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欲望のカボチャ村と古都の荒くれ観光協会  作者: 源健司
フフシル事件
67/125

燃ゆる高山

 周辺が店仕舞を始める甲羅町通りに、方々へ探索に出かけていた観光協会部員が続々と集結してきた。

 斗南屋の店頭は部員で溢れ、歩道にまではみ出して来ているので、帰路に就く人々の通行の邪魔になって仕方がない。それらを高山が命じて路地に隠れて待機させた。人相の悪い男も多い。そんな輩が獣のような目で屯しているので、路地に足を踏み入れた一般市民はぎょっとして、踵を返す羽目になり、おのずと迂回を余儀なくされた。


「珍しいですね。こんなに闘志をむき出す高山さんは」


 畳の間で犬若が支度をしながら言った。


 高山は照れ臭そうに「そうか」と返事した。


 企みを追うこと数十日、ようやくここまで辿り着いたが、時は無情にも過ぎるばかりで、このまま取り逃がすのではないかという厭な予感が脳裏を過り始めて眠れぬ夜が続いていた矢先に捕まえた尻尾だ。腕がちぎれようとも放すわけにはいかない。今宵を逃せば次はな い。高山はヒリヒリとした緊張感が好転した瞬間に、得も言われぬ快楽を感じていた。


 それは幸村朱鷺も同じである。彼の場合、有沢一派が消え、己を唯一の首領とする一党独裁体制となった観光協会の最初の大仕事である。有沢を欠いた協会の、首領としての有能さを試される大事な夜だ。


 暫くすると平部員によって店内に革の肩ベルトの付いた木箱が運ばれて来た。


「相手の聖女無天の者は少人数だと聞いているが、交渉相手がわからない。そっちは大人数を揃えている可能性もある。筋骨隆々のボディガードを付けている可能性も高い」


「長期戦は避けたいということか」


「ああ、一気に戦意を削ぐ」


「戦意だけでは済まされないだろう」


 幸村の眼が一瞬にしてくすんだように見えた。


 犬若にとって、その箱は決して気分の良いものではなかった。あの夜の事が思い出され る。

 その時、高山のスマホが震えた。彼は即座に持ち上げて応答し、スピーカーをオンにし た。藤田の声が部屋に鳴り響く。


「あの野郎、本当に女と会っていやがる。今はカフェでコーヒーを飲んでいて、一歩も動く気配がない」


「ということは」


「場所の特定はできない」


 幸村はがくりとへたり込んだ。しかし、高山の目は死んではいなかった。


「いよいよ本当に虱潰しになるぞ」


 目を見開いて幸村は高山を見上げた。


「まだ諦めんのか?」


「当然だ」


「しかし、その天空とかいうのが、本当にデートしているとしたら、会合そのものが今夜ではないのではないか?別の日か、想像したくはないが、もうすでに開かれた後、取り逃がしてしまったと言うことも考えられんか?」

「いや、今夜だ」高山はむしろ、自信に満ちた声で言った。「天空と話をして確信した。今夜、会合は必ずこの街のどこかで開かれる」


「もしや、奴は囮だということか?」


「もはや手段は選んでられん。三手に分れて怪しい場所に片っ端から踏み込むぞ」


 高山は平部員ひとりを指名した。


「お前は会館へ戻れ。留守役から人数を補充するんだ。堀川さん以外、全員連れてこい!」

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