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欲望のカボチャ村と古都の荒くれ観光協会  作者: 源健司
フフシル事件
53/125

旦国寺のド変態腐れちんこ糞坊主

 お寺さんというのは聖女無天村の西側にある、広大な南瓜畑の北面に山に向かって伸びる石段を二百段ほど上った旦国寺たんこくじという寺である。


 住職の名をねこぼうと言い、偏屈で強欲な坊主だ。そして、この男も大宮桃龍の氏子のひとりである。しかし、筆頭の春道に比べて猫の坊のポジションは幾人かの氏子の中でも末端に位置する。誓約の機会も極端に少なく、今となっては桃龍に正式な氏子として認識されているかも疑わしい存在であった。


 鬱蒼とした木々に覆われた石段は、昼とは思えない暗さに包まれ、烏のグァアグァアという鳴き声がけたたましい。湿った苔の生えたその石段を、大山はえっほえっほと登って行 く。後ろから足どり重くしながら、春道が付いて上がった。気が進まない。一歩一歩が「イヤよ、イヤよ」と喚くように聞こえる足どりである。

 それでも前進する限り、いずれは目的地にたどり着く。

 とうとう頂上まで登り切ってしまった春道は、大山の背中を見ながら今にも崩れそうな腐った山門をくぐり、本堂に入った。相変わらず湿っぽく、気味の悪い空間だ、と思った。

 本堂の奥の闇の中には、深々とした重厚な木色の仏像がぼんやりと見える。立派な仏像 で、こんなところに法座させているのが実にもったいない、なんと罰当たりなことかと改めて考えながら、ようやく、その前に丸い黒い物体が揺れているのに気づいた。それが蹲った猫の坊の背中を覆う袈裟であることがわかるのに少し時間がかかった。

 その丸く震える物体の中からくぐもった叫び声が聞こえる。一瞬、何か発作でも起こして倒れているのかと慌てたが、どうも様子が違う。

 そろそろと近づいて耳を澄ますと「おおみやさまあああ、おおみやさまあああ」と喚いていることがわかった。その後、間もなくその震えが止まると、不意にがばりと起き上がり、こちらを振り向いた。剃り上げた頭から額に向けて汗をだらだらと流し、袈裟の首元が肌に張り付いている。そして座ったまま尻のほうに手を入れてうんうん呻きながらごそごそと弄り、おもむろに蓮根くらいの太さもある黒光した造形物を出し、「駄目じゃ駄目じゃ」と目を剥いて喚き散らした。


「拙僧の体内は大海のごとく広大である。この程度のサイズでは刺激が足りん。それにもっと角度を付けてくれんとパワースポットに上手く当たらぬ。すぐに作り直せ」


「しかし、これ以上ぶっといのをぶち込んだら体に悪い。抜けんようになったままおっ死んでみろ、末代までの恥じゃぞ」


「恥を晒す相手などどこにもおらんわ。むしろ、その死体を大宮様に見下され、情けない死に様よ、このド変態腐れちんこ糞坊主め!とでも罵られれば本望じゃ!羞恥の極限で断末魔の波動砲が発射されるだろう!」


「見たか、春道よ。これが変態の悟りじゃ。変態の悟りを開いとる。お前も早くこの極地にたどり着け」


「夢南瓜を使った性儀は力技じゃない。適正的な情緒、羞恥、刺激、それに愛が備わって極限に達するのだ。己の欲望を満たすだけを目的としているからこのお坊さん、筆頭にはなれないのだよ」


「ぬかすな小僧が!この村で大宮様を最も愛する男、それが拙僧である。貴様の理論では愛が足りぬのではないか?本当は碧小夜様を慕っているのだろう?」


 同じ主人を持つ村民同士の僻みあいはこの村に日常である。特に、自分よりも優位な地位にいるライバルに対してはどうしても、挑戦的になる。ましてや、旦国寺猫の坊は桃龍という主人を持って十年では足りない。それでもその慕情は増すばかりであり、もはや「桃龍狂」と言っても過言ではなく、若く主従関係も浅い上に、碧小夜への未練を捨てきれない春道が気に入らないのも無理はない。


「大宮様がかわいそうじゃ」


 猫の坊はボロボロと涙を流し、果てには床に臥せって泣き出してしまった。


「わかった、わかった、ではもう一回り、太いのを作ってくるさかい。角度もぐんと反らしておく」


「あと、裏筋に大宮桃龍乾坤一擲と彫っておいてくれ」


「わかった。知り合いの彫刻家に彫らしておく」


 そういうと猫の坊は今しがた尻に挿入していた造形物を仏像の前に置き、手を合わせるとチーンと鈴を鳴らして手を合わせた。


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