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転生5回目!? こ、今世は楽しく長生きします!  作者: 実川えむ
ロジータ、隣の領を目指す

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第38話 三人で初めての野営をする(3)

 その後、たて続けにチリリン、チリリンと鳴り続けます。


「うるさいね?」

「なんのおと?」


 双子も頭を傾げています。


「この音が鳴った時は、何かが中に入ろうとして結界に触れた時なの。何がいるかわからないから、絶対外に出てはダメよ」


 私が諭すように言うと、双子は顔を強張らせて頷きました。

 双子にはそう言ったものの、私は念のため、外の様子を確認しなくてはいけません。外にはダーウィしかいません。結界の中とはいえ、彼も怖がっているかもしれません。

 私はそっとテントの入り口から、外を覗きます。

 すでに日は落ちていて真っ暗ですが、『夜目』のスキルがあるので、『暗視スコープ』のようによく見えます。


 ――あ、いた。


 ダーウィの立っているそばに、野犬が数匹集まっているようです。そういえば、場所を決める前に『探知』スキルで確認した時に、遠くにあった獣の気配が野犬たちだったのかもしれません。あまりにも遠くて小さかったので、気にもしていませんでした。

 そのダーウィですが、怯えているかと思えば、野犬相手にブルルルル、ブルルルルと喧嘩を売っていました。

 結界があるから強気なのかもしれませんが、そのたびに野犬が体当たりしてくるのです。

 ダーウィ、煽りすぎです。


 ――最初はヨボヨボのおじいさんミトスドンクだったのに。


 思わずクスッと笑いながら、私はこっそりとテントから出ます。

 結界の外で野犬たちはギャンギャン吠えているのでしょうけれど、こちらには聞こえてきません。しかし、延々と結界にぶつかって鈴の音が止まらないのでは、落ち落ち寝ていられません。

 吠えまくる野犬のうち1匹が私に気付いたようで、私の方へと向かってきました。

 しかし結界があるのがわかってるのか、凄い顔でウロウロするだけで中に入ろうとはしません。


「入れないのわかってるんだったら、他所へ行けばいいのに」


 私の言葉は聞こえないだろうし、そもそも通じないのはわかっていても、ついつい独り言が出てしまいます。


「じゃあ、これでもくらいなさい」


 私はインベントリからある物を取り出しました。


「フロリンダ特製糞玉~!」


 大きめな瓶の中に『ピンポン玉』くらいの丸薬がつめられています。

 名前の通り、ワイルドグリズリーの糞に、ガリー(にんにく)とキーラ(にら)、ニオイのきついユーリスの葉を混ぜこんだ物です。魔物除けの丸薬ですが、獣にも十分通用します。

 元々は魔物除けの魔道具が壊れた時用にと作っておいたモノでしたが、当時は1回も使うこともなかったのですが、こんなところで使うことになるとは思いもしませんでした。

 私は口呼吸しながら瓶の蓋をあけると、1粒だけ指先でつまんで、すぐに野犬のほうに投げ、すぐに蓋をしめました。本当に凄いニオイなのです。

 私はすぐに直に触ってしまった指先だけでなく、周辺の空気もすぐに『クリーン』をかけます。


(キャンッ!?)


 目の前に落ちた糞玉のニオイに、野犬が猛ダッシュで逃げていく。


(キャンッ)

(グワッ)

(ギャワワワっ)


 あの1粒だけで相当なニオイなのです。野犬の嗅覚だったら、たまったものではないでしょう。あっという間に逃げていきました。


「ダーウィ、お疲れ様」


 ブルルルル


「でも、張り切りすぎちゃダメだよ。明日もあるんだし」


 ブルッ


「ほら、これでも食べて」


 インベントリからジーニス(にんじん)を1本取り出してダーウィに差し出すと、美味しそうにコリコリと食べていきました。


「ロジータ姉ちゃん」

「もうだいじょうぶ?」


 双子がテントから頭だけを出して声をかけてきました。


「うん、大丈夫よ。さぁ、お風呂に入ろうか」

「はーい!」

「はーい」


 ふと、外に落ちている糞玉のことが頭をよぎります。


 ――朝まであのままでいいか。撤収するときにでも燃やせばいいし。


 私はさっさとテントの中へと戻るのでした。

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