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欲望のカボチャ村と古都の荒くれ観光協会  作者: 源健司
会館の決闘
37/125

緊急事態!観光協会来襲す!

 急報を告げる男の声が聖女無天村の大通りを駆け抜けた。


 その時、室戸の陰松は西側の丸太小屋で村の男らと南瓜の葉巻を吹かしていた。目の前を村民たちが南に向かって駆け抜けて行く。口々に喚く村民の大声の中から「観光協会」という言葉が耳に入って来た。


「観光協会だと?」


 他の者らと共に、座っていた木の椅子を倒しながら飛び出した時、その目の前を悠々と通り過ぎる巨人を目にして愕然とした。ちぢれた髪は逆立ち、肌は褐色、見開いた目は吊りあがり、寺の釣鐘のような胸板で着ているジャージが張り裂けそうになっている。まるで、そこに天守閣が聳えているように思えた。それが村で噂になっている観光協会の男というのは一目で分った。むしろ、想像を遥かに超えた怪物っぷりである。


 西院熊二郎らが通りを塞いだところでようやく、巨人が足を止めた。


「どかねえと怪我するぜ。岡莉菜よ、遠慮はいらねえ!邪魔モンはぶち殺せ!」


 後方から怒声が飛んだ。巨人から遅れて観光協会の集団がぞろぞろと向かって来る。

 陰松は西院に駆け寄った。


「おいおい、凄えのがいるな」


「あいつが例のオカリナって野郎だ」


「確かに迫力は満点だが、強そうじゃねえな」


「こんな時に強がるな、室戸よ」


「あんな木偶に怯んでるのか、おっさん?大体、奴らは何しに来やがった?」


「知るかよ、そんなこと」


 西院が、狙いを定めた大砲のような岡莉菜を睨みながら吐き捨てる中、鈴方祀が進み出て来た。


「その奥の宮に用がある。道を開けろ」


「何をする気だ!」


 室戸の陰松も気性は荒い。目的はわからなくとも突如、土足で上がり込んできた侵入者を黙って通すほど、沸点の低い男ではない。舐められるようなことを極度に嫌う男である。


「テメエらみたいな変態モヤシ野郎どもが俺たちに敵うわけがねえだろう。怪我したくなかったらさったとそこをどけ!」


 ニヤニヤと笑う鈴方に飛びかかろうとする陰松の腕を西院が間一髪で掴んだ。


「挑発に乗るな!」


 陰松は一瞬、力を抜き深呼吸した。それを見て西院が腕を放した時、彼は鈴方めがけて拳を握りながら走っていた。が、立ちふさがったのは岡莉菜だ。


(木偶の坊が!こういうのは足元が弱えんだ!


 陰松は岡莉菜の膝を狙って低い体勢でぶつかって行った。

 しかし、岡莉菜もまた、その巨大な体を、両手を広げて蜥蜴が地を這うように陰松よりも低く沈めると、ぶつかってきた彼の胴を抱き上げ、後方に控える協会部員の真っただ中に放り投げた。肩から地面に叩き付けられた陰松だったが、咄嗟に四つん這いになると土埃を立てながら無数の足を掻き分けながら脱出を試みた。が、それもつかの間、後ろから襟首を掴まれ体を起こされると、もはや万事休す、顎を拳で打ち砕かれるか、脇腹を抉られるかと目を瞑り、歯を食いしばりながら必死に体を縮めようとしたが、再び目を開けた時、周りは広く視界が開けていた。


 その目に入ってきたのは山賊が押し寄せたかの如く光景で、立ち向かわんとした西院熊二郎はじめ村民たちが、投げ飛ばされ、殴り飛ばされ、荒波のように進む観光協会部員らに蹴散らされ、次々に地面にもがき転がってゆくのが見えた。


「すまねえな、こっちにはこっちの都合があるんだよ。半端者は出しゃばるな」


 沢井宗八がそう言いながら、ようやく陰松の襟首を離すと、彼は砂利道の上に崩れ落ちた。


 その間にも協会部員らは大通りをずんずんと進み、あとには起き上がることもできない無数の村民らが蠢いているだけであった。


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