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最強助っ人がこんな威力なんて死んでも御免です

ーーガキィイイイン!


 俺はギガントのこん棒を大剣を横にして受け止めた。ヤバ! 衝撃で地面がめり込んでいる。


 本当は余裕綽々で受け止める手筈だったのに、なんだこれ? コイツ強くね!?


 あれ? ぐぬぬ……

 ダメだ! マジ系統の強さだ!


「ちょっと姉さんやばいわ! コイツ強い。手伝ってッ!」

「?????」


「不思議そうな顔するんじゃねえ馬鹿! 早く助けて!」

「玉城君、馬鹿って言う方が馬鹿なのよ。知ってた?」


「うるせぇええ! マジ! マジで姉さんコイツ強いんだって!」

「玉城君、私が助けたらややピンチじゃなくなるわ」


「ややじゃねぇ! もう既にややじゃなーいッ! 姉さんッ早く!」

「まったく……しょうがない玉城君ね」


 そういうと姉さんは俺の背後、やや右側に立って呼吸を整えた。


「じゃあ玉城君、いくわよ」

「お願いしますッ!」


 しかし、俺はこの後、姉さんが本当の馬鹿だと知ることになる。


 姉さんは『いつもやってます』の感じを出しつつ、バッティングのポーズを取った。

 あ、やっぱり魔法は使わないんだ。


「喰らいなさい。ティモンズ!」


 そう言って姉さんはフルスイングした。


 俺の『腰』に、フルスイングした。


ーーバゴォ! グギャア!


 痛ってええええええ! 何しやがるクソ女! 違う違う、ギガント!


 しかし、ノリノリの姉さんは止まらない!


「アンロー!」 バゴォ! 「うぎゃあ」

「ディンゴ!」 バゴォ! 「ぎゃああ」

「ふふっ!ブレッド!」 バゴォ! 「もきゅう」


 俺は後ろを振り返り、姉さんを諭す!


「ちょっと待って姉さん。わかったから! 姉さんがマニアックな中日ファンなのは、もうわかったから! マジで俺、死んじゃうってッ!」

「?????」


「だからさっきから不思議そうな顔をするな! 義務教育受けたかテメーッ!?」

「ふぅ、玉城君。だいぶピンチになったわね」


 いい汗かいた! みたいな顔をした姉さんはとても上機嫌だった。うん、あんた馬鹿だ!


「グハハハハ! 仲間割れか!? このまま押しつぶしてやるぜ!」


 ギガントは更に力を込めて俺を押し込んだ。

 ああ、これは走馬灯が見えますね。


 そんな俺を尻目に姉さんはスキップをしながら、ギガントの右足へと近付いた。


「グハハハハ! 自ら潰されに来るとはいい度胸だぁ!」


 そういうと、ギガントは右足を上げ、姉さんに狙いを定めた。

 やばいッ! 姉さん逃げてッ!


「玉城君、よく見てなさい。100年後しの奥義を見せるわ」

「姉さん! そう言うの良いから早く逃げて! もしくは助けて!」


 ギガントの足の影が姉さんを包み込んだ。


「グハハハハ! 潰れて死ねぇい!」


 しかし、姉さんは臆することなくその影の下でバッティングの構えをする。


 そして、姉さんはまるでキャッチャーフライをわざと打つかのようなフルスイングでギガントの踏みつけに応じた。


「奥義! ゴメス!」


ーーボッグォオオオオン!!


 ーー爆風が辺り一面に吹き荒れる


 ぶわぁああ! ペッペ、口に砂がッ!

 気持ち悪う!


 そして、顔を上げた俺が見たのは……

 左半身しか残っていないギガントだった。


「グガ、グガガ! こ……こんな女に」


ーーボフン


 ギガントはアイテムをドロップし、光の粒となって消え去ってしまった。


 あ、というか?アイテムドロップ方式なんだ。

 すごい! ゲームみたいッ!


「姉さーんッ! マジ強いッスね。一撃でしたね!」

「……ないわ」


 え? なんか言った? よく聞き取れなかったな。

 つか、姉さんなんか怒ってる? ワナワナという擬音がピッタリなくらい肩を震わせてるけど?


「ええっと、姉さん。なんか怒ってます?」

「納得行かないわ」


「どうして? ギガントやっつけたんですよ?」

「いいこと? 玉城君。私はね、『ゴメス』って言ったのよ」


「はぁ、確かに言いましたね」

「分かってないわね玉城君、私が『ゴメス』を使ったと言う事は、相手は全身が粉微塵になってもらわないと困るのよ。それを何? あんなスキー場で真っ先にドライアイになりそうな不細工な化物1匹灰燼にすらならないなんてどうかしてるわ。いいえ、私が本当に言いたいのは、あれは『ゴメス』なんかじゃなくて、差し詰め、そうね『クルーズ』とでもーー」

「うん、分かった。長えよ!」


 とりあえず良かった。馬鹿で。


「と言う訳で、玉城君、今の戦闘は無しよ」

「あーまぁ姉さんがそれで良いなら良いですよ」


 この不毛な懺悔をこれ以上聞きたくなかった俺は、何か別の話題を探す。

 そう言えば何かドロップしてたな。


「あ、姉さん! ギガントの奴、なんか水晶みたいなの落としましたよ! ホラ、見てーー」


 そう言って俺は手のひらに乗せた水晶を姉さんに見せた。と言うか、見せる直前に例のポーズをとっていた。


「セサル!」


ーーパコーーーーーン!


 とても良く飛んでいった。グッバイ水晶! おめえのことは忘れねえぜ!


「玉城君、言ったわよね。さっきは戦闘なんて無かったって」

「そうっすね。すみません勘違いしてました」


「わかればいいのよ」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 俺と姉さんは、この後どうするかを話し合う。

 そして、運良くお互いの意見が一致した。


 そう、もう一旦帰りたいのである。


「って言ってもどうやったら帰れるんすかね?」

「多分、あの箱が鍵になってるはずね」


「そう言えばあの箱見ないですね」

「絶対にあるわ。私には分かるの」


「その心は?」

「私が持ってるもの」


 言えよ! って言うか言えよ! 何だったんだこのやり取り。


 姉さんはアイテムボックスからあのオルゴールみたいな箱を取り出し、地面に置いた。


「よし、箱! 俺と姉さんを一旦返してくれ」


 プイッ!

 動いた! すげーさすが異世界!

 ただ、なんか嫌われたっぽいな。


「フフフ、玉城君は嫌われたわね」

「すみません姉さん。力不足でした」


「しょうがないわね。私が交渉するわ」


 姉さんは正座をし、箱と向き合った。


「箱さん。一旦返して頂戴」


 プイッ!


「箱さん、返してくれないのなら、私にも考えがあるわよ」


 プイッ!


「……わかったわ。じゃあ今から放送禁止用語を大声で叫ぶわね」


 ん? 何か姉さん変な事言わなかった?


 あ、大きく息を吸い込んだ。ヤバイ言うぞこれ! 長い付き合いだから分かるんだ!

 この馬鹿言うぞ!

 おい箱! さっさと空気読め!


「オマ……」


ーーバコン! ヒュルルルルルルル


ーーぐぎゃ

ーーきゃっ


 帰ってきた。てか姉さん半端ないな。

 時間は……あ、全然進んで無いじゃん! ラッキー!


「おい、お前等!」


 ん? 誰か呼んだ? 俺と姉さんは顔を合わせるが、お互いに首を振って自分ではないことをアピールする。


「おい、こっちだ!」


 え? 箱!? お前生きとったんかワレ!

 と言うかスゴッ! 箱喋ってるよッ!


「お前等を選んだのは大失敗だったわ!」

「え? 遅くね?」

「箱なのに馬鹿なのね」


「何故帰るか知らんが、責任はとってもらうからな!」


 なんか箱のくせに生意気だな。て言うか何だよ責任って。メンドクセー。


 ただ、何故帰るかっていう質問には俺と姉さんは答えてあげるつもりだ。


「おい箱、教えてやるよ。今日はな」


「「ナイトスクープがあるんだよ」」


 そうして、俺と姉さんは家路に着いた。

 また明日暇なら行ってあげてもいいかな。

 

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