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欲望のカボチャ村と古都の荒くれ観光協会  作者: 源健司
フフシル事件
74/125

フフシル無惨!

 今夜の任務を完膚なきまでに果たしたはずの幸村はどこか、後味の悪い気分で立ってい た。

 夢南瓜の販路拡大を企てる会合を、阻止することできた。しかし、ここでほとぼりが冷めることはないだろう。逃げた連中はまた、何からの策を練って夢南瓜ビジネスを成立させようと動いてくる。


 しかし、後味の悪さはそのことではない。目の前で蝉の抜け殻のようになった聖女無天村人を見ながら、彼は犬若のことを考えていた。


(あいつがこの場にいなくてよかった)


 幸村は南瓜の硝煙で再び、朦朧としながら目を閉じていた。

 思慮が深みに嵌っているような気がした。普段なら考えもしないところまで思考回路が回る。

 果たして、観光協会の活動が、己が信じるほどの正義であるのか。万が一、夢南瓜が正しい規則の元で肯定的に酒肴され、医療分野でも多大なる貢献を果たす作物として流通するようになれば、観光協会の活動は医学、生物学分野に於いて発展を疎外した低能集団として歴史の汚名を残すのではないか。


「何を呆けっとしるんだ、幸村さん。今度は俺たちがここを切り抜ける番だぜ」


 沢井の言葉に幸村は我に返って目を開け、扉の外に目を向けた。見ると、イベントの観客がダンスフロアから個室を取り囲んでいる。若い男が多く、どいつもこいつも、とても観光客のように握手を求めてくるような目つきではない。


「こいつらは南瓜大好きな連中だ。昔年の恨みを晴らそうって意気込みだぜ」


 そのうち、「お前等、何様のつもりだ!」と、雑踏の中から罵声が飛んだ。それを皮切りに、「南瓜は自然の産物だ」「禁止される筋合いはない」「何の権限があって取り締まるんだ!」「法律に背いてはいないだろう」「何か観光協会だ!格好つけるな」「ダサい恰好しやがって!」「所詮は西京府議会の犬だろうが!」と、辺りは罵詈雑言に渦巻かれた。

「もうやっちまおうぜ!皆でやっちまえば怖くねえ!」という、物騒な声を合図に、憎念を身に纏った観客たちが個室へ一斉になだれ込んで来た。

 それを幸村、沢井が迎え撃つ。観客は小虫が払われるかのように、次々にあしらわれた。しかし、個々は南瓜に酩酊した連中なので、大したことはないが、如何せん数が多い。


 観光協会の五人は何とかダンスフロアに這い出たが、その瞬間、袋叩きになる。倒れ込んだところに、次々と人が多い被さり身動きが取れない。何度か力づくで蹴散らすも、同じことの繰り返しだ。


(何とも情けねえ終わり方だぜ)


 幸村が床に押しつぶされながら苦笑した時である。

 遠くに悲鳴が聞こえたかと思うと、どんどんと身が軽くなり、やがて遠かった悲鳴が頭上で聞こえるようになる。そこで忿怒と力を振り絞り立ち上がって見回すと、高山部隊が乱入したフロアはすでに骨肉入り乱れる戦場と化し、間もなく藤田部隊が到着するともはや殺戮現場と呼べる惨状となった。

 若い観客がバタバタと倒れ、あるいは逃走してその人数が減少してゆくのに反比例するかのように、観光協会は会館からの補充部隊まで続々と到着し、やがて部員の誰かが照明を、空間全体を照らす黄色のライトに切り替えると、立っているのは法被を着こんだ男だけである。

 

 否、もう一人、三つ揃えのスーツを着て、髪を後ろに撫で付けた男がステージに立っていた。男は上から観光協会の面々を怒るともない冷静な表情で見下ろしている。

 どこかで見た顔だ。幸村はすぐに思い出せなたったが、隣にいる高山の苦い表情を見てハッとした。有沢が打ち壊したフーザーの喜田照生という男だ。


 フフシルが議会に関わりを止められていた理由がわかると同時に、これは面倒なことになったと悟った。

 高山は暫く喜田オーナーと睨み合うと、おもむろに踵を返した。他の部員も彼に続き、ひとり、またひとりと地上へ向かう階段を登って行く。


 最後に幸村がフロアを出ようとした時、その背中に向かって「俺の店を滅茶苦茶にしたまま帰る気か?」という、喜田の苛立ちに満ちたような声が浴びせられた。

 幸村は一瞬、立ち止まったが、黙ったまま振り返りもせずにそのまま足を進めた。奴の顔を見ると友愛の像が思い出され、腑が煮えくりかえるからだ。

 後ろから「おい!」と数回、呼び止める声が聞こえたが、それでも幸村は聞く耳を持た ず、その場を去って行った。


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