緒鳴堂 第弐拾弐話 おキツネちゃん稲荷
第弐拾弐話 おキツネちゃん稲荷
「丹波さん丹波さん! 聞いて下さいよ?」
「聞いてるよ! 手を休めないでね! 何……?」
「あのですね……?」
「はい! 何でしょうか……?」
「あのですね……後にします!」
「はい! 後でね……」
「あれでしょ? あれ?」
「そうなのよ! アレです!」
「隣の絹さやさん、白旗上げたんだよね!」
「らしいね!」
「明日から撤去工事入るんでしょ?」
「そうらしいね!」
「丹波さんは、どうされるんですか?」
「……後でね……おキツネちゃん稲荷、今日で最後だから……ちゃんと送り出したいんだ……」
「そうですよね……済みませんでした」
「50個入り、後何セットかな……?」
「残り3セットです! 笹は敷いてあります!」
「有り難う!」
トントントントントントン……。
「きぬさやと玉子焼き針切、切れたよ! 混ぜ混ぜして!」
シュッ! シュッ! シュッ! シュッ!
「待ってよ! 煮椎茸と筍、切ってるんだから!」
「わたし包む方に入るからね!」
「キツネちゃんの顔付け、手伝って欲しいんだけど……手前掛かるんだよね!」
「そっか……手伝うよ!」
シュッ! シュッ! シュッ!シュッ!
「筍と煮椎茸切れた! ふう!」
「ヒジキ持って来て!」
とぽとぽ……とぽとぽ……とぽとぽ……。
「今、汁気切ってるから……待ってて!」
「ほ〜い! 了解! 軽く混ぜ混ぜしてるからね! ああ! 刻み揚げ、来てないよ?」
「えっ? 切って無かったっけ! 御免! 直ぐ刻むわ! 御免! 後で手伝うからさ!」
「行って行って! 全然構わないからさ!」
トントントントントントントントン……。
「御免! お待ち!」
「有り難う!」
「戻って参りましたよ!」
「お早いお帰りで!」
「よし! あと2セットね! 出来てる分、愛ちゃんトロッコまで持ってって! ビッグサン行きのリニア出るまで、後何分あるのかな?」
「30分後出発だよ! コレ積み込んじゃって良いんだよね! 出来てたら、早めに持って来てよ! 残りはそれで全部かな?」
「後弐つ!」
「了解! 待ってるよ! コレ持ってくから、そっちの持って来て!」
「は〜い! 後ろ付いていきます!」
「段差とかあるから、気を付けてね!」
「そこは心得ておりますです! 愛ちゃんさんは、どうなるんですか……?」
「え! わたし! ちゃんにさんはいらないからね! アグネス・チャンさん見たくなってるからね! 愛ちゃんで良いよ!」
「有り難う御座います! では、お言葉に甘えさせて頂いて……愛さんはどうされるんですか……?」
「あえて、さんを選ぶんだ? わたしは、変わらないと思うよ! 元々、社長と弟さんに妹さんの参人で出資してるからさ……リニアとトロッコに、運送事業の分がくっ付くとか言ってたかな? まあね、なったがようで行くしか無いよね……って感じかな? そっちの方が大変そうだけどね? 参P側から駐車場に向けては妹さんになるんだよね! こっちは連結してる弐拾軒の大体半分で社長と弟さんに別れるとか聞いてるけど……土地の所有権と建物の所有権が違ってくるから面倒くさそうだよね?」
「絹さやさんと米米は白旗上げたって聞きましたけど……うちもこの後話しあうんですけど……多分白旗だと思います……あっちはあっちで人数いますからね……?」
「時の流れには逆らえないよね! 有り難う! 後は大丈夫だから!」
「じゃあ! ここに置きますね!」
「ロックかけなくてもいいから、そこ置いといて!」
「あ……はい! それじゃあ!」
「お互い頑張ろうね!」
「そうですね……」
「あれ? 壱つは、ビッグ助六セットですよ?」
「あ! そうだった! あっぶな〜い!」
「戻りました! 残りの分運びますね!」
「いいとこ戻って来た! ビッグ助六用のキツネ金太郎太巻き巻いてよ!」
「今からですか……?」
「超特急でお願い!」
「アレって面倒いんですからね! もっと早く言って下さいよ!」
「速攻で、手洗って来ます!」
「しっかり洗ってね!」
「了解です! クチナシあったかな?」
ジャ〜……ゴシゴシゴシゴシ……泡泡……。
ジョンショロリン! ジョンショロリン!
キュッ!
「ペーパータオル! ペーパータオル!」
ペタペタ……ペタペタ……。
「戻りました!」
「御免! 時間は待ってくれないよ!」
「ですね……はあ……薄焼き玉子四角く焼いて、あげの薄いのと巻き簾用意してくださいね! 海苔炙って下さいよ! サフランでもいっかな?」
「ワンちゃんにならないように、気を付けてね!」
「もう! 今大急ぎで、パーツ作ってるんですから! やめて下さいよ! それってフラグですよね……力加減が微妙何ですからね……?」
「すみませ〜ん! 耳の参角弐つ、手伝って下さい!」
「任せて!」
「残り分出来て無いの? 何かバタバタしてるけど……? トラブルかな……?」
「はい! 耳出来たよ!」
「有り難う御座います! 組みますね!」
「壱発勝負だかんね! それで行くよ!」
「そんなら! 巻いて下さいよ! 代わりますから!」
「こっちも、手が離せないから! ガンバ! ガンバ! ガンバ!」
「それはイタチの呪いか何かをかけようとしてますか……?」
「何の事よ? グズグズ言って無いで早く巻いてよ! その出来たの蓋して化粧して!」
「ふう! いきますよ! やあ!」
くるりんこ! 巻き巻き巻き巻き!
ギュッギュッ! ギュッギュッギュッ!
「どうでしょう?」
「ん〜ん? 微妙にワンちゃん……勝ってるかな……?」
「ですね!」
「講釈はいいですから! 切りますからね!」
すっとん! すっとん! すっとん……!
「おお! 切ったら、良い感じになったんじゃない! 伍分伍分までもちなおしたよ!」
「褒めてませんよね? それって!」
「切ったんなら詰めるよ!」
「は〜い!」
第弐拾参話 饅ぴー新後編へつづく……。




