南瓜チーム、公園に潜む
その頃、那智の春道ら五人は、協会の面々が街から姿を消すだろう慰労会開始時間を見計らい、聖女無天村を出て、月に背を向け西へと走り、葦原京に入った。大通りを避け、細い路地を選んで進む。それでも観光客は至る所を闊歩していて、乳白色の作務衣を来た男が疾走する姿は目立った。
春道らは然して、全力で駆けたつもりはないが、普段からか険しい山道や街中を駆けまわっているので、足は速い。そんな四人の横を通り過ぎる風景は、瞬きする間に変わって行 く。ただ、ひとり、南極亭常夏のぜいぜいと吐く苦しそうな呼吸がだんだんと大きく聞こ え、そのうちだんだんと姿が小さくなって行った。
やがて、観光協会会館からほど近い公園にたどり着いた。公園を出て前の路地を右折すれば、そこが会館である。協会が宴会を開いている料亭の場所から察すると、帰路は必ずこの道を通るはずだ。
彼らは植え込みの陰に座り込み、呼吸を整えたが、そこでようやく、ひとり足りないことに気が付いた。
「落語家はどこへ行った?」
室戸の陰松が植え込みから顔を出し見回したが、その姿は見当たらない。
「普段、ずっと座布団に座っている男だぜ。最初からついて来れるなんて思っちゃいない」
天空雨の丞が持ってきたボトルの水を飲みながら吐き捨てた。「はぐれたんだろうよ」
「会館の場所は知っているだろうし、その気があれば後で追いついてくるさ。あるいは諦めて村へ戻るか。いずれにしてもあの男は最初から頭数には計算していない」
春道が冷たく言った。
「ところで」と室戸が草むらに胡坐をかいた。「本当に大丈夫なのか?俺たちが利用されるだけならいいが、はなからターゲットが俺たちだというオチにはならねえだろうな?」
「もしそうなら、お前が黒幕だろうが」天空が挑発するように言う。
「まだ言ってるのか!俺は何にも知らねえよ。ただやられっぱなしじゃ気がすまねえだけ だ」
「そんな理由で危険な作戦に参加するほど、肝の据わった男じゃないだろう、お前は」
「協会の奴らの前にお前を殺してやろうか?」
今にも殴りかかろうとするふたりに春道が「やめろ」と割って入った。
「俺たちを狙ってるわけじゃねえよ。そもそも今日は南瓜も持っていない。現行犯じゃないんだ。捕まることはない」
「どうだかな。相手は有沢だぞ。ルールもヘッタクレもあったもんじゃない男だろう」
「それにしては高山の作戦は綿密すぎる。大丈夫だ、と思う」
春道の自信が若干薄らいだのを見て、室戸が「はあ」と憎たらしく溜息を吐いた。
鍵屋の利吉は、貧乏くじを引いたのではないか、とでも思っているのか、黙って肩で息をしている。
その時、満月が雲に隠れた。
天気の変わりやすい季節だ。雨が降るかもしれない。春道は空を見上げて、そう思った。そんなことでも考えていなければ、碧小夜のことが思い出され、頭がおかしくなりそうだった。




