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欲望のカボチャ村と古都の荒くれ観光協会  作者: 源健司
守るべき者の為に
102/125

取り調べ〜犬若〜

「個人的な恨みですよ、刑事さん。幸村さんたちはともかく、私に関しては単なる因縁の相手との決闘さ」


 犬若は何故か、自分でも不思議なほど、饒舌だった。この期に及んでこの秋一番の調子の良さであった。いや、観光協会に襲われたあの日以来、こんなに気分の良いことはなかった。殺風景な、冷たい壁に囲まれた中で無精ひげを生やした冷酷そうな中年親父と相対するという最低な環境であるにも関わらず、聖女無天村からも、観光協会からも距離を置くことが、己の身の置き場所として正解だったのかもしれない、と思った。何か大きな事件でも起こして、刑務所に収監されようかとも考えた。


「お前、元は聖女無天村の人間だったな?昔の仲間を抜いたことはあるのか?」


「本当の事を言って、私は抜いたことはない。さすがに、それはできないですよ」


「殴り合っていた男とはどういう関係だ?」


「幼馴染です。それに、恋敵です」


「ははっ、三角関係の縺れでどつき合いしてったってことかよ」


「でも私は男としての機能を欠損してしまっている。今更、女を幸せにする自信がない。でもかといってあいつに託すことも許せないんです」


「おいおい、ここは恋愛相談所でも精神科病棟でもねえぞ」


「ああ、すみません」


「まあいい、面白れえからもう少し付き合ってやる。夢南瓜はやったことはあるのか?」


「いえ、初めて経験する予定だった日に、私は抜かれちゃったんで」


「お前のような奴にこそ、夢南瓜が必要なのかもしれねえがな」


「私も、実のことを言うと、そう思うことがあるんです。時折、襲われるんです、不安や虚無感に。まさか、年寄になるまで、観光協会をやっているわけにもいかないし、かといって学歴も無けりゃあ、職歴も無い。頼る人間もいない。努力なんてする気力もないんですよ。村では幼馴染が、好きな女の氏子になるかもしれない。私が今でもあの村にいれたら、いくらか幸せだっただろうな。そんな事を考えると、押し潰されそうな気分になるんです。このまま死ぬのを待つのか、あるいは自ら死に向かうのか。そんな時にふと、夢南瓜があれば、一時的にも救われるのかなって考えるんです」


「観光協会の人気者でも悩みがあるんだな。なかなか奥底が深い悩みだが」


「刑事さん、観光協会はどうなるんですか?幸村さんたちが話しているのを横から聞いているだけで、私は馬鹿だからちゃんと理解はできないのですが、何となくわかるんです。協会はどこかで道を間違っているって。それが何か、大きな力の弊害になっている。今、協会が無くなれば、私は居場所を無くすんです。環境協会が生き残る道はあるんでしょうか?」


「あるとすれば、幸村、高山の首と引き換えってレベルの処分が必要なんじゃねえか」


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