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欲望のカボチャ村と古都の荒くれ観光協会  作者: 源健司
ワールドスポーツフェスティバル葦原京
107/125

何もない男

 高天の宮は明け方からてんてこ舞いだった。後を絶たない夢南瓜の注文は、葦原ワースポ開会当日となってピークを迎えた。夢南瓜は地球上、この土地でしか嗜むことはできない。外国人観光客や、アスリート、それを取り巻くスタッフらまでもが、まだ見ぬ夢南瓜の夢幻を求めた。その為、宮女、男衆問わず、宮の大広間に集まって、葉巻きを巻いたり、燻した種を袋詰めしたり、ツルを紐で縛ったりと、大忙しであった。


 那智の春道も大広間の端に座って葉巻を巻いていたが、無論、まったく面白くもない。いくらこんな作業をしても、あるいは南瓜をいくら売ったとしても、己に与えられるのは三食と寝どころだけで、何の見返りも期待できない立場である。


 宮女の車座に混ざって碧小夜がいるのが見えた。時折彼女に目をやるも、一度たりともその目が合うことがない。


(なんだ、こんな簡単なことだったのだ。彼女は単に、俺に何の興味もなかっただけなのだ。今は昔の遊び相手。それ以上でもそれ以下でもなかったのだ)


 春道はかくも単純な結論に至り、そうすると何もかも、合点がいった。

 作業がひと段落したのは昼前で、握り飯と汁もので昼食を取った男衆らは皆、リュックや頭陀袋を担いで、山を下りる準備をしていた。

 しかし、春道は働くだけ損である。作業は村人の目もあるし、ひとりだけ惰眠を貪ってのうのうとできるほどの鋼のメンタルは持ち合わせていないので、加工作業には参加はしたが、以前のようにモーレツな営業活動を行う気には到底なれなかった。


(さて、ひと眠りするか)


 春道はそう思って立ち上がった。


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