緒鳴堂 第壱話 パイぱん
第壱話 パイぱん
「お稲荷さん御購入の方は、こちらへどうぞ〜!」
「黒猫パン、完売致しました!」
「ママ! 黒猫パン、無くなっちゃたんだって? 残念……」
「あなたがのんびりしてたからよ!」
「だって……ミケがいなくなったんだもん!」
「桃尻パン、完売致しました!」
「ママ! 桃尻パンも無くなっちゃたよ?」
「桃尻パン狙ってたのに……残念ね。まだ、本格渦巻きコロネもあるからね!」
「本格渦巻きコロネ大好き!」
「本格渦巻きコロネ、完売致しました!」
「ママ……御免なさい……ミケにも後で、御免なさいして誤らせるからね!」
「ミケは悪くないのよ? ミケ無事で良かったんだよ!」
「ほんと……怒ってない……? 壱本生かりんとう、ミケにお土産でいいかな……?」
「そうね! ミケ好きだよね、壱本生かりんとう」
「うん」
「壱本生かりんとう、完売致しました! コロコロかりんとう饅頭、残り僅かです!」
「ママ……御免なさい……」
「大丈夫よ! ほら……これ!」
「それって……なあに?」
「新作パン優先購入券よ! 伍つまで購入出来るからね!」
「新作パンって……何かな?」
「それがね……開けてびっくり玉手箱って、書いてあるだけなんだよね?」
「でも、先月は桃尻パンだったよ!」
「先月は、桃尻パンって貼り出してあったよ!」
「そっか……開けてびっくり玉手箱だから亀パンとかかな……?」
「かなぁ……? だといいね!」
「楽しみだね!」
「そうだね!」
「裏筋入稲荷出来上がりました〜! お稲荷さん御購入の方……おられませんか〜っ! 新作パン優先御購入券お持ちの方! 今ならお稲荷さんと抱き合わせで、10%オフで御購入頂けますよ〜っ!」
「あっ! 裏筋入稲荷さん買っちゃおっか!」
「弐子玉お稲荷さん食べた〜い!」
「弐子玉もいいわよね!」
「うん!」
「あっち……空いてるしね! パンの列大人気だしね!」
「ただ今! お稲荷さんと抱き合わせで、壱阡圓以上お買い上げいただきますと! なんとなんとなんとです! 今なら当店特製キャンタマ君、弐子玉巾着お付けしてますよ〜!」
「すみませ〜ん! 新作パン優先購入券あるんですけど!」
「お稲荷さんと抱き合わせで、御購入なさいますか?」
「はい!」
「では、どうぞこちらへ! 新作のパイぱん、伍つまで購入頂けますよ!」
「あ〜……先に言っちゃうんですね! パイぱんって! 開けてびっくり玉手箱だったんじゃ……?」
「ママ……(ギュッ!)」
「どうぞ! お稲荷さんと抱き合わせ新作ぱん、パイぱん御購入者様はいりま〜す!」
「あは……何か恥ずかしいね」
「ママ……みんな見てるよ!」
「すいません……お先に失礼します……」
「どうぞ〜! お稲荷さんと抱き合わせパイぱんこちらで〜す!」
第弐話 びらびらへつづく……。