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欲望のカボチャ村と古都の荒くれ観光協会  作者: 源健司
ワールドスポーツフェスティバル葦原京
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犬若の鉄拳制裁

 櫓がスタジアムゲートを潜ろうとした時、春道は最後方の第三基に飛びついた。このままトラックに侵入し、目的を果たすのみと覚悟を決めていた最中、不意に腰の辺りに進行方向とは相反するほうに引き寄せられたかと思うと、そのまま背中から転落した。即座に警官隊の妨害だと悟り、そのまま地面に弾んだ毬のように起き上がって、戦闘に備えた。しかし、彼を引っ張ったのは警官でも警備員でもボランティアでもなかった。「お前はここで何しとる!」という声で、それが大山大和だとわかった。


「お前が守るもんはここではない。違うか?早う行かんと、先を越されるぞ。」


 大山の視線の先には、この包囲網を突破しようとする犬若がもがいていた。


「ここは天空に任せて、ふたり揃って村へ行けや!」


 春道は襲い来る御用提灯を潜り抜け、犬若と岡莉菜の突破口開拓軍に加わった。犬若も加勢する春道に気づき、「なんだよ!」とでも言いげな顔で、再び臨戦態勢を整えた時、「観光協会だ!」という声とともに、法被に白鉢巻を頭に巻いたの集団が、なだれ込んで来た。


 協会の援軍だと思い込んで(助かった!)と安堵したのは春道。だが、犬若は何歩か後退すると、改めて気合いをいれるように身体を捻った。


 先頭に立った佐藤果花が、小高い丘で子供に人生とは何たるかを教える父親のような感じで、やわらかに言った。

「犬若君。君にも葦原京を慮る気持ちがあるならば、拳をしまいなさい。幸村さんと違って君には華も人気もある。君は無くてはならない人だ。これからも観光協会の看板を背負って我々と行動を共にしようじゃないか」


「俺には葦原京を慮る気持ちなんてこれっぽっちもないよ。俺が慮るは華も人気もない幸村さんのほうだ」


「あんな単細胞で政治力も無い男のどこがいいんだ?高山さんだって、頭は切れるが結局のところ、力で周りを抑えつけているだけではないか。あんなのは組織でも仲間でもない。ただの無法者の集団だ。盲目的に南瓜を取り締まるだけの活動に何の意味がある?ならば私がもっと葦原京のシンボルとなり得る組織として、本来あるべき姿の観光協会を作り直す」


「ふふっ、何だよ本来あるべき姿の観光協会って。後から来て偉そうにしている奴に何がわかるんだい?何様だよ、お前!黙ってろよ」


「あくまで協力はしてくれないと?しかし、幸村さんたちはもう終わりだ。ここで逆らえば、君の居場所も無くなってしまうよ」


「俺の居場所をお前が決めるな!俺の居場所は俺が決めるんだよ」


 その言葉も終わらぬうちに、気がつけば犬若は佐藤果花の真正面に立ち、親にもぶたれたことも無いであろう佐藤の生娘のような白い頬を、これが答えだと言わんばかりに殴り飛ばしていた。頭領がやられたことでいきり立つかに思われた佐藤派の面々は、この時すでに岡莉菜の餌食となって、観光協会としてはこの上なく情けない姿で地面に転がっていた。


「佐藤さん、観光協会はいかなる状況でも敗北は処分の対象になるんだよ」


 犬若は倒れた佐藤に向かって半端者がいちびるなと言うように吐き捨てると、春道を見た。一緒に来たいのからついて来いと言わんばかりに。


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