3話 ゴブリン
それは、クロエが初めて直面する異世界の恐怖だった。
平和な日本で日常を生きてきたクロエにとって魔物に襲われるなんて経験はしたことが無い。
小さくても刃物で武装した凶悪な顔のゴブリンを目の前にして、クロエは動くことが出来なかった。
「ハダカノオンナ!」
「ニクブクロ!」
「オカス!」
ゴブリン達は一斉にクロエに襲い掛かる。
サイズは人間の子供と同じくらいだが、容易くクロエを地面に組み伏してしまう。
「い、嫌!離して!」
両腕を2体のゴブリンにしっかり押さえつけられて、もう1体のゴブリンがクロエのお腹の上に馬乗りになった。
「ニンゲンウマソウ」
ゴブリンがクロエの無防備な胸にしゃぶりつく。
「やめて!誰か助けて!」
人間の男にすら触らせた事が無い身体を醜い魔物が蹂躙してくる屈辱と恐怖と不快感でクロエはジタバタと暴れる。
「オトナシクシロ!」
バチンッ!
「ヒィッ!?」
しかし、クロエの細い腕ではゴブリンの手を振り解くことは出来ず、逆にお尻を叩かれて悲鳴を上げてしまう。
ゴブリンがイキリたった雄の棒を見せつけながら、クロエの股間へ顔を近づけていき、長い舌で舐め尽くす様にしゃぶりついてきた。
脚を閉じたくても、2体のゴブリンによって無理矢理拡げられて、無様に快楽を強制される。
「ヒウッ?アッ、ヤメッ」
クロエは、経験した事のない感覚に、声を殺す事も出来ずにゴブリンの舌で転がされる自分が恥ずかしくて、涙を流した。
(十分な代償が支払われました。スケルトン召喚の使用が可能です。行使しますか?)
その時、突然頭の中に声が聞こえた。
(代償が支払われた?)
クロエは、恐怖と快楽と怒りの中、自由が奪われた体の代わりに口を開いた。
「スケルトン召喚」
その瞬間、地面に闇の穴が開き、1体のスケルトンが現れた。
見掛けは白骨死体が動いている様にしか見えないが、錆び付いた剣と盾で武装している。
「ナンダコイツ!?」
「テキ?」
「ジャマスルナ!」
突然現れたスケルトンにゴブリンは動揺する。
スケルトンを脅威と認識したゴブリン達は一斉に武器を取ってスケルトンに襲いかかった。
斬!
先陣を切ったゴブリンの短剣を盾で受け止めたスケルトンは、ゴブリンを袈裟斬りにして斬り伏せた。
他のゴブリンが怖気ついた所で、スケルトンの剣がゴブリンの首を刎ね、心臓を貫く。
「ゲギャアアアアア!」
ゴブリンの断末魔が止まると、クロエの前でスケルトンが跪いていた。
「・・・これが、私の力?」
クロエは、安心して緊張の糸が切れたのか、腰が抜けて立つ事が出来ない。
股や胸にはゴブリンの唾液がベットリと付いており、気持ちが悪い。
「うえぇ〜、汚い」
クロエは、スケルトンに掴まって何とか立ち上がるが、恐怖でまだ膝がカクカクと震えており、産まれたての子鹿の様だ。
「早く洗い流さないと」
幸い、近くに小川が流れていたので、クロエは川に浸かって身体を洗う。
(それにしても、結局代償って何だったんだろう?)
いつの間にか代償が支払われていたせいで、クロエには、身に覚えが無かった。
(でも、私は生きてるし、身体にも特に異常は見当たらない)
代償と言う言葉から、クロエはもっと苦痛や恐怖に満ちた怖いものを想像していた。
「てっきり、寿命とか血とかを要求されるのかと思っていたけど、案外、危なくないのかな?」
代償の危険性が低いと考えたクロエは、瞳に強い意志が芽生えた。
「・・・強くならなきゃ」
ここは日本とは違い、力無き者が生き残れる様な甘い世界では無いことを悟った。




