深海と宇宙
吐きそ。
空と宙の境目は何処なんだろ?
ここまで来るとあの真っ青だった空が闇に沈み、煌めく星の帷が舟を包む。
あー、僕たちは来てしまったんだ。
名前だけの惑星が行き先。この先のことを僕たちは何も知らない。
数多の星々を道標に只々闇を進む。
英雄のベルトを抜けてサソリの心臓を通り過ぎ、白い大河を横目に僕たちは進み続ける。
僕は暴れるのも叫ぶのもやめた。
ここでは無意味だとわかった。
叫び声は果てしない暗闇に吸い込まれて消えてしまった。
仏柱もスマホが圏外になったので不貞寝している。誰もが諦めていたんだ。
永遠に等しい旅路。
無限に続く暗闇。
数多に溢れる星々。
でも、僕たちと同じ存在はあの出発した場所以外には何処にもない。
「来るゾ」
今まで黙っていた印柱が声を発した。
何日ぶりの誰かの言葉だった。
「何が来る?」
暫しの沈黙。
彼はゆっくりと口を開いた。
「特異点だ」
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この青い深い海は、我々の母である。
この星の数千数億数兆、いや、もっともっと遥かに多い生命の起源。
星が生まれ46億年。生命が生まれてから35億年。我々にとっては途方もない年月が只のタンパク質の特異形成だった極初期の生物を、自我と知性を持った高次な生命へと導いた。
途方もない進化の歴史。我々は偶然と幸運の産物なのだろうか?
この進化の果てには何が待っているのだろう。
生命は母なる海から独り立ちし、陸に上がった。我々はその大地からも足を離し、今故郷を後にした。この先は未知の領域だ。
人間は確かに今この星で最も進んだ生命だ。
しかし、その立場も永遠ではない。
我々は行けるのだろうか?海を泳ぐ魚が陸に上がった時のように。陸を走るトカゲが空を舞う鳥になった時のように。
我々は次のステージに立てるのだろうか?
だが、確かなことがある。
その次のステージに立った生命は、もう人間とはいえない。
宇宙へ飛び立つ人類を水面下で見つめる者がいた。彼らは人類を、いや、進化の歴史を太古より見守ってきた。
そして、機を窺っていたのだ。
「彼らは、どうなるだろうね」
彼は優しい笑みを浮かべて彼女に問うた。
彼女はその目の奥の鈍い光を見た。
「アタシは……」
終わりと始まりは同じだ。
この深い深い海の底より生まれて、そして消えていく。
彼女は自らに掛かる水圧に耐えながら、光の届かない闇の中で、終わりのそのずっと先を見つけようと決めた。
俺とお前らじゃクリスマスの過ごし方の次元が違うんだよ!!




