異世界旅行(第16部)
隆史と楓は
この日も
公園の、異世界の扉の様子を
確認しに公園へと来ていた
先日、確認したときより多少
亀裂が大きくなっている
様に思えた
楓
「変ね、少し広がってるように
見えるけど…
ねぇ隆史さんそう見えない?」
隆史
「そうかい?…
僕には変わらない様に
見えるけどな」
誰もいない深夜の公園は
寒さもあって
冷んやりとしていた
楓は、思い過ごしかと考え
首を横に捻った
この日は、いつもより寒く
粉雪がちらついている
最近は妙な事が多い
1枚になった羊皮紙が
時折薄っすらと輝く
き点滅するかのような
光を発する事もある
それに
今日の公園の扉の亀裂も
広がっているように感じる
粉雪が本格的に牡丹雪に
なってきたため
隆史と楓は一旦
家に戻る事にした
寒さが身にしみてくる
ふうーと掌に息を吹きかけ
擦り合わせる
寒い中隆史の家へと
戻って来てストーブをつける
隆史が楓にそっと上着をかける
楓は、隆史に珈琲を手渡す
暖かな温もりが掌から
伝わってくる
その時、
隆史の机の上に置いてある
古書が一瞬光った
慌てて古書を開く
古書の真ん中ほどの頁が
開かれる
開かれた古書の頁が薄っすらと
点滅している
暫く点滅を繰り返していた
古書の点滅がピタリと止んだ
すると今度は
木の枝が点滅を始めた
楓が木の枝に触れると
光が強くなっていく
隆史の家にかけてある鏡が
強い光を一瞬放った
驚いた楓が鏡の前に立ち
木の枝を鏡に向かって翳す
暫く翳していると
鏡の中から途切れ途切れの声が
聞こえてきた
叶恵の声だった
久しぶりに聞く叶恵の声に
楓は嬉しく感じていたが
何かあったのかもしれないと
叶恵に聞いてみた
叶恵は、薫と翔平にあった事を
楓に伝えた
異世界の扉の話や
楓達4人と、扉を守っていること
薫と翔平に話したと楓に
報告した
楓と隆史は、薫と翔平に
総てがわかった事を
黙って聞いていた
それにしても
古書や扉の異変は何を意味しているのか?
均衡が
崩れているのではないか?と
考えていた
木の枝の光は、楓が手を離すと
ピタリと止まり
古書の点滅も止んだ
しかし重なる異変に楓は
不安を禁じ得ない
隆史は
楓の不安を打ち消すように
明日もう一度
公園に行ってみようと
誘った
点滅した古書の頁を
楓は読んでいた
特に変わった事は書かれていない
それから
数時間が過ぎた頃
また鏡が光を放った
急いで近寄る
また
途切れ途切れの声が
聞こえてきた
今度はマーシャルだった
どうやら異世界の鏡で
話は出来る状態だとわかった
マーシャルもまた
2度訪ねて来た薫と翔平の話を
楓達に話してくれた
マーシャル
「…ということで、2人には
扉を守る役目を
断られてしまったよ」
楓
「そう…マーシャルありがとう
それでいいと思うわ2人には
普通の人生を歩んでほしいもの」
隆史
「ああ、そうだね
僕達のような思いを
彼等には味わってほしくないね」
マーシャル
「残念だが仕方ないね
君達の助けに
彼等がなってくれればと
思ったのだが…」
楓
「ありがとうマーシャル」
楓の本心だった、2人には
平凡に生きてほしい
扉を守る事は
一生を掛ける仕事だ
扉は、閉ざされても
こうやって話が出来る事は
楓にとっては嬉しい出来事だった
古書や鏡や木の枝が光った
時には、何事か悪い前兆かと
感じていたが違っていて
ほっと胸を撫でおろした
薫と翔平は、現在
異世界旅行中
もしかしたら、自分達の事に
辿り着くかもしれないと
何となく、思っていた
2人から連絡を受け
薫と翔平に、知られた事を
楓も隆史も仕方なく感じていた
外の雪も本降りになってきたようで
風音が強くなっていた
ようやく暖かくなってきた
部屋の窓の、カーテンを開け
暗い外を眺めると
横殴りの雪が降っていた