会館は空っぽ
次回 2/23 21時
真夏だが風が実に気持ちの良い夜で、月も美しく白色に光っている。どこからか石鹸の清潔な匀も混じった懐かしい香りがした。
観光協会青年部会館に到着した那智の春道らは、あの公園で今夜も待機することにした。北西の角を右に曲がると、会館がある。
五人がローテションで二人一組になりながら電柱の陰に隠れ、人の出入りを確かめた。
到着して暫くしたところで、東の路地からひとりの若い部員が会館に飛び込んだ。暫くするとその部員を先頭に数人が会館から出て東のほうへ駆けて、夜の闇に姿を消した。
報告を聞いた猫の坊は干し芋を齧りながらほくそ笑んだ。
「ほれ、天空が上手くやりおったぞ」
「では突入するか」
立ち上がる春道を猫の坊は制した。
「まあ待て。まだ残りカスが出きっておらん」
春道が電柱に隠れると、なるほど、まだひとり、ひとりと部員が出て行く。どうやら準備できた者から随時、出動しているらしい。
春道は吸水性の悪い作務衣の襟元を掴んで、首を流れる汗を拭いながら考えた。もしも、碧小夜が共に帰村することを拒んだらと。犬若と共に後の人生を歩むと決めていたら、俺は道化ではないか。
そのうち、会館からの人の出入りが途絶え、辺りは再び夜の静けさに包まれた。
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