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欲望のカボチャ村と古都の荒くれ観光協会  作者: 源健司
ワールドスポーツフェスティバル葦原京
115/125

議会の制圧隊VS南瓜村観光協会連合軍

 同じ夕日に照らされた聖女無天村の大通りには、至るところに木枠の樽や丸太が置かれ、その裏に観光協会青年部幸村派の面々と聖女無天村の男衆が身を潜めていた。敵は拳銃を装備した警官隊である。中には木村刑事の姿もあった。


「幸村の馬鹿めが。だから出しゃばるなと常から散々忠告してやっているのに、この期に及んでまだ盾突くか」


 木村刑事は煙草を地面に捨て、踏み付けた。


「全員、配置に着け!」


 島田署長自らが、スキンヘッドを夕日に輝やかせながら指揮を執っている。


「いいか!開会式が終わるまで持ちこたえろ!そうすればこちらの騒ぎに世間が気づき、議会の悪行が露見する」

 最前線の樽の陰から幸村が激を飛ばした。「高天の宮への侵入を許すな!」


 その瞬間、一発の銃声が響いたかと思うと同時に木材を撃ち抜いた音がした。島田署長の右手に握られた拳銃の銃口から、硝煙が揺らめき上り、空中で消えた。さずがに、そう簡単に引き金を引くことは無いとタカをくくっていた連合軍の面々も、これには蒼ざめた。


「おいおい、一気にかたをつける気だぜ」


 丸太の陰の沢井が、強がるようにははっ、と笑ったが誰一人、それに続く者はない。


「それ、かかれー!」


 間髪入れずに島田の号令がかかると、土煙を巻き上げながら、警官隊が一気に突撃を開始した。


「食い止めろーっ、食い止めろーっ!」


 幸村は樽を抱えると、警官隊の戦闘目がけて押し返しにかかった。


「続けーっ!」


 今度は沢井、藤田他が皆で一本の極太丸太を抱えて、突進する。背後から聖女無天軍も援護に加わり、警官隊を一気にゲート付近まで押し返した。


「周り込ませるな!場合によっては火をつけろ!」


 大通りの中央を横断するように、東の山の中まで灯油が撒かれている。裏から回り込まれないようにする為であり、また北東にある南瓜畑を守る為である。


「貴様らに南瓜を渡すくらいなら、いっそ火を着けて畑ごと燃やしてやるぞ!」


 柘植重衛が松明を持って丸太小屋の屋根の上から吠えた。


「全員、公務執行妨害で逮捕だ!」


「捕まえるなら捕まえてみろ!拙僧らがここから去ろうとも、高天の宮が残ればこちらの勝ちだ。うははは!」旦国寺猫の坊がぶっとい数珠で警官を鞭打った。「打たれるのは馴れているが、打つのは新鮮じゃわい!」


 「藤田!高山を巻き込むな!高天の宮から出すんじゃねえ!あいつさえ捕まらなければ、観光協会は再興できる!」幸村の命令が下った。


「ひとり残らずしょっ引け!」島田も声を枯らして尚、突撃を繰り返す。


 沢井のジャンピングラリアットがさく裂し、幸村のヘッドバットを前に警官が額を抱えてのたうち回る。


 また、銃声が鳴った。一同、一斉に地に伏せる。


「脅しだ!怯むな!」


 ただ一人、地に足を着けた幸村が気焔を上げて、樽を投げつけた。それからはまさに鬼神無双、彼が行く道を、ピンポン玉が跳ねるように、警察たちが宙を舞う。むんっ、むんっ、と単独進行する幸村は荒れ狂う戦車のようだ。


「止めろ!奴を止めろ!」


「この脳味噌筋肉木偶野郎!」


 そう言って島田の命令を受け、木村刑事が立ちふさがったが、「どいてろ雑魚が、あーらよっと!」と屋根より高く放り投げられ、路傍のおが屑の山へ、ずんぼりと埋まっていった。


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