異世界旅行(第18部)
翔平はまだ部屋で寝ていた為
薫はそっと部屋を出て
鏡の間へとやってきた
理沙がカップに珈琲を注いでくれた
窓際に近い、テーブルに腰掛け
窓の外を眺めると
朝日が、鏡の家々に反射し
キラキラと美しく輝いていた
鏡の異世界では
滅多に雨が降らず
気温も温暖で過ごしやすい
薫がテーブルについてから
1時間程経過した頃
翔平が現れた
翔
「ごめん、ごめんすっかり寝坊しちまったな」
薫
「やっと起きてきたわね」
微笑みながら翔平に話す薫
薫
「今日はあそこに行ってみない?」
翔
「うん?あーあそこねいいかもしれないな」
2人は、パンフレットに
目を通しながら話した
薫
「ここ、いいでしょう?」
翔
「ああ、薫が行きたい所でいいよ」
行き先が決まり
カップをテーブルに置くと
理沙の元へとやってきた
理沙
「お決まりですか?…はいこちらですね?それでは、こちらへどうぞ」
鏡の間の額縁に立った
額縁の真ん中に手を置く
「シュン」…微かな音
2人が着いた所は
一面がシルクのカーテンで
覆われているような場所だった
そっと触れてみると
柔らかく
持ってみると
重さをまるで感じない
風がふくたび
フワフワと揺れてカーテンが
揺れるように揺れる
足元はわりとしっかりとしていて
雪を踏む感覚に似ていた
遠くを見ると賑やかな街が見え
薫は以前異世界で買った
シルク生地のようなドレスを
1枚身に纏っていた
触感はツルツルとしているが
肌触りがよく思ったよりも
暖かい
薫
「買っといて良かったわ
この異世界にピッタリね」
翔
「うん、似合うよ」
そう言いながら
少し照れくさそうに見えた
2人は、街まで歩いてやってきた
街に来ると
華やかなシルクのような衣装を
身に纏った人々が
大道芸のようなものを見ていた
薫達も、その中へと入っていった
街の中には
大道芸やイベントが各所開かれ
賑わっていた
建物も白に統一されており
見てるだけでも
絵画の様な、美しさだった
その中に美術展があっており
中に入ると
幾つもの絵画と額縁が置いてある
額縁は異世界への扉になっており
ここも鏡の間と同じく
異世界へ行ける事が出来るようだった
ここの額縁は少し変わった形をしていて
四角ではなく
三角や丸い形のものや
楕円形のものまでと様々な形をしている
何処かの観光客が
額縁の前に立っていた
その様子を眺めていると
鏡の間とは少し違い
額縁の縁を左から右へと
なぞっている
一周なぞり終わると
観光客が
異世界へ行ける仕組みに
なっているようだった
薫と翔平は数組の観光客が
異世界へ行く様子を暫く眺めていた
案内人らしき人物に
近寄り話を聞く
ここの異世界は
鏡の間の異世界とはまた異なっており
たまに、危険な目に合うらしい
スリルを楽しめる観光客が
多く集まり行くとのことだった
美術展の観光客と
絵画を堪能した
薫と翔平は、数時間程で後にした
美術展を出ると露天が並んでいる
場所へと移動
可愛らしい服やアクセサリー
美味しい食べ物の露天が
並んでいる
暫く見ていると
雨が降ってきた
急いで店頭へ雨宿りをする
ここの雨は文字通り水色を
していて白い建物に水色の雨が降り
建物も水色へと染まっていく
一角にテントを見つけて
そこへ移動すると薫の世界で言うところのサーカスの様なものだった
違っているのは
全ての動物達が話せる事だ
可愛らしい動物達の劇のようで
見ていて飽きない
劇の内容はドラマに出てくる
恋愛物
時には、笑いながらその劇を
眺めていた
劇を見ている間に雨も上がり
劇が終わって外に出た頃には
夕日が差していた
ここで一番薫が気に入ったのは
露天に売っていたフランクフルトのような食べ物だった
薫の世界よりも
2倍程大きいもので
2つも食べれば
お腹いっぱいになった
露天のあちこちを見ているうちに
夕日も沈み
薄暗くなっていた
シルクの町並みは
薄暗くなると街全体が
薄っすらと明るく照らされ
人工のライトのように輝いていた
雨に濡れたシルクのカーテンの
部分に触れるが
濡れておらず
ラメを入れたように雨粒が
光って落ちる
すっかり街が暗くなってくると
まるで花がしぼむように
街全体をシルクが覆い出し
全体を薄っすらと照らし始める
すると
日差しはないが
色とりどりの仄かな明かりが
全体に広がり
星のように美しく輝いた
薫と翔平は
元の額縁へとやってきて
鏡の異世界へと戻った
理沙
「お帰りなさいませ
如何でしたか?」
薫
「ええ、とっても素敵だったわ」
理沙
「そうですか、良かったですね
今ご夕食の準備をいたします
テーブルでお待ちください」
薫と翔平はテーブルについた
テーブルの上には
ワインが置かれていて
メイン料理はステーキだった
翔平はステーキを
おかわりすると
あっという間に食べ終わっていた
鏡の間のテーブルには
美しい蝋燭の灯りがチラチラ
と揺れていた