異世界旅行(第19部)
薫達が着いた場所は
色とりどりの街並みが
可愛らしく並んでいる
そんな感じの街だった
空は青く
真っ白な雲が、浮かんでいる
童話の中に出てきそうな異世界
道端に咲いているタンポポを
薫が手に取り
舐めてみる
甘い!
綿菓子の味のようだった
家々は一軒家風だが
家自体がまさにお菓子
食べられるようだった
薫達が見上げた空は
青空とオーロラが
入り混じった様な空だった
街並み全体が可愛らしい
道端に咲く花々は原色で
飴細工でできている
オーロラの部分に触れてみる
フワリとした触感
薄いベールが
ゆらゆらと揺れていた
一人の人物が
何やら呪文を唱えている
近づいていくとまたも
楓に似ていた
話しかけて見るものの
言葉が通じないようで
通訳機器を使った
どうやら彼女は
マーシャルの知り合いらしい
楓とも叶恵とも違う
また別の異世界の
楓そっくりの人物だった
彼女の仕事も楓と同じく
異世界の扉を、守ること
古書を片手に持ち
片手には
文章らしきものが、書かれた石碑
その石碑を見ながら
一軒の、お菓子の家の扉に
向かって呪文を唱えていた
呪文を唱え終わると
扉全体が一瞬光って止まった
扉からは薄っすらと
「ヴゥゥゥゥーン…」と
小さな重低音が聞こえて止んだ
薫は、自分達がこの仕事をせずに
済んだことに
良かったと、感じていた
彼女はエリーと名乗った
エリー
「初めまして!…そう
楓さん達の事は
マーシャルから聞いてるわ」
マーシャルは楓達以外にも
多数の異次元や異世界へ行き
扉を、守る人達にあって
扉の守り方を教えている
エリーもそのうちの1人
彼女は日々この家の扉以外にも
数カ所ある扉を1人で守っている
エリーの家へ案内してもらって
訪ねると、彼女の家も
バームクーヘンで作られたような
可愛らしい、丸い造りの家だった
エリーから話を聞くと
扉を守る日課は
1日に数カ所周り
それを毎日繰り返しているとのことだった
扉には亀裂は
入っていないが
幾つかの家や、空間に浮く扉は
時折さっきのような
一瞬の光が点滅したりする
不安定な扉が幾つかあるらしい
毎朝その扉に行っては
呪文を唱え
その点滅が消えるのを確認してから
次の扉へと移動する
この街の乗り物も変わっていて
リンゴの様な形をした車で移動する
乗り込むと
中には椅子が置かれていて
思念で動く仕組みになっている
行きたい場所を念じると
自然に動き出し
目的地まで運んでくれる
この異世界の異次元に行く
行き方は額縁ではなく
窓だった
飴細工で出来た硝子部分を
手でなぞる
すると
異世界へ行ける
異世界へは
行けるがここの住人は
滅多に異世界へは
行かないらしい
異世界に行くには
ジェットコースターの様な
乗り心地がするので
行くのを躊躇う人が
多いとのことだった
エリーが、薫達に特別に
振る舞ってくれたのは
サプリメントだった
食事は、お菓子の様なものが多く
栄養は、サプリメントの様なもので摂っていると話してくれた
エリーの家にあるもの全てが
甘いお菓子で造られている
季節はなく
年中が春の気候
家の中では全て自動
思い浮かべるだけで
様々なものが出てくる
大きなクッキー生地のテーブル
に静かに手を乗せ目を閉じ
思い浮かべる
すると
テーブルの上には思ったものが
出てくる
エリーがテーブルの上に手を乗せは目を閉じると
テーブルの上にはアップルパイと
紅茶が現れた
薫と翔平はアップルパイを
ほおばりながら
エリーの話を聞いていた
3人はマーシャルや楓達の話で
盛り上がっていた
窓から見える
オーロラは夕陽を受けながら
更に輝いて見えていた
家の中には何もなく
思い浮かべると出てくるため
薫も試して見た
眠気が襲ってきたため
ベッドを想像する
「ボン…トン」
音がする方を見ると
部屋の隅に可愛らしい
ベッドが置かれた
エリー
「お休みになられても良いですょ」
くすりと笑いながら薫を見た
薫
「ありがとう…大丈夫です」
少し恥ずかしそうに答えた
エリーの家を出て街へ戻ってきた
街並みは夕陽に照らされて
オーロラも、色を濃くしていた
青空はいつの間にか
紅く染まり風も少し冷たくなって来ていた
レストランに入ると
人が多く
色彩鮮やかなドレスを纏った
人々が食事を楽しんでいた
薫と翔平も
テーブルに付く
テーブルに手を乗せ
食べたいものを思い浮かべる
テーブルの上には思い描いた
食事が現れる
基本お菓子かと思ったが
どうやら
思い描いた食事は
普通に現れるようだった
薫と翔平は
中華料理を想像し
思い浮かべたため
テーブルには中華料理が
ちゃんと現れていた
恐る恐る食べてみる
味もちゃんとした中華料理だった
薫
「美味しいわね普通の料理で
ホッとしたわ」
翔
「ああ…僕もだょ」
2人とも安心して笑顔になっていた
料理を堪能した薫と翔平は
レストランを後にした
エリーと出会った近くまで戻って来ると
一軒の家の窓に手を置き
なぞる
「ヴゥゥゥゥーン…」
重低音が小さく鳴った
理沙
「お帰りなさいませ」
いつもの理沙の声が聞こえた