異世界旅行(第27部)
明けまして
おめでとうございます
年始の挨拶から始まった
年末年始は、薫は翔平と共に
一旦、実家へと戻っていた
薫
「翔今年もよろしくね」
翔平
「うん、薫今年もよろしくな」
久しぶりに戻った現世界は
ウィルスが蔓延し
人々は
自宅に居ることが、多くなっていた
異世界にウィルスはなく
平和な世界が、広がっている
薫
「ねぇ、翔大丈夫?」
翔平
「ああ、今のところは大丈夫」
薫
「うん、ウィルス早く治まるといいね?」
翔
「ああ、僕達も気をつけよう」
薫
「ええ、そうね気をつけましょう」
街は、人々の姿も少なく
どこか、寂しげな感じがした
翔平の家で
暖かなcoffeeに、口をつけながら
薫は、TVをつけた
薫の好きな
夜のドラマが、放送されている
TVを、観ながら薫は、翔平と
今、自分達が、幸せな一時を
過ごせる事に感謝していた
薫
「ねぇ翔…
そろそろ異世界へ戻ってみない?」
翔平
「うんそうだね、今んとこ大丈夫そうだから戻ろうか?」
薫
「うん❣」
2人はシャトルへ向かった
「お帰りなさいませ」
シャトルへ乗りこむと
案内人が、言葉をかけた
ブゥゥゥゥーン…
シャトルが
ゆっくりと動き出す…
スン…
静かにシャトルが降り立ち
2人は、鑑の間へと戻ってきた
薫
「ふぅー、着いた」
「お帰りなさい」の声と共に
椅子に、腰掛ける
テーブルに置かれたワインを
ゆっくりと、口へ運ぶ薫
薫
「美味しい…」
甘く、芳醇な香りがひろがる
翔平
「うん、美味い」
2人は、ワインを飲みながら
鏡の間の窓から見える風景を
ぼんやりと眺めた
虹色の雪が、降っている
薫
「綺麗ね?…」ほぅ…
ふっと、息を吐きながら
窓の外に降る
虹色の、雪景色を眺める
穏やかな時の流れが
ゆっくりと、流れている
薫
「次は何処へ行こうかな?…」
翔
「うん、そうだね何処へ行こうか?」
そう言いながら
翔平は、薫の横顔を
愛おしそうに、見つめていた
素敵な音楽が、館内に流れている
薫
「そうだわ❣…決めた!」
翔平
「ん?…」
薫は翔平の手をとり
額縁へと向かった…
薫
「来てよかったー❣」はしゃぐ薫
そこは
一面の銀世界が、広がった
現世界に似た異世界
見渡す限りの雪景色
ザクッ…ザクッ…
雪を、踏みしめる音がする
所々に、雪が積もり
雪山の様になっていた
薫
「寒っ…」
翔平
「大丈夫かい?ほら…」
薫
「ありがとう、翔」
翔平は、そっと薫に上着をかけた
銀世界が広がる向こう側に
街が、見えていた
2人は、足元に気をつけながら
雪道を、歩いていく
時折、風が吹き
氷の様に冷たい風が、頬をなでる
薫
「うっ…冷たーい…」
翔平
「大丈夫かい?薫」
そう言いながら翔平は
薫の肩を、そっと抱いた…
街に着くと、住人が忙しそうに歩いていく
異世界でも現世界と同じく
防寒着を着る人々が、下を向き
通り過ぎていく
街並みに点々と
薄いフィルム状の画面が
幾つも、浮かんでいる
画面の中では
ニュースや広告だろうか?
数多の映像が流れている
突然
脳内に言葉が流れ込んできた
テレパシーの様なもので
それはマーシャルからだった
マーシャル
「お久しぶりです、薫さん翔平さん、お元気でしたか?」
薫
「マーシャルさん、お久しぶりです…何かあったのですか?!…」
マーシャル
「ええ…隆史さん方には連絡してありますが…実は…扉が…」
薫
「扉?…ああ隆史さん達が守っている異世界への扉ですね?」
マーシャル
「はい、扉に異変が起きてるようなのです、今何方にいらっしゃいますか?…」
薫
「今ですか?…今はとある異世界に来ています」
マーシャル
「…そうですか…それでは異世界のホテルへ戻られてください」
薫
「…わかりましたすぐ戻ります」
マーシャルの緊迫感を帯びた声に
薫と翔平は、今すぐ戻ることにした
薫
「翔、扉に異変が起きたみたいね
急いで戻りましょう」
翔平
「ああ、急ごう…」
異世界の扉へ向かう2人
銀世界が広がる道へと戻っていく
しばらく急ぎ足で歩いていると
グニャリ…
視界にひろがる景色が
曲がる様な感覚に囚われた
薫
「翔!…急ぎましょう?!」
翔平
「うん!」
急ぎ足で、扉へと着いた
額縁に手を当てる…
シュン…
鑑の間へと戻るとざわざわと
人々の声が、飛び込んできた
不安そうにざわついている
薫
「こちらも異変が起こってるのね」
翔平
「ああ、そうみたいだね?」
額縁を見渡す
いくつかの額縁が
ガタガタと、音を起てている
ジー…ジー…
額縁からは
そんな音が聞こえてくる
シューン…
微妙な音が微かにした直後
音が止みいきなり静かになった
薫
「何?…何が起こったの?」
動揺している薫
翔平は、そっと薫を抱き寄せた
薫の肩を抱きながら
翔平
「…大丈夫だょ…大丈夫…」
翔平は、薫の背中を擦りながら
一瞬、静かになった館内に
また動き始める額縁…
翔平は
ガタガタと、音をたてながら
動く額縁を見つめる
動きは止まず
いつまでも動き続けている
数時間程続き…またピタリと止んだ
「いったい!…何なんだ!」と
何処からか
男性の声が聞こえてくる
館内アナウンスが流れた
「お客様にお知らせします…
異世界の扉である額縁に
異変が、起こった様です
原因を調べる為お客様は暫くの間
部屋にお戻りください…」
アナウンスが流れると
ぽつりぽつりと人々が部屋へと
戻り始めた
薫
「私達も、部屋に戻りましょう?」
翔平
「ああ、そうだねこのままここにいてもなんだし部屋に戻って待つことにしよう…」
薫
「ええ…」
2人は部屋へと戻る
薫
「大丈夫かしら?…原因がわかればいいんだけど」
翔平
「うん、マーシャルさんの話にもあったけど、原因を突き止めるのは難しいかもしれないね?…」
薫
「…そうね…」
薫は、部屋の窓際に立って
窓から外の虹色の雪を見つめていた
数時間程経ち
ソファーに腰掛けながら
手にとったフィルム状の画面
ニュースが流れている
「…各地で異世界への扉に異変が起こっている模様です…各地の現場から…………」
館内アナウンスが
部屋に流れてきた
「…お客様にお知らせいたします…
只今、原因を調べておりますが…
未だ、現在わからない状態です…
今、暫くお待ちください…
尚、原因がわかるまでは
暫くの間、異世界旅行は
出来ませんので…御了承ください…
」
薫
「…やっぱり…」
翔平
「………」
館内アナウンスが流れた時には
既に、夜になっていた
窓の外では、虹色の雪が
音もなく、深々と降っていた