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欲望のカボチャ村と古都の荒くれ観光協会  作者: 源健司
葦原京今昔祭
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高天の大宮 桃龍

 葦原京を眺める春道の背後、襖の奥から声がした。

 

 春道は立ち上がり、襖を開ける。部屋に入ると中は白い煙に包まれていた。奥の隅で、紫色の着物姿の年増の女が南瓜の葉を燻している。

 彼女は春道の姿を認めると、立ち上がって湯殿から着てきた浴衣を脱がせた。浴衣の下は一糸すら纏っていない。


 全裸になった彼は部屋の中央に置かれて斜めに倒された分娩台に上がらされると、両足を広げた姿で縛られた。

女が出てい行くと、部屋は完全な静寂に包まれた。四隅よすみに蝋燭がたかれているだけで、入り口の襖も閉じられている。彼は目に綿の黒い綿帯が巻かれ、視界を奪われていた。


 この体勢になってどれくらいの時間が経ったのだろうか。

 彼はそれがわからないほど、朦朧としていた。全身の力が抜け、もはや分娩台と己の体の境目もわからなくなっている。


 ただ、一点にのみ力が漲り、血液が脈々と、緩急をつけながらぐるぐる巡っている。それが己の全てであった。

 

 この浮世を離れた気分を誘発しているのは、老婆が燻した煙である。


 極限に至るまで内なる熱気を増強し、男の昇天は、女のそれをも凌ぐ快楽の極地に至り、女の昇天は黄泉の国の入り口が見えるとさえ言われる夢南瓜の作用が働き始めているのだ。


 やがて奥の間の襖が開く音がした。春道にとって歓喜の音である。彼は条件反射的に犬が尾を振るかのように、腰をひくひく動かし、襖を開けた主を求めた。


 桃龍はそんな男としての誇りも捨て去って、己を求め続ける分娩台の上の男の周りをゆっくりと、形式的な誓詞を述べながら歩いて回った。畳の上を歩くにも、なるべく足音を立てないように、それでも僅かに、辛うじて鼓膜に届くほどの音を発するように、彼の不安定な聴覚を刺激した。

 そして何周かした後、彼の耳元に口をやり、そよ風のような吐息を吹きかけかたと思うと、最後に耳の穴の奥に向かって、ピストルを一発、発射するようなひと吹きを吹き入れた。春道の腰が大きく宙にのけ反った。


 ようやく、目隠しが取られた。大宮桃龍おおみやとうりゅうは純白の法被を羽織り、その下にはサラシが胸を包んでいる。下半身はこれも艶やかな純白の六尺褌である。


 桃龍は彼の頭部に近づくと耳へかぶりついた。耳たぶから彼女の涎が滴る。彼女は彼の耳の穴に向かって低い音で囁き始めた。とても素面では言えない様々な、彼女を欲し、己の全てを捧げる旨の言葉を、繰り替えし繰り返し述べるよう命じるのである。

 その羞恥心が更に春道を、精神的快楽の至高を極めた奴隷畜生に貶めた。精神的快楽を極めた後は、彼は肉体的快楽の果てを求め始め、それを見て桃龍は邪悪に笑う。


 桃龍は大股を開いて痙攣している春道の正面に立った。法被を脱ぐと、胸元からサラシを掴む。力を入れてぐっと下げると、豊艶な胸が勢いよくこぼれだした。姿勢を前傾に倒して行くと、二つの胸が地面に向かってぶら下がる。桃龍は春道に覆いかぶさると、乳房で顔面を包み込んだ。暫くして、指が彼の腿を伝い始めると、後は果てしない肉体的快楽の旅に出る。


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