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欲望のカボチャ村と古都の荒くれ観光協会  作者: 源健司
フフシル事件
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怪しい雨の丞

 交差点の南東、城の天守閣をモチーフにしたような巨大な百貨店のウインドウガラスを背に、作務衣姿の男が抵抗することもなく、立っている。その周りを、藤田翔を始めとする観光協会の面々が取り囲んでいた。観光客や酔った若者などが何かを期待したような目をし て、外野から様子を伺っている。


 そこへ駆けつけた高山紫紺が割って入って行ったところで、野次馬の数も俄然増えた。犬若、岡莉菜は囲みの外にいる。


「どうも、ご無沙汰で」


 姿を現した高山に向かって、作務衣の男がへらへらと笑いながら言った。


「たしか君は、那智の相棒だな」


「天空雨の丞です」


「ふざけた名前だな」


 どこからか部員のひとりが野次を飛ばすと、場に鈍いような低い笑い声が浮き沸いた。しかし高山は冷たい表情を絶やさぬまま、雨の丞を睨んでいる。藤田翔も岩石のような顔を彼に向けたまま目を剥いている。

「芸名みたいなもんだからね」


 雨の丞は熱を帯びることもなく、余裕を絶やさずに答えた。


「お前たち、気を付けろ。彼は有沢さんをやった連中のひとりだ」


 高山が言うと、笑っていた部員に緊張が走ったように見えた。雨の丞は苦笑した。「有沢をやったのはお前だろう」という言葉が喉まで出たが、呑み込んだ。今は余計な波風を立てる時ではない。


「では、職務によって手荷物検査をさせてもらう」


「検査も何も、俺は手ぶらだぜ?」


「作務衣の中もだ」


 言うが早いか平部員が寄って集って雨の丞の体の隅々まで弄り、首もとと腰から、作務衣の中を覗き込んだ。尻の割れ目まで調べられたところで、ようやく彼は開放された。


 ふくれっ面をながら、もみくちゃにされた作務衣を整えている雨の丞に向かって高山が訊ねた。


「しかし、こんな日にここで何をしている?今日は村の大事な祭日だろう?」


「誰にも言わんでくれよ。逢引きさ」


「いいのか?宮様がありながら浮気など」


「だから言わんでくれって。今夜、村人は皆、村から出ていない。女に会うには絶好のチャンスさ」


「人間らしいところもあるんだな」


「俺は村に入って日も浅いからね。元々は一般家庭で育っているし、学生時代は普通の恋愛もしていたんだ。たまにはそんな淡い恋愛が懐かしくなるのさ」


「そういうもんかい。ところで今夜、葦原京にいる村人は君だけか?」


「はて?何の話だ」


「とぼけているのか?」


「とぼけるも何も、何の話かさっぱりわからん」


「そうか。よし、行っていいぞ」


「おかしな事を言うもんだ。今夜、誰かに見つかったら事だと言うのに。あ、さっきの話はくれぐれもご内密に」


 雨の丞はそう言って、北へ向かって走って行った。無論、藤田翔の姿はすでに、そこにはない。いつの間にか先回りして雨の丞追跡を開始していた。


「やはり今夜、会合は開かれるぞ。俺たちは一旦、斗南屋に戻る。お前とお前は藤田を追 え。何かあったらメッセージでは無く電話をよこせ」


「でも、おそらくこれが最後の手がかりでしょう」犬若が輪に入って来て高山を見上げた。「藤田さんが何も掴めなければどうするんです?諦めるのですか?」


「諦めるかものか。ローラー作戦をしてでも突き止めてやる。大々的な捜索になるかもしれなんな」 


高山はそう言うと他の面々を連れて再び、甲羅町通りを北上した。


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