緒鳴堂 第拾壱話 あっかんべえぐる 後編前
第拾壱話 あっかんべえぐる 後編前
「これ、茹で上がっとんやんな?」
「うん……上がっとる」
「ほんなら、取り敢えず焼いとこか?」
「せやね! 焼いとこ!」
「いやいやいやいや……あかんあかん! あかんで! 考えも無しでやってもうたら弐の舞いやで? あかんて!」
「アレ、茹でたんは……誰や! 茹でる前に、気付けっちゅうねんな!」
「それ言われたら、もうグウの音もでぇへんわ! 参った参った! あははははは……」
「そこは汐らしゅう……俯いとった方が、可愛げがあるんやけどな?」
「今更やろ……やってもうたもんはしゃ〜ないって! な!」
「開き直るん、はよないか? あかんあかん言うてたの、ちょい前やで……?」
「焼くで! 窯あったまっとんねんな?」
「見たらわかるやろ? ちゃんと予熱しとるわ!」
「持って来て! 弐段やったな? この窯?」
「せや!」
「ほうか! ちゃんと、あったまっとるわ!」
「そりゃ、そやろ! あ〜時間おいたで……皺寄っとるわ?」
「そんくらいなら……全然大丈夫やで! な?」
「気にするラインじゃ、全然ないで? 気にし過ぎ何だよ? 何時も大雑把やのに、ことパンとかになると急に神経質過ぎだって!」
「そんな事無いし!」
「神経質だと思う奴! はい!」
「はい! 弐、壱であんたの負けやで!」
「何やそれ?」
「何分かな?」
「何が……?」
「なにがって? 今、焼く言ってるやん?」
「どうかな……ちょっと時間おいちゃったからな? かなり柔らかくなるんじゃないかな……?」
「ゴタゴタぬかしとらんでええから? 何分!」
「18分かな?」
「18分ね! で……どないすんの? 考え纏まった?」
「何いってんの? さっきの今だよ?」
「ノープラン何やね?」
「ノープラ!」
「なんなねんな? ノープロブレムって? 全然短くなってないし!」
「まあまあまあ……」
「限定の特濃チイベー、今日は無しだね!」
「だね!」
「参日前から店先に、チラシ貼ってんねんで? 処日やで?」
「しゃ〜ないやん! ベーコン無しで出すの?」
「それでええやん! べーんとこ、バツしたらええだけやしな!」
「ぐるっと巻き付ければ良かったかな……?」
「成る程! 巻き付けるね?」
「もう半分焼いてるやん?」
「そやね? 焼いちゃったね?」
「おっ! 焼き上がったんじゃね!」
「出して! 次の入れるから?」
「あ……うん」
「いい感じに焼き上がってるじゃん!」
「だね!」
「残りの分入れたけど……同じでいいの?」
「何が?」
「焼き時間!」
「ああ……少し短めで良いんじゃ無い?」
「せやから……何分?」
「少し短かめだって?」
「何分か聞いてるやろ? はよいいな?」
「だから……少し短めって、言ってるやん?」
「言って無いやん? 何分?」
「言ってるって?」
「言って無いやんか? 何分なの?」
「まあまあ……17分にしといたらどないやろな?」
「良いの?」
「良いんじゃない?」
「何……怒ってるとかなん? 手伝ってんねんで?」
「まあまあ……まあ……」
「怒ってへんて?」
「別にええねんけど……17分にしとくで?」
「で……どないしまひょ?」
第?話 あっかんべーぐる 後編につづく……。




