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緒鳴堂 【WEB】  作者: 雨澤 穀稼


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緒鳴堂 第弐拾肆話 バックで!


   第弐拾肆話 バックで!


「これ? 誰が発注したのよ? 今、彼方此方バタバタしてる時に?」


「それってあっちの米蔵から、こっちに運ばれて来たんですよ! 邪魔(なん)だって!」


「ずっとあそこに、あったって事なの……?」


「ずっとあったかは分からないけど……多分、そう(なん)じゃ無いの……?」


「憶測の域を出ないってことね……?」


「米蔵は残るんでしょ……聞いたけど……?」


「米蔵と裏の旧社員寮は残るようだけど、土地の所有権代わったからね……他は全部取り壊して元祖だっけ? 建つんでしょ……?」


「うわものの方は、旧社員寮は手放したけど……絶対、米蔵は売らないって、意地はってんでしょ……社長がさ!」


「らしいね!」


「新しい女子寮快適(なん)だけど……ちょっと遠いよね?」


「自転車で通う分には……桜並木や銀杏並木を通り抜けるから、わたしは春と秋楽しみですけどね!」


「全然、気にしてなかったけど……言われて見れば……そっか? それよりさ自転車小屋よ!」


「撤去の話しですか……?」


「そうそうそう! ずっと放ったらかしだった、あの草原(くさっぱら)に建つ、弐子玉金剛郭(にこたまこんごうかく)豊玉食堂(とよたましょくどう)が出来たら……その裏手になるそうじゃないのよ!」


「今度は室内見たいですよ! 社員証(かざ)すとコイン出てくるとか……(なん)か言ってましたけど……先の話し(なん)で聞き流してたんでね!」


(なん)か言ってたね? また、直近になったら説明あるから大丈夫だよ!」


「ですね!」


 キュルキュル、キュルキュル……。


「あっ……すみません! トートバック取らせて下さい!」


「この箱の中? トートバック(なの)?」


「そうです! 壱阡圓以上(せんえんいじょう)お買い上げのお客様に、お渡ししてますけど……?」


「今日だっけ? えっと……配るの、キャンタマ君のアクリルスダンドだったと……思うんだけど……? 限定(ひゃく)だったんじゃ無かったっけ……?」


「急遽! 栗戸さんから指示がありまして!」


「へぇ〜……そう(なん)だ? 聞いて無かったな……? 後で確認するわ!」


「持ってって大丈夫ですかね……?」


「良いよ良いよ! 指示出てんだしさ! もう配ってんの……?」


「オープンから配ってますけど……」


「だよね!」


「どんな感じ(なの)……?」


「好評ですよ!」


「そう(なん)だ! そっか、(ひゃく)じゃ足りないてってことね? 次の企画だそうかな……?」


「アクリルスダンドは……ほぼほぼ残ってますけど……?」


「はあ? 残ってるって……あり得ないでしょ……? 今日のメインだよ?」


「トートバック伍色(ごしょく)の中から(ひと)つか、アクリルスダンドにするかで選択してもらってます!」


「それって先にキャンペーン打ってた、アクリルスダンド出してからの方が良くないかな? 本末転倒でしょ!」


「はあ……わたしに言われましてもね……? 配りまくってって指示(なん)で……それに、選ばれるのはお客様(なの)で……?」


「だよね! そんなにトートバック出るんだ……へえぇ! パラシュート生地(なの)か? えっ! これって! 弐子玉(にこたま)イーナとナーリじゃん? こんなのあったんだ?」


「かわいいキツネさんですよね!」


「先代の社長の時に使ってた、キャラクターだよ!」


「新旧対決見たくなってんじゃん? 先代が亡くなってもうすぐ壱年(いちねん)くるからね……復活させるのかな? ふ〜ん……これが出てんだ!」


「はい! アクリルスダンドとトートバックどちらにされますかってお尋ねすると、バックで、バックで、バックでって皆様こちらを選ばれてます!」


「前回好評だったアクリルスダンドの第弐弾(だいにだん)、夕陽に黄昏れるキャンタマくんを満を持しての投入だったのに……参ったな……ねぇ! バックって、数幾つなの?」


「数ですか? 各色、弐佰(にひゃく)壱阡(せん)配布です! 捌き切れないと思いますけどね」


壱阡(せん)もあんの? これ?」


 ねえ! 油売って無いでトートバックの黒持って来てよ! 無くなっちゃうよ!

 黒、黒、黒! バックでバックでバックでって! バックを御所望なのよ!


「すみませ〜ん! 直ぐ持ってきます!」


「ああ……御免! 持ってって、持ってって!」


「済みません……黒よし! よいしょ!」


 ドン!


「黒よし! よいしょ!」


 ドン!


「失礼します!」


 キュルキュル、キュルキュル……。


 次回 第弐拾伍話 饅ぴー 新後編へつづく……かも?

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