ずっと、君の傍に。
僕を呼ぶ弾む声。笑顔、横顔、泣き顔。全てが、総てが大好きで。真っ直ぐ前を見据える君が、本当に愛おしかった。手を繋いで同じ景色を見て、同じ時間を過ごして、時々忙しなくなるけれど僕にとってはそれさえも特別だった。失いたくなかった。どうしても。……でも君は、いなくなった。僕は君がいなくなってからすっかり心の拠り所を無くしてしまった。都合のいい言い訳に聞こえてしまうかもしれない。だけどそれでも僕は忘れたくない。ずっと君の傍に。出来るなら一番近くで一番に君のことを愛したい。
少しだけ遠回りをしてみよう。君との記憶が生きていたあの日々を。
「~♬~♬~……」12月25日。街中が彩られて行き交う人々の浮き足立つ日。僕佐原伊都(さはら いと)は路上ライブをしていた。今日に似合うクリスマスソングを、隣でギターを弾いている親友の井植誠(いうえ まこと)を横目に歌っていた。僕達は高校の頃からの付き合いで、路上ライブを始めたきっかけを話せば、多少はこの流れに色がつくかもしれないけれどそん
なものはなく単なる興味本位で始めたものだった。
「伊都、今日はもう止めた方がいいかもよ。」数曲歌った僕に誠がそう声をかけてきた。この寒空の下、ギターを弾いていた誠の手はすっかり悴んでしまっていた。「そうだな……クリスマスって怖いな……」僕はただ歌っているだけだけど、喉が寒い外の空気にやられてしまいそうだった。僕は誠の意見に頷き、置いていたCDや手作りの看板を片付けようとした。すると、しゃがんでCDの片付けに取り掛かろうとした僕の頭上に、フッと影がおりてきた。僕が顔を上げると、そこには僕達と歳があまり変わらないような女の子がいた。僕と目が合ったことに気づいたその子はしゃがみこみ、僕と同じ目線になって「もう、歌わないんですか?」そう言ってきた。