取り調べ〜高山紫紺〜
「形式上の取り調べでしょう?」
後ろ手を組みながら部屋の中を歩く木村刑事に向かって、高山紫紺は姿勢も伸ばして腕組みしながら前方の冷たそうな壁を直視していた。
「ここで俺たちを絞り上げても何にも出て来やしない。まさか、聖女無天村が訴えてくるとでも?」
「幸村にも言ったが」と木村刑事は煙草に火をつけた。
「少々出しゃばり過ぎだ」
「葦原京の治安維持は我々に委託されている。警察こそ、首を突っ込まんでください」
「警察だけなら、相応に態度をとってくれるなら、もみ消してやらんでやらなくもないのだがな。もはや、警察ではどうにもならない事態になっている」
高山は組んでいた腕を解き、机の上に肘を立て、両手の指を絡ませて前のめりになった。
「これは俺の根拠なき憶測なんですけどね。もしも、フフシルの件に議会が噛んでいたとしたら、俺たちのやったことは、とんでもない迷惑沙汰ってことになりますよね?」
はっ、と木村刑事は鼻を鳴らした。鼻の孔から煙草の煙が噴き出した。
「嫌な憶測ってのは当たるもんですね?」
「後悔しているか?」
「いや、全然」
「はっきり言って、俺も知らん。知らされてはいない。だが、俺の憶測もお前と同様だ。そして、それが的中していたとした場合、俺は議会側について問答無用で観光協会を壊滅させる。葦原京のひとつやふたつ、いつ何時で取り締まることなんて簡単だ」
「俺たちは抵抗しますよ。例え国家権力が相手であってもだ」
「抵抗できる地力などないだろう」
「大事なのは過程さ。結果で負けても過程で勝つ。試合に負けて勝負に勝つということさ」
「その時は、観光協会なぞ、まるで最初から無かったかのように跡形もなく消し去ってやるからな。世間が、お前たちがいなくなったことすら気づかぬほどにな」
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