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グレー・メモリー  作者: パセリ
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彼と彼女の出会い

どうもパセリです。新しい投稿を始めました。

『FIW』も投稿していますが、こちらの作品をメインで投稿していこうと考えています。

人生なんてくそくらえだ。どうして俺がこんな仕打ちを受けなければいけないのか……どうして人は良い方には変われないのだろうか……


「人は変われる」

こんな言葉を聞いた事は無いだろうか。例えば、そう何か失敗してしまった時。


「そんな一回のミスなんて気にするな。人は変われるんだ次は失敗しないように変われば問題なんて無いさ」

この言葉は小学校三年生の時の担任の先生が俺に言った言葉だ。


――あれは夏休みまであと一週間くらいの時。俺は同級生を殴ってしまった。そいつは周りからの人望もありカリスマ性もあるイケメン野郎だった。仮にK君(クズ君)と言っておこう。その日は特に何も無く関わる事も無かった平穏な一日だった。朝、学校に登校してから夕方の下校時間まであいつとは何も無かった。いや一度だけあったんだ。

昼休み。俺はみんなの輪に入れずにただただ一人ぼっちで立ち尽くす時間を過ごしていた。その時、K君(クズ君)が話しかけて来た。

「どうして君はいつも一人なんだい? そんな所に居ないで僕らと遊ぼうよ」

その言葉は普通なら優しい少年がぼっちで可哀そうな少年を助ける。そんな素晴らしい光景だったのだろう。ただ俺は分かっていた。あの時K君(クズ君)の顔は確かに笑っていた。――しかし俺を見る目は笑っていなかった。まるで道端に捨てられた犬の糞を見る様に。まるでこっそり食べようとしてたお菓子の賞味期限が一週間も過ぎてた時のお菓子を見る様に……そんな目で俺を見ていたクズの顔を俺は殴ってしまった。


――その後、親を呼ぶにまで事態は悪化し学校に来た俺の母さんはひたすらK君(クズ君)の親に謝っていた。

「俺は悪くないあいつが俺をあんな目で見て来たから……」

俺は何度も抗議した。しかしこんな小さい少年の言葉に耳を傾ける大人なんて居ない。

K君(クズ)の親が俺を見る目は「大事な子供に傷を付けた害」そんな事を考えてる目だった。

俺はその時のあいつの顔を忘れない。自分の親の後ろで泣く真似をしながら俺をあざ笑う顔で見ていたあいつを。


――結局 俺は謝る事をせず問題児もレッテルを貼られた。最初は怒っていたK君(クズ)の親も最後には呆れて帰ってしまった。何が

「K。もうあんなのと付き合っちゃダメよ。お母さん怖くて学校にも行かせられなくなっちゃうから。そんな事よりこの後 夕飯の買い出しに行こうか Kは何食べたい?」

「はんばーぐ」

「そう分かったわじゃあ買いに行きましょう」

だ。何がハンバーグだ。お前はなんでそんなに呑気なんだよ。では無く何が『あんなの』だ。俺にだって名前はあるんだけど……なんて言えるはずも無く、あの親子は言ってしまった。二人が居なくなった教室で俺は担任の先生にこう言われた。


「そんな一回のミスなんて気にするな。人は変われるんだ次は失敗しないように変われば問題なんて無いさ」


俺と母さんは先生に挨拶をして学校をあとにした。

家に着くと今度は母さんに怒られた。やれお前のせいで残業が増えただの。やれ向こうへの慰謝料だの。やれ産むんじゃなかっただの。母さんから出た言葉に俺への心配や「向こうの方が悪かったのでは」といった疑念など無く完全に俺を悪と語っていた母さん。あの時だろう。俺とあの人の家族の縁が切れたのは。


――あの日、唯一の味方だと思っていた母さんに裏切られた小さかった頃の俺は人としての心を閉ざし固く強く扉を縛った。


次の日。朝起きて下に降りるとき、階段から母さんが玄関から家を出るのが見えた。出ようとした母さんは俺に気付き「おはよう」と心の籠って無い挨拶をしてきた。今までだったらしっかりと「おはよう」が言えたがその日から俺は「あぁ」としか返せなくなった。


「ガチャンッ」


俺の心の中で何かが閉まった音がしたがその時の俺は気付かなかった。


学校に行くと早速昨日の噂が出回ったのか俺をちゃんと見る者は居なくなった。

俺はそんな人の目から逃げる様に教室に入った。教室の中に入り一安心のため息を付く。すると教室の中の方から悪寒がしてきた。俺はその方を恐る恐る見る。その悪寒の正体は教室内の連中だった。確かに安心した俺がバカだった。昨日のあれを……俺がK君を殴ったのを見たのは居た。このクラスの連中でしかも一人二人なんて人数じゃない。もっと大勢の人数が昨日の事を目撃している。


――その時俺は悟った。噂を流したのはこのクラスの連中でクラス内で俺は敵。あいつら(クラスの奴ら)は俺をハブる事で自分達が上の優劣を付け上の自分が偉い事に喜んでいる。性別なんて関係無い。このクラスの連中は男女問わず俺に味方するものは居なかった。


もともと俺は一人で学校生活を送っていた。理由は簡単だ。クラス内にもグループは幾つかある。クラスという大きな組み分けの更に小さく細かくなったクラス内のグループという組み分け、その一つ一つを俺は観察していた。そして気づいたんだ。グループ内では上下が存在し上に媚びへつらう下が居る事を、俺は上にはなれない事、媚びへつらう醜い下の存在を見てしまった俺はグループに入ろうとしなかった。


あの時もしどこかのグループに入っていれば誰か助けてくれたのかも知れない。ただ当時は自分から一人になっていた。あの頃はそれが楽で良かった。

だからこんなに一人が辛い事を知らなかった。


それからは毎日上履きをゴミ箱に捨てられ、クラス内では俺だけを傷つける言葉が行き交う。放課後K君(クズ)のグループに呼ばれては暴力暴言の数々。

明らかに傷つけられた俺の身体を見ても何も言わない母親。


「ガチャンッガチャンッ」


先生に相談しても一向に解決しない虐め。

そして遂には職員たち(大人たち)K君(クズ)に加担し始めた。


――俺に「人は変われる」事を教えてくれた先生は変わってしまった。

相談なんて聞く耳を持とうともせず朝の出席確認では俺の名前をわざと間違えて笑いものにする。

機材を必要とする授業ではわざと俺の分を引き授業を受けさせない。

俺は大人の醜さに絶望した。


「ガチャンッ」

俺の心の中で完全に閉まった奇妙な今までとは少し違う音が聞こえた気がした。その日俺は人間の心を忘れた。人間を辞めてしまった。


----------------------

それから六年後……


今、俺は人気の無い道に隣接してる線路の上に立っている。理由は察する通り【自殺】だ。

俺は15歳になった。この年になると大体の人は高校へ進学する。少数だが進学せずに働き始める人も居るだろう。そんな中、俺は進学もせず働く気も無かった。俺はこの六年間で『俺はもう人じゃ無い。周りの人間共に合わせる必要は無い』と自分に言い聞かせ生きて来た。『人間じゃない』と言っても誰かを殺したりなんてしてない。昔の()()()()で見て来た奴らは人は醜いから仕方ないと思っている。俺はまた人間に戻らないように醜い事はしない事にした。醜い事は人間の証だと気づいたから。


――ただ最近生きる意味を見出せなかった(みいだせなかった)見出せなくなってきたみいだせなくなってきた。良く良く考えたらどうして今まで生きてこれたのか謎で仕方なかった。この六年間 俺は何を生きる意味とし過ごして来たのか思い出せない。確実に生きる意味や価値があったのは覚えている。そして最近その意味を諦め見失った事、忘れる訳が無い。でも思い出せない。


彼は人生で初めて混乱した。昔虐められた時も誰にも手を差し伸べて貰えなかった時も「そうなんだ」って諦めてた。


諦めればそれで済む。人は誰かを傷つけないと生きていけないって知っている。その傷を付けた相手が俺で傷つけたのがあのクラス内でリーダー的存在だったあいつだったから俺に集中しただけ。

自分でも分かってる。それが正しい。自分が傷つかない為に誰かが犠牲にならなきゃいけない。その誰かが俺だった。それだけなのに……





――悔しい。


彼は泣いた。化け物は泣いた。化け物は初めて泣いた。誰も通らず静かな線路の真ん中で彼は大声で泣いた。

死ぬ覚悟はあった。遺書も書いた。自分でも頑張って来たと思う。もう充分だと思った。でもダメだった。とうの昔に捨てた感情がこみ上げてくる。どうして俺なんだろう。なぜ俺は俺を殺そうとしない。死ぬ決意はしたはずだった。これ以上生きる意味が無いのは分かっていた。見出せない(みいだせない)んじゃない。もう()()()()()()


どうして。どうして。


もう俺が息を吸う意味なんて無い。なのに……


どうして。どうして。


まだ生きたい自分が居る。


どうして。どうして。


「あぁそうか。やっと分かった。俺は生きたい。でも生きる意味が無いから死ぬのか」

俺はただただ笑う事しか出来ない。ただ笑う度にそんな自分が嫌で握る拳への力が増していく。笑うことしか出来ない自分の愚かさが嫌でそんな自分が許せない気持ちが増していく。


どうして。どうして。


生きる意味が無い事は理解した。生きる意味が無い奴は人だろうが化け物だろうが元人間だろうが生きることは出来ない。これは自然の摂理だ。でもそれを否定したい自分が居る。否定しないと生きられないなら否定する自分が居る。


「いやだ」「まだだ」「いやだ」「まだだ」「いやだ」「まだだ」……


|否定せずに死にたい自分いやだと|否定してでも生きたい自分まだだが頭の中で戦いあう。

その戦いを考えるだけで醜いと感じてしまう。今まで化け物として生きて来た俺は醜いからすんなり否定せずに死にたい。産まれてから化け物以上に人間として過ごして来た俺は醜くあがいても生きたい。


「俺は死にたくないんだ。……でももう遅いか」


右から電車の来る音が聞こえて来た。いくら昔の俺(人間)があがこうが今の俺(化け物)の方が強い。意志が強い。信念が強い。


「生きる意味の無い(化け物)がここで戸惑ってたらいけないよな」


俺は立ち上がり電車が通過する正真正銘の線路へ向かおうとした。その時……




「生きる意味が欲しいなら私が貴方に生きる意味を作りましょうか?」



「……え」

俺は固まった。後ろからいきなり話かけられた事もそうだが、俺に話しかけて来た女性は、彼女は俺に「生きる意味を作るか」と聞いてきた。その発言は俺の体を止めるのに充分だった。俺の目から涙が零れる。さっきの涙とは決定的に違った涙を(化け物)は流した。


――その時、彼は思い出した。


今まで生きてこれた、生きる為に必要だった意味。結局諦めた、生きる事を諦めた意味。ずっと求めてた、待ち続けた意味。


【彼は誰かに認めて欲しかった】


自分の事を。自分の意思を。自分の存在を。


――そうだ。俺は認めて貰う為に生きて来た。

誰かに認めて貰いたかった。


「はい。俺が生きる為の意味を貴女が作って下さい!」


----------------------

これは小さい頃 迫害され孤立し人としての心を胸の奥深くに閉じ込めた少年(化け物)が【自殺】寸前で助けてくれた女性と共に歩みながら人の心を取り戻すおはなし。

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