緒鳴堂 第伍話 参P嫌なんだけど……
第伍話 参P嫌なんだけど……
「ママ〜! トリプルタワー朝摘み苺パフェ弐つ!」
「御免! 苺切れてるんだけど?」
「苺無いの〜……?」
「苺はあるよ!」
「有るんなら出してよね……? 何切れてるって?」
「切れてるのよ! 苺! フルーツ盛り用にさ! 丸のまんまが無いのよ!」
「切れててもいいよ! お願い!」
「わたしの美意識が許さないから駄目!」
「はあ? 勘弁してよ! 今日は苺気分なんだから! 切れてても、何でもいいから出してよね! 奢りなんだからさ!」
「あ〜……成る程ね……また新しいの見つけたんだ!」
「そんなんじゃ無いし……」
「済みませ〜ん! ここって喫茶店何ですよね……? は……始めてなもんで……」
「ママ! いきなり揉んでだって! ドスケベ来た〜っ!」
「いや……そ……そんなこと、言ってませんから!」
「そんなに早くいかれたら、たまったもんじゃ無いわよ! 初見さんね?」
「喫茶店ですよね? 待ち合わせで来たんですけど……セット料金とか、彼処に書いてあるもんで……?」
「ママ〜っ! また揉まれたわ! 彼処とか言ってるし?」
「おっそ〜い! 何してたのよ! 珠子さん! アレ、わたしの客だから!」
「なんだ! 冷夏ちゃんの金蔓か! はいはいはい……どうぞ! お入んなさいな!」
「留子ちゃん? ここで良いんだよね……?」
「はあ! わたしがココに居んじゃん! 何ビビッてんのさ!」
「ここって……喫茶店だよね!」
「あったりまえじゃん! 喫茶店だよ!」
「セット料金って……?」
「チャージ料金、見落としてるよ?」
「チャージ?」
「席のチャージだよ? 下にちっちゃく赤字で米印、喫茶のみとお申し付け下さいませって書いてあったでしょ!」
「書いてあったっけ……? 見逃してた」
「ば〜か! 入りなさいよ!」
「き……喫茶で、お願い致します!」
「馬鹿にしてんの? 今の流れ聞いてたら分かるっつうの? ねえママ! 笑ってるし……ここっ!
早く! パフェ作ってくれてるよね?」
「留子ちゃん……ここのパフェって高くないのかな?」
「お高いに決まってんじゃん! わたしへの対価だと思えば安いもんよ!」
「苺切れてて、無いからね!」
「はあっ! まだそんな事言ってんの!」
「わたしの美意識が許さないからね! 他のにしな!」
「頑固者! ベリーはあるの?」
「メロン!」
「流石に……メロンは……駄目でしょ」
「あんた! メロンで良いね?」
「えっと……メロンですか? 何の話しでしょうか?」
「於菊! キング大玉メロンパフェトリプル弐つ! 注文入ったよ!」
「ママ! 大玉は駄目だって?」
「あんたのご執心さんの根性、見せてもらおうじゃないのさ!」
「だってさ……そこ突っ立って無いで……ここっ!」
「相談したい事があるって来たんだよ……根性って何? 約束したのは、お手軽苺パフェじゃ無かったっけ……?」
「聞いてたでしょ! ココ!」
「セットとかチャージとか……れいかちゃんとか? ?でいっぱい何だけど……?」
「漢でしょ! ひょろひょろモヤシ見たく、突っ立って無いでココッ! 早く!」
キョロキョロ……。
「警戒しなくて大丈夫だからさ! 誰も取って食ったりしないからさ!」
「野獣の檻に入る気分何だけど……」
「言ってくれるねぇ……取り囲んでやろうかね! あははははは……」
「ママ! からかうのはそれぐらいにして! 大事な話しがあるんだからね!」
「はいはい……喫茶だね! 入んな!」
「有り難う御座います!」
「遅いよ!」
「御免……」
「ねぇ……聞いてよ! 社長がさ! 参Pに行けって言うのよ!」
「マジ! 良かったね!」
「良くないし! 参Pだよ! 嫌だし!」
「参P、良いと思うけどな……?」
「じゃあ……わたしの代わりに行ってよ?」
「それは……社長に言われたの、留子ちゃんだよね?」
「そうよ!」
「もう決まりなの……? それに、れいかちゃんて何?」
「分かんないわよ! 仕事中に呼ばれたでしょ! あん時言われたのよ! あっ! 冷夏は、あっちでの源氏名ね!」
「ここで働いてるの? 社長に呼ばれてたっけ!」
「まったくさ……隣りで仕事してんのに、気付かないわけ……? 呼ばれたのよ! 参P任すってさ! ここ、わたしの実家だから!」
「えっ? 実家なの?」
「そうだよ! 言ってなかったっけ……?」
「聞いて無いよ!」
「それはもうわかったんだからいいじゃん! わたしは参Pの店長何て嫌なのよ! 重たいんだよ!」
「緒鳴堂の道を挟んで斜め前に、今建ててる店舗の店長なの? チーフじゃ無いんだ! 大抜擢だね!」
「わたしは緒鳴堂のチーフパティシエなのよ! 誰が後やるのよ?」
バン!
「お任せあれ!」
「はあ……それって、わたしに出てけって言ってるよね?」
「そんなこと言って無いし!」
「言ってるよ!」
バン!
「わたしに参Pに行けって言うの! 参Pだよ! 良いんだね? もうわたしが居なくなるんだよ!」
「えっと……斜め前だし、緒鳴堂別館の参Pパック専門店だよ! いつでも寄れるじゃない?」
「分かって無いし!」
「ねぇ……ママ……大丈夫? 大声で参Pとか言ってるけど……?」
「お客来てないから、ほっとけばいいさ! 於菊! 追加でフルーツタワー入れとくれ!」
「えっ……? フルーツタワー……? はあっ……ママ! 何言ってるのよ? 何処にもお客居ないよね! サービスしてくれるの?」
「馬鹿言ってんじゃ無いよ! 漢見せてもらおうじゃ無いさ! わたしの店でいい度胸してんじゃないさ!」
「勘違いして無い? そんなんじゃ無いからね? 相談に乗って貰うついでに、貯まった貸しを返してもらってんだよ!」
「そうかい! もっと分かんないようにさ、ヒソヒソとやんなよ! デッカイ声張り上げて何相談してんだい? 全くさ! 困った娘だよ!」
「えっ……ママって? 留子ちゃんの本当のお母さんなの?」
「そうよ! ココ、実家だって言ってたじゃんか? 聞いて無かったの?」
「あっ……始めまして! 緒鳴堂で壱緒に働かせてもらってます……」
「まだ名乗らなくても良いよ! あんたの漢、見せてもらってからじゃ無いとさ! 店、クローズだよ! 今日はあんたの、貸し切りだからさ!」
「ママ! 勘弁してよ?」
「ねぇ……貯金幾ら位あんの? 今の手持ちは幾らよ?」
「何言ってんだよ? 相談したい事があるって……来たんだからね……?」
「フルーツタワー入りま〜す!」
「留子ちゃん……アレがパフェなの……?」
「知らないわよ!」
「知らないって……頼んだの留子ちゃんだろ……?」
「さ〜て……ゆっくり話し聞こうかね! みんな! グラス持って出といで!」




