緒鳴堂 第弐話 びらびら
第弐話 びらびら
「お決まりですか?」
「まだ、迷ってるんですけど……」
「これ……紅生姜天ですよね?」
「びらびらですね! そうですよ!」
「これも……そうなんですか……?」
「紅い棒ですか……? 刻んだ紅生姜と玉ねぎがお魚の擂身に練り込んで御座いますが……」
「そっか……サイズも、ああ……おお……えっ! の、参種類何ですね?」
「まあ……見た感じで分かると思いますけど……このちっちゃいの、ああ……ですよね! こちらはその倍、そこそこなので、おおですよね! そしてこちらは更に、おおの弐倍になっておりますので! インパクト的にも、えっ! て、お分かりいただけますよネ! 感覚的にも、個人差が御座いますけど……うちはこの感じで、お伝えさせて頂いておりますが……?」
「はぁ……そうなんですね……成る程、大、中、小ってことか」
「大、中、小では無く、ああ、おお、えっ! で、ご提供させて頂いておりますので! お間違い無くお願い致しますね!」
「あのう……済みません!」
「お決まりでしょうか……?」
「……まだ、迷ってるんですけど……これって煮抜きじゃ無いんですか? しろぬきって有りますけど?」
「地域によっては、煮抜きと言われてるとこもあるとは思うんですが……こちらはお客様からの経ってからの要望で、しろぬきで出してくれ! が、発祥で御座いまして……創業以来しろぬきで皆様にも親しまれております! 申し訳御座いませんが、しろぬきでお願い致します! 桜チップの燻製の燻たろう、お出汁が染み込んだしゅんたろうも御座います!」
「弐子玉稲荷にもお値段変わらずで変更が可能で御座いますよ! 如何でしょうか……?」
「弐子玉稲荷って、このしゅんたろうが入ってるんじゃ無いんですか?」
「弐子玉稲荷には、漬け込み時間の比較的若いものが入ってるんですよ!」
「若いって何ですか?」
「あっ……済みません! えっと……」
「漬け込み時間が浅いんだよ!」
「あっ……済みません! 有り難う御座います!」
「若いって言うのは……漬け込み時間が浅いものです」
「浅いんですか……? 漬け込み時間が短いんですかね……?」
「そうですそうです!」
「あれ……このびらびらのとこに、巻きとかローズって書いてあるけど……気になるんですけど……」
「ああ……気付かれましたか、裏メニューです! もち、ご注文なさいますね!」
「気付くでしょ! こんなに堂々と書いてあったら! いや〜……」
「かなり気になっておられるとお見受け致しますが……?」
「そうなんだけど……? 現物を見てみないことにはね……?」
「そうですか……残念です……」
「えっ……もう少しゴリゴリに、押してくれたりしないんですか? もう壱押ししてもらえると、踏ん切りがついたんだけどな?」
「そんな……無理強い何てしませんよ! ご注文はお決まりですか……?」
「じゃあ……びらびらを……」
「何枚になさいますか?」
「びらびらって、枚なんてすね?」
「そうです! 何枚になさいますか?」
「この……ローズって気になってるんですけど……? 冷やかしじゃないですね?」
「えっと……はい」
「こちらがローズのメニュー表です! どうぞ御閲覧下さいませ! 蕾、壱分から玖分咲、御開帳となっております! お値段も蕾が100圓プラス税、壱分毎に50圓上がるとお考え下さいませ!」
「急に具体的な説明有り難う御座います!」
「ご注文頂いてからお作り致しますので、10分程度お時間を頂きます!」
「それは……いいんですけど(聞いて見ただけなんだけどな……)……」
「何分咲になさいますか?」
「蕾でお願い致します!」
「お稲荷さんとかは……宜しいのでしょうか?」
「どうしよっかな……? ちょっと待ってもらっていいですか?」
「あの〜……先に注文させてもらってもいいですか? すぐ済むんで!」
「済みません……どうぞ!」
「いらっしゃいませ! 何時も有り難う御座います!」
「急いでるから! びらびらを参枚と紅い棒参本、それとしろぬき参玉稲荷にしてもらえますか?」
「弐子玉稲荷を、しろぬき参玉稲荷に変更ですね! おいくつお作りいたしましょうか?」
「ディカプリオで!」
「ディカプリオですね! 承知致しました!」
「30分くらいしたら、また来るから頼むわ!」
「紅様! お待ちしております!」
「ご注文はお決まりでしょうか……あれ? どこ言った?」
キョロキョロ……キョロキョロ……。
「やっぱ、冷やかしじゃん!」
第参話 壱筋肉包につづく……。