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第4話 愛妻とデート

 ナビの案内した紗菜の職場は、デカいビル。この市の市役所だった。


「ま、マジかよ。公務員だったの? そ、そりゃ家も建つし、新車のSUVも買えるよ。はぁ~。なんで工場勤めの俺を立てて、あんなにラブラブなわけ? めちゃくちゃ性格いいじゃん……」


 紗菜の職場に若干引き気味の俺。家とか、車とか俺の稼ぎだけじゃなかったんだなぁ。そりゃそうだよな。ちょっと俺SGEEEEEって思ってたけど。


 紗菜が、落ち着いた色のスーツを着て出て来た。超似合ってる。俺なんて工場に通うだけの普段着なんだけど。

 彼女は助手席に乗り込んだので、俺は後部座席に手を伸ばしてすぐさま花束を手渡した。


「わあ、すごい! さすがタッちゃん! きれ~い!」


 彼女は薔薇の部分に鼻を近づけてその薫りを楽しんだ。


「あの~。紗菜?」

「どうしたの?」


「そのぉ~。俺と一緒になれて幸せか? 家とか車とかのローン大変じゃないか? 家事とかもっと手伝うか?」


 紗菜はそれを聞いてもキョトンとしていた。


「え。考えたこともなかったな。幸せだし、ローンも可能な範囲だし、家事も好きでやってるしね」

「そうか……」


「どうしたの? なにか変だよ」


 そう。変なんだ。何しろ過去から来た。それともこれは2022年で俺が見ている幸せな夢なのかな。

 聖良にフラれて、幻影を見ているのかな。紗菜という理想の人を描きながら……。


「でも記念日にそう言うこと聞いて、自分をかえりみるのはタッちゃんらしいかも?」


 記念日──ッ!

 なんの記念日ですか? バレンタインだけじゃないの? バレンタイン記念とかバカップルにありそうななんでも記念日にしちゃうアレじゃないよね。

 紗菜はバカじゃないよね?


「じゃじゃん。問題です」


 な、なにぃ!? 紗菜のほうから問題ですと!? それは、俺の技なんですけど?


「今日はなんの記念日でしょう?」


 え──ッ! それを聞きたいのはこっちだよ! さすが俺の嫁! センスいいね。言われる前に言う。スゲぇよ、アンタ!


「えーとね」

「なんで迷うの? 自分で楽しみにしていろいろ計画してたくせに」


 それは六年後の俺です。楽しみにしてたんだね俺は。でも記念日と言えばだいたいアレとかソレぐらいしかねーよな……。


「結婚……記念日」

「はい、正解」


 よかったー! 正解でした。コングラチュレーション俺!


「と?」

「と~……」


 『と?』ってなに? このバレンタインに結婚以外、何を記念日にした? 俺よ。


「ヒントは六年前!」


 え。六年前のこの日、俺は聖良にフラれてヤケ酒を飲んでました。俺のフラれ記念日?


 考える。六年前のあの日。俺は橋桁に寄り掛かって目を閉じた。目を閉じた時間は2月14日が終わる時間。

 それが、この紗菜と記念日になるなんて……。


 ──そんなこと無理だ。


「……六年前のこの日。俺達は出会った記念日。だろ?」

「んふふ。せーかい」


 はっ。やっぱり。これは俺の都合のいい夢だ。六年前のこの日に紗菜と出会えるはずはない。

 俺がこう応えれば、俺の幻影である紗菜が理想通りに応えてくれているだけ。

 俺は眠る前に時計を見ていた。2022年の2月14日の23時51分。あと9分でその日は終わる時間だった。


 結局、聖良にフラれたことがショックで紗菜とリンとの幸せな夢を見せているのだ。目を覚ませばそこには現実がある。だが醒めたくない。この夢をもう少しだけ見ていたい。


「ほら。イタリアンで食事するんでしょ。今日は奮発しちゃう。仔羊のステーキも食べよう!」

「そうだな。思いっきり贅沢するか!」


 俺は夢の中を堪能することにした。

 紗菜に案内されたのは、俺が予約していたというイタリアンレストラン。

 紗菜は慣れているように、俺の分まで注文。自分が運転するからとワインを勧めてきた。

 さすが俺が作り上げた幻影! 俺の好みだわ。


 ワインも食事も最高。そして今夜は紗菜と最高の夜になりそうだな。


「紗菜!」

「どうしたの?」


 俺は目の前の笑顔の紗菜に提案する。


「明日は有給だ。紗菜もそうだろ?」

「そうだけど」


 やっぱり。俺の夢は俺の思うがまま。


「だったらホテルに行こう。海の見えるところがいいな」

「んもぅ。変態さんなんだから」


 イエーイ! やった! どうせ夢の中なんだ。羽目を外してやるぜ。


「もともと今日は二人目を作る約束だしね。排卵日だし……」


 と、いうことは……。

 つまり、そういうことですね。ヤバい。嬉しい。ヤバい。嬉しい。




 颯爽とレストランの払いを済ませて、運転席の紗菜の隣りへ。

 なんか、王様の気分です~。これから、このボインな紗菜とラブアフェアに励むと思うと興奮がスゴい。


「リン、大丈夫だった?」

「ああ、うん。お義母さんのオムライスを楽しみにしてたよ」


「やっぱりね~。ずっとその話ばっかりだったもんね」


 そんな夫婦の会話をしながら、紗菜は海の見えるホテルに入った。ビル型のラブホに慣れたように。

 俺はと言うと、あんまり慣れていない。聖良とは互いの部屋とかばっかりだったしな。

 いやいや、もう聖良はいいだろ。紗菜に集中、集中。


 俺は、最上階の部屋をとった。多少高いがいい。どうせ夢だ。渋沢栄一2枚くらいどうってことない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 人間万事塞翁が馬ですね。 [一言] 読ませて頂きありがとうございました
[一言] ホントに夢かな?( ˘ω˘ )
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