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戦姫、ブリュンヒルデに捧ぐ  作者: 野之 乃山
二章 自警団
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4-2 波のごとく

 アラム王国が、蒸発した。



 正確に言えば、焼き払われた。突如として出現した、謎の大型飛行物体によって。



 ぼくは、むなしい言葉をつぶやきながら、フェンデルの肩を抱くくらいしかできなかった。


 それとおおよそ同時だった。



 討伐隊の全滅が、ガリウス帝国から発表された。



                     *

 斥候部隊から、アラム王国方面より村に進行中の大軍勢あり、との報告を受けた。村の住民たちは、予想以上に落ち着いたまま、避難の準備を始めている。


 アラム王国からの避難者からの情報によって、軍勢と言うのは、まっすぐ村の中心を目指しているらしかった。前に、王国へ行ったときに使った道の近くを歩いているというらしいが、ほぼほぼ直線で動いているみたいだ。


 その中に、ボス格、軍勢のリーダらしき姿も見えたという。デカい、オーガ種。鎧を身に着け、王冠のようなものをかぶっている、と、その避難民は震えながら話した。


 何人かが、あの攻撃から逃げられたが、城下町周辺の人口の、何十万分の一と言ったようなものだ。雲行きが怪しくなったとたん、板のようなものが上空に現れた。直後に王城を攻撃して、それから、魔法で何もかもを吹っ飛ばした、と。


 斥候からの報告によれば、それはしばらくの間、攻撃の手をやめ、雲の中に消えていったという。それから、軍勢を見つけたのだ。


 数は不明。だが、王城周辺を一瞬にして灰にするような何かを持っている相手だ。勝ち目なんてあるはずもなかった。


 だが、逃さなければならない。少なくとも、それくらいの猶予は与えられたのだろう。


 ぼくらは装備を整え、村の広場に集合した。そこには、ちょうどクエストギルドに居た、パーティなどの義勇兵も集まっていた。数はおおよそ百人くらい。正直、居ても居なくても同じだった。


 避難経路の確保と護衛の為の部隊と、時間稼ぎのための殿軍に分けられた。本当ならば、ぼくたち三人は殿で残るはずだったのだが、フェンデルの精神状態を考慮した結果、アリアとともに、避難の護衛に就くことになった。ネロは、カーサラさんとともに、避難部隊の先陣に居る。


 リカルドら三人は、いまだオプ・スナとの負傷が完治していないにもかかわらず、自ら村に残ると言った。ぼくは言った。怪我をしているのなら、避難した方がいいと。


 しかし、彼らの決意は固かった。もとより、アラム王国から出てきた身である三人は、王国のために戦う、と。


 それ以上の言葉は、やはりただただ空しく漏れ出るため息と変わりなかった。


 どうしようもなくなったぼくは、リカルドに抱き着いた。彼はそれを受け入れてくれた。必ず生き残れよ、と言った。彼は、それはこちらのセリフだ、と笑った。


 マテウスとも同様に、言葉を交わした。メモを渡された。アリアとぼくとで研究していた、魔術の草案だ。

 ポボルとはさすがに憚られたが、握手はした。ネロに必ず勝て、と言われた。善処する、と言ったら、肩を叩かれた。


 彼らの姿は、人々の中に紛れて消えてしまった。


 最後尾のキダラの荷台に乗り込む。護衛隊のほとんどは、治癒魔法を扱える者だ。もっとも苛烈になりうる、先頭と最後尾に、ぼくらを配置するのは間違っている事ではない。


 だが、横からの攻撃には弱いだろう。


 先頭の集団が走り出した。キダラは集団を組むと、かなりの精度でそれに追従する習性を持つ。隊列は速やかに、かつ静かに動き始めた。アリアはキダラの荷台を飛び移りながら、リンネさんのところに向かった。


 検問所のやぐらが遠ざかっていく。ボルツ聖道に接続すると、それはすぐに木々に埋もれてしまった。


 バッ、と。


 視界の端から黒いものが出てくる。


 フェンデルが荷台から落ちた。


 いや、飛び降りた。


 剣を持っている。装具はしていない。


 ぼくは手を伸ばしたが、


 彼は、


 ぼくに向けて笑って、走っていった。

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