
「どうしたの!?」
「ロジータ姉ちゃん、だいじょうぶか!」
私が無言なのを、双子たちは何を勘違いしたのか、心配の声をあげます。
「だ、大丈夫、大丈夫よ。それよりも」
私はこの甘さを双子たちにも味合わせたくて、もう一度赤いベリーを2個、同じように『ドライ』で乾燥させます。
「食べてみて」
双子の口へと差し出すと、二人とも素直にパクリと食べます。
「んっ!?」
「あまっ!」
この赤いベリーは生よりも乾燥させたもののほうが美味しいかもしれません。黄色いベリーも乾燥させてみましたが、こちらは甘さはあまり変わりませんでした。
私とサリーと目があうと、同じタイミングで頷き、すぐさま残りの赤いベリーを乾燥させはじめました。
コンコンコンッ
『お夕飯だよ』
集中し過ぎたようで、気が付けばおばあさんが夕飯の声をかけてくるような時間になっていたようです。ドアを開けて、おばあさんに挨拶をして後をついていこうとした時。
「おばあちゃん、これ、どうぞ」
サリーは自分が『ドライ』で乾燥させた赤いベリーを差し出しました。
「おや、これはなんだい?」
「フフフ、いいからたべてみて」
小さい子のいうことではありますが、見た目が赤黒くしわしわの物なので、おばあさんも躊躇します。
「ほら」
サリーは1粒、自分で食べてみせたので、おばあさんも口にしてくれました。
「!?」
「あまいでしょ?」
「ああ、凄く甘いね。これはなんの実だい?」
「ベリーの赤い実です」
「これがかい!?」
赤い実は酸っぱい、というのが常識だったので、これほど甘くなるとは予想外だったのでしょう。
乾燥したらこんなに甘くなるとは思ってもいなかったようで、かなりの衝撃だったようです。
「はー、赤いのがこんなに甘くなるなんてねぇ」
「これは生活魔法の『ドライ』で乾燥させましたけど、天日干しでも乾燥できると思います。むしろ、天日干しのほうが、もっと甘味を引き出すかも」
「これ以上かい!?」
「たぶん、ですけどね」
私の言葉に、おばあさんも半信半疑です。
とりあえず、天気がよくなったらやってみると言っていたので、美味しいドライベリーがたくさんできるといいな、と思いました。
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ベリー:大きさはミニトマトくらいのサイズ。
赤も黄色も同じ木になる。緑→赤、緑→黄色と色が変わる。
いつも読んでくださる皆さま、ありがとうございます。
大変申し訳ないのですが、明日から3日間(9/16~9/18)、書籍化作業のため、その期間休載とさせていただきます。
申し訳ございません<(_ _)>




