異世界旅行(第4部)
薫は、その日
隆史の家ヘ遊びに来ていた
楓も、来ており
隆史の、部屋ヘ入って行くと
2人で、何か話している
その雰囲気に、声をかけにくく感じた
薫
「隆史さん」
思い切って声を掛けた
隆史
「ああ、薫さん、いらっしゃい」
楓
「こんにちは」
薫
「こんにちは、お邪魔だったね」
楓
「そうそう、なんて嘘ょ」
薫
「とても
真剣な話だったみたいだから
入るのためらっちゃった」
楓
「ごめんなさい、大丈夫ょ」
隆史
「そうさ、大丈夫だょ」
薫
「何だか最近
二人共難しい顔してるわね?
何かあったの?」
隆史
「いや、何もないょそうかい?
そんなに難しい顔してたかな?
たまたまさ」
薫
「そう?それならいいんだけど」
楓
「ええ、何もないわょ
ありがとう心配してくれたのね」
薫
「そっか
たまにはそういう事も
あるわよね?」
隆史
「そうそう、気にしなくていいよ」
薫
「うん」
小さい頃から知っている
隆史の様子に
薫は、どことなく
腑に落ちないでいたが
話したくない事もあるだろうと
それ以上は、隆史に尋ねなかった
薫は、隆史の部屋の本棚に目を移し
なぞりながら
薫
「ねえ、隆史さん
これ借りてもいい?」
隆史
「いいよ」
薫
「ありがとう」
一冊の本を選び、
部屋のソファに腰掛ける
隆史
「それじゃあ、僕は珈琲でも
煎れてくるょ」
楓
「ありがとう隆史さん」
薫
「うん、ありがとう隆史さん」
薫はソファに腰掛け一冊の本を読み始める
楓もまた、隆史の本棚から分厚い古書を一冊とって、読み始めた
時計の、秒針を刻む音だけが
静かな部屋に、聞こえてくる
隆史が、珈琲を持って
部屋に入り、2人の前に置いた
隆史は
薫が、部屋に入って来たときに
持っていた読みかけの古書を手に
読み始めた
薫は、隆史の本棚に並ぶ
あらゆる本や、隆史の父親の
古書を、読むことが好きだった
隆史の、部屋で一冊を読み
数冊借りて、家で読む
隆史の部屋が、薫にとって
図書館よりも、有意義な場所
学生の頃には、隆史に勉強を見てもらったりもしていた
熱い珈琲を、口に運びながら
ゆっくり、頁をめくる
静かな時間が部屋に流れる
隆史と楓が、古書を手に
また、話始める
薫は、本を読みながらも
翔平との旅行に思いを馳せていた
薫が、数十頁読み進めた頃
時計の針が、18時を告げた
隆史
「もう、こんな時間か…
薫ちゃん夕飯食べてくだろう?」
薫
「うん、勿論」
そう言いながら、微笑む
隆史と楓、薫は本を閉じ
階下へと、降りていった
楓
「さて…」
楓が、夕飯の支度を始める
隆史
「僕も、手伝うよ」
薫
「楓さん、私も手伝うわ」
3人で、料理を作り始めた
料理ができ、テーブルにつく
薫
「そういえば、隆史さんと楓さん
この前大きなバックを
持っていたけど
旅行に行ったの?」
隆史
「あ…うん、ちょっとした旅行さ」
薫
「そうなんだ
私も、今度翔と旅行に行くのょ」
隆史
「そうかい、楽しんでおいで」
薫
「うん、ありがとう」
食事を終え、部屋に戻る
それぞれが、手にした本の続きを読み始めた
薫がふと、本棚に目をやると
隆史の本棚に今までなかった
変わった本を見つけた
その本に、触れようと手を伸ばす
隆史
「薫ちゃん!その本は駄目だょ!」
薫は、いつになく厳しい
隆史の声に、驚いた
薫
「あっ!ご…ごめんなさい」
隆史
「いや、こちらこそごめんね
驚いただろう」
薫
「ううん、大丈夫ょ」
薫は、そう言いつつも
隆史の様子に
ただならぬ何かを感じていたが
聞いてはいけない気持ちになり
それ以上は尋ねなかった
そういえば、この部屋
最近、変わった本や物が
知らない間に増えている
薫は、改めて部屋の中を見渡した
触れようとした
変わった古書をはじめ
見たことのない道具のような物も
部屋の各所に置いてある
恐らく、触れてはいけないのだろうと直感で感じていた
好奇心旺盛な薫
気にならない、と言えば嘘になる
部屋の、角に置いてある
木の枝のような物や
数個の黒い石も、気になっていた
数時間がすぎると
外も、暗くなり
薫
「そろそろ帰るわね
あっ、借りて行くね」
隆史
「ああ、うん
今日は驚かせたね、ごめんね」
薫
「ううん、私こそごめんなさい
じゃあ、今度返すわね」
隆史
「いつでも、いいよ」
薫
「ありがとう、楓さんまたね」
楓
「ええ、気をつけて帰ってね」
薫
「はい、近所だもの大丈夫です」
薫は、隆史の家をあとにした
薫
「それにしても
やっぱり気になるなぁ
今日の隆史さん…」
気になりながら部屋に入る
数冊借りてきた本の中に
変わった羊皮紙の本を見つけ
薫
「あっ!
間違えて持って来ちゃったわ
まぁいいか、今度返そう」
そう思いながら
羊皮紙を捲って見たが
わからない
文字らしきものの羅列
薫
「全然読めないなぁ」
数頁捲って、すぐに閉じた
薫
「もしかしたら
すぐ必要な本なのかも
しれないわね」
薫は、本を手に隆史の家へと向かった
隆史の、家へ着き
本を返す
隆史
「ああやっぱり、薫ちゃんが
持って行ってたのか」
薫
「ごめんなさい
間違えて
持って来ちゃってたから」
隆史
「いや、大丈夫だよ
ありがとうね、薫ちゃん」
薫
「うん、じゃあまたね」
隆史
「うん、じゃあ」
薫
「やっぱり
すぐ必要な本だったのね」
家に戻ると、本を返せて良かったと
胸をなでおろした
隆史から借りてきた本を
読み始めた
窓の外は、雨が降り始めていた。