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欲望のカボチャ村と古都の荒くれ観光協会  作者: 源健司
守るべき者の為に
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一人じゃない

 話は春道が旦国寺に幽閉された日の夜に戻る。猫の坊が消えた蝋燭の火を付け、雨の丞が本堂の戸を閉めた。こうするとまだ、本堂が蒸す季節だ。しかし、どこで聞き耳を立てられているかもわからない。天空雨の丞は、作務衣の腕をまくりながら、今までよりも声を低くして話し始めた。


「考えても見ろ。今まで悪党子は氏子との関係が一切、無かったということだ。そこで怪しい奴が浮かび上がる」


「落語家か」春道は即座に察した。


「そうだ。俺はそのことを考えた時、あの夜の事を思い出した」


「あの夜?」


「有沢事件の夜の事だ」


「あっ」


「あの夜、南極亭常夏は俺たちと一緒に村を出たにも関わらず、途中で姿を消した。あの時は単に全力で走る俺たちについて来れなかっただけだと思っていたが、実のところ故意に別な行動をとったと考えれば合点がゆく」

「そういえば、悪塔子も会館にはいなかった」


「そうだ。これは憶測だが、観光協会側がわざと逃がしたんだ。おそらく、有沢一派は悪党子が何者か、つまり観光協会側の身内だということを、知らなかったのだろう。高山は自分だけか、あるいは一部の人間以外に密偵の存在を明かしていないのだろう。だから、悪党子があの夜、連れ去られたのは、特定の人間にとって計算外だった。おかげでこの推量に裏付けができた。結論を言うと、南極亭常夏は観光協会の回し者だ」


 「落語家だけではないな」猫の坊が付け足すように言った。


「ああ、悪塔子も、だ。この二人のおかげで、村の男社会と宮中の動きがダダ漏れになる。南瓜の取引の情報、場所も時間も筒抜けで特定され、現場を襲撃されるというわけだ。あれだけ情報を漏らさずに動いていた馬方の爺さんらがやられたのも、おそらく悪党子に話の片鱗でも掴まれたんじゃねえか」


「しかし、どうやってその情報を協会に渡していたんだ?」


「悪党子が誓約と称して常夏を呼び、情報を渡す。そして奴は下界の演目に出演する為、出張に出る。その時に協会とは接触し放題だろう」


「なるほど。すべて道理に合っている」


「そこで、作戦だ。この事実に春道が気づき、行動に移したことにする。悪党子が生娘だということは、ひとつの根拠になるからな。その事を、坊主は大宮様に説明してくれ。しかし、それだけでは決め手がない。そこで、俺が現場を押さえてやる。お前はここで座禅でも組んで、碧小夜の口説き文句でも考えてろ」



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