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20 ベアヘッド①



 受付嬢に連れられ、受付カウンターの脇から続く職員用通路をしばらく歩くと小さな一室へ辿り着いた。

 二対のソファーが机を挟んで置かれており、机の上には魔物の資料やベアヘッド周辺の地図が置かれている。恐らく一組の冒険者パーティーと相談員が対面で話し合ったりするための部屋なんだと思う。


「それで、本日はどのような御相談ですか?パーティーを追放されたりとかですか?」

『いや、違う。少し話が長くなるがいいか?』

「はい、聞かせて頂きます」

『まず発端は、俺が月夜の迷宮で隠し通路を発見した所から始まるんだが……』


 そこから俺は事の顛末を全て話した。

 隠し通路から未知の迷宮に繋がる階段を発見した事、そこで識別で情報を読み取れない未知の魔物に遭遇した事、眠っていた龍との激戦に見渡す限りの宝が眠る宝物庫、そして厄介な魔物を倒し辿り着いた最深部で待ち受けていた槍騎士との戦い。全て包み隠さずだ、冒険者は瞳石を通してどうせどのような冒険をして来たかを見られてしまう、隠す必要は皆無だった。


 最初は余裕たっぷりに聞いていた受付嬢の顔色が話が進むに連れてどんどん変貌していく。

 手元のメモ用紙に懸命に聞いた内容を書き連ねながら疑問が生まれればすぐさま尋ね、情報を整理しているようだ。宝物をどのように持ち帰ったのか聞かれた際に、魔法の袋を所有している事については答えておいた。ただし、剣の特殊性能については一切答えなかった。見えない壁の看破については使い魔の能力という風に説明して濁しておく事にした。恐らくだがこの剣の特殊性能は普通ではない、話せば余計な火種を生む気がしたからだ。


「……大まかな内容は把握させて頂きました。あとは旅人の銀杯による瞳石の読み取りをさせて頂くのと、今回の内容に関しては私の管轄外となってしまいますので担当の者に引き継がせて頂きます。そのままお掛けになって少々お待ち下さい」


 受付嬢は俺に断りを入れるとメモを片手に速やかに退室し駆けて行った。

 手持ち無沙汰になったので机の上に広げられていたベアヘッド周辺の地図をしばらく適当に眺めていると、遠くから二人の人間の足音が響いて来た。片方は先程出て行った受付嬢で、もう片方は歩幅的に長身の男か。足音は部屋の前で止まり、一拍入れた後ドアを叩くノック音が室内に響いた。


「やあ、私はここのベアヘッド支部で副ギルドマスターをしているミザールだ、よろしく頼む」

『よろしくお願いします』

「それでは早速で悪いがエンブレムをお預かりしても?」


 俺は首肯し鎧の上から羽織っている外套の胸部からエンブレムを外し、ミザールに手渡す。

 ミザールはエンブレムをそっと銀杯の底に置くと二言三言呟き、そのままうんうんと唸りだす。

 普段から冒険者ギルドではよく見かける光景ではあったが、今回は読み取る長さが長かった為か、かなりの時間が掛かった。途中で受付嬢が退室しお茶を淹れてくれた、俺は軽く喉と唇を潤す程度に口を付けつつミザールが口を開くのを待ち続けた。


「なるほど、なるほどね……。どうやら本当に未発見の迷宮に関する発見報告のようだね」

『疑われていたんですか?』

「本人にその気が無くても、認知度の低い迷宮を探索して未発見の迷宮を発見したと報告する冒険者はそれなりにいるからね。まあ、今回は事前に彼女が纏めた聞き取り内容から確度の高い物だと分かってはいたんだが、中には瞳石を幻術で惑わせて仮想の迷宮を発見したとして報告する魔法使いも居るからね」

『そんな事をして何になるんですか?』

「罠だよ、罠。頭のおかしい邪教徒が生贄欲しさにそういった罠を張る手口が一時期流行していたんだ、昨今は全く聞かなくなったが。迷宮発見の報告を受けた冒険者ギルドから派遣された冒険者が何組も犠牲になってなあ、それも有望株ばかりで冒険者ギルドにとっては闇の時代だった」

『なるほど、古い事例とはいえ大規模な被害が出たのなら警戒して当然ですね』


 幻術師に邪教徒か。

 随分と物騒な連中が暗躍していたんだな。


 生贄を欲しがる類の邪教徒となると悪魔崇拝とかなのかな?

 悪魔は時に人と契りを結び人々に力を授ける事がある。

 信仰の様に長期的に縛られる事もなく、悪魔の求める物を差し出せるのなら直ぐに結果を得られる。


 一見割の良いギブアンドテイクに見えるが、実際は悪魔に協力者又は契約者と認められるだけの力が無ければ対等の対話が成立しない。力無い者が召喚した場合は最悪悪魔を召喚した矢先に殺されるか、もしくは運が良ければ都合の良い奴隷として使われつつも何とか生き延びられるかもしれないが。


「あー……それで、本来ならここで迷宮で得た情報の報告報酬を含めた精算に関する話し合い等をすべきなんだが」

『はい』

「残念ながら、ここの支部で君の見つけた迷宮に関する発表や精算は出来ないんだ」

『え?』


 迷宮の発表や精算が出来ない?

 どういう意味だ?


「君達冒険者からすると本当に下らない話に聞こえるかもしれないが、冒険者ギルドの支部間にも力関係があってだね」

『はい』

「ウチみたいな末端の支部が未発見迷宮の発見報告なんて大手柄を立ててしまった日には色々軋轢が生まれてしまうのだよ」

『……はい』

「しかも今回は大都市二つの半ばにある迷宮だろ?なんで手柄を譲らなかったんだっていう話になってしまうのだよ」

『副ギルドマスターさんも大変ですね』


 どうやら冒険者ギルドも中々大変なようだ。

 ミザールは本当に申し訳無さそうにしていて、とても責める気にはなれない。

 ここは俺が彼の心情を慮らなければならない場面だろう。


「はは、ウチなんかはまだ上手くやれてる方だけどね。……実はもうひとつ理由があるんだ」

『もうひとつ?』

「ああ、単純な話だ、君が見つけた宝物を全てを買取る財力もその買い取った宝物を全て捌ききるだけの販路やツテがないのだ、俺も随分冒険者として活躍してきたがあの宝の山はすごいな!君はもう一生働く必要がなくなるんじゃないか?」

『あはは、どうでしょう』

「ともあれ、フロンテラからここまで旅して来たという事はイーストエデンの方へ向かうのだろう?」

『はい、イーストエデンが目的地ですね』

「……そうか、それならイーストエデン支部に報告するのが良いだろう。イーストエデンで改めて1から確認をするのも手間だろう?私が引継ぎ用の報告書を用意するので明日の朝受け取りに来る事は可能かな?」

『大丈夫です、それでは明日改めて伺わせて頂きます』

「ああ、待ってるよ」


 ……引継ぎ用の報告書か。

 販路の確保や冒険者ギルドの運営に差し障るほどの成果物の買取をイーストエデン支部へ押し付けつつ、自分達が事前に話を聞いていたが手柄を譲ったんだぞという旨を、報告書として明文化する事によってよりはっきりと伝える狙いがあるのかな。正直冒険者ギルドの支部同士のやり取りなので一冒険者に過ぎない俺には全く関係ないし、思いを巡らせる意味なんてまるで存在しないんだが。


「バル~?随分遅いお帰りだったわね?」

「おなかすいたよー、はやくたべよー……」

『あっ』


 職員用通路から冒険者ギルドのホールへ戻ると、待ちぼうけさせていた二人にじろりと睨まれる。

 正直俺もこんなに時間が掛かると知らなかったので、二人には大分悪い事をしてしまったな。


『いや、俺もこんなに時間が掛かるとは思わなくて……。お詫びに奢らせて貰うよ』

「とうぜん!!」

「よーし、今日は高いメニュー行くわよー」

『……お手柔らかにな』


 アリアとティアの二人は既に何を注文するのか予め決めていたようで、休憩エリアのウエイトレスを捕まえすぐに注文し始めた。先程までは緊張するやり取りをしていた為大丈夫だったが、安心した途端に凄まじい空腹が襲ってきた為若干慌てつつもメニューに目を走らせる。


 マダラ貝とデビルシザーのパスタにキラーダーツのマリネ……?

 ベアヘッドは内陸部にある都市のはずなのに結構海産物っぽいラインナップだな。

 この世界には希少とはいえ魔法の袋が存在するようだし商人が海の方から運んでくるのかな?

 その割には森で手に入りそうな食材を使った料理と大差無い値段で口に出来るようだが。

 とりあえず主食は最初に目に付いたパスタにするか。


 そして、俺の眼はある一点に釘付けになった。

 ケーキだ、ケーキがある!しかも結構手軽な値段だ!

 イチゴの一口ケーキに胡桃とホイップの三層ケーキ、ここまでは分かる。

 マジカルキャロットのケーキと熊釣りケーキってどんな味なんだ……?

 前者は野菜を使ったケーキ?そんな物美味いのか?


 思わず長考してしまったが今回はマジカルキャロットのケーキを選んでみた。

 百聞は一見に如かず、食べて見なければ食べ物の良し悪しは分からない。

 ここは意を決して挑むべき場面だろう。俺はウエイトレスに注文を頼み、今か今かと料理が運ばれる瞬間を待つ事にした。



 結論から言うとマジカルキャロットのケーキは大当たりだった。

 オレンジ色の鮮やかな色合いをしたクリームとスポンジは、嫌でもそのケーキが何によって作られたのかを連想させる。最上層に飾られたオレンジ色のふたつのチョコレートは人参要素は無く、ただの飾りだろう、兎の耳を模した形をしていてケーキを可愛らしく飾り立てている。


 柔らかなクリームとスポンジにフォークを刺し込み口の中に含んでみると、このケーキがどの様な意図を持って生み出されたかが一口で分かる。熱した人参を食べた際に仄かに口の中に広がる優しい甘みを、厳選し抽出したような口当たりの良い甘さが口の中に広がる。このケーキは野菜が本来持つ甘さを楽しむケーキなのだ、非常に興味深い。


 クリームの部分も当然美味いが俺はスポンジの部分が特に気に入った、クリームの部分とスポンジの部分では甘さに強弱があり、クリームの部分よりスポンジの部分の方が控えめな甘さなのだがこれが無限に食える美味さだ。思わず口の中に次々と放り込みたくなる衝動に駆られるが、そんな無粋な真似をしてはケーキを作った料理人に対する冒涜だ、上品に切り分け一欠けらも残さず完食した。


(まずいな)

(あと三個ぐらい食べたくなってきたぞ)


 ケーキはあっと言う間に消え失せてしまった。

 ウエイトレスを呼びもう一度オーダーを出そうかしばらく迷ったが、止めておく事にした。


 美味しいからと言って大量に注文し大量に食べる。

 それは果たしてケーキを食す際の振る舞いとして正しいのか?

 答えは否だ、少量を上品に楽しむからこそ良い。

 ケーキを金のある限り暴食するのは──俺の夢見たケーキ道からは反してしまう。

 冒険者には冒険者の流儀があり、ケーキ愛好家にはケーキ愛好家の流儀がある。

 実際に口にしたケーキはまだ二種類だが、俺は何かの答えに辿り着きつつあった。


「あー、食べた食べた、ご馳走さまー!」

「ご馳走様、やっぱりここの料理美味しいわね」

『そうだな、また食べに来たいな』

「あはは、ケーキ真剣に食べてたもんねー!好きなの?」

『ああ』

「かなり意外ね、悪いとは言わないけど」

『そうか?ティア達は好きじゃないのか?』

「大好きだよ!熊釣りは特に!」

「アレはおいしいものね、名前は微妙だけど」

『熊釣りって何のケーキだったんだ?』

「蜂蜜よ、大量の蜂蜜で出来たケーキで熊が釣られて寄って来そうだから熊釣り」

『なるほど……』


 どうやら俺はこの支部の名物ケーキを食べ損ねたようだ。

 まあいい、今の俺は機嫌が良いからな。

 どっちも当たりで片方の当たりを食べた、俺はそう考える事にした。


「んんー!!今日はもう何もする気が起きないや。宿取ろうよー!」

「それもそうね、いつものとこ空いてるかしら」

『いつものとこ?』

「ふっふっふー!見たらきっと気に入るよー!さあ行こー!」

「はいはい」

『……?ああ』


 んん?ちょっと待て。

 もしかしてこれって同じ宿に泊まる流れなのか?

 ティアに手を引かれ表に出ると日は既に落ちかけている、宿を取るには微妙な時間帯だ。

 通常、この時間帯にはもう既にまともな宿の部屋は埋まり町中を駆けずり回ってしょぼい部屋を何とか探し当てられればマシと言った所か。折角当てがあるから一緒に泊まろうと誘われているんだ、ここはお言葉に甘えてご自慢の宿とやらに泊まらせてもらうか。



 アリアとティアに連れられてやって来たのはベアヘッドの町の東外壁の直ぐ近くに軒を連ねる一軒の宿屋だった。外観は木造の趣のある宿屋ではあるが、特別な何かがある宿屋には見えなかった。


(うーん)

(いつも俺が立ち寄るような宿屋よりは良さそうな所だが)

(この二人が絶賛するような宿屋なのか?ここは)


 俺は宿と言う物に大して見識は無い。

 もしかしたら俺には分からない良さがこの宿にはあるのかもしれない。

 料理が美味しいとかそういうパターンだろうか?

 仄かな期待を抱きつつ俺は二人と共に宿に入っていった。


「いらっしゃいませー、おっ!ティアちゃんとアリアちゃん!いつもご利用ありがとうございます」

「来たよー!いつもの部屋空いてる?」

「はい、今日も空いておりますよー?三名でのご宿泊でよろしいですかー?」

「ええ、お願い」

「それでは台帳にサインをお願いします」

「……、はい、書けた!」

「それではこちらが部屋の鍵になります、お食事は部屋へお運びしますか?」

「お願いします!あと、今日は夜に追加で頼むかもー」

「なるほど……、かしこまりました、それでは夕食をお運びする際に改めて」

「はーい!それじゃあお部屋へいこうかー!」


 愛想良く俺達を出迎えた宿屋の店員とティア達は仲が良いらしく手馴れた様子でチェックインを済ませていった、冒険者ギルドの受付と接する際もそうだがティアとアリアは顔が広いと言うか大分この町に馴染んでいるんだな。ティアが声をかけるとみんなにっこりと愛想笑いではなく本当の笑顔で答えて楽しそうに受け答えをしていく。俺はその様子が少し羨ましくなった、俺もいつかひとつの町に定住し町人と明るく交流とか……そういう未来もありなのかもしれないな。心のハンドブックにこっそり記載しておこう。


 ティア達に連れられて廊下を進み、扉を開けるとかなり狭い倉庫にも満たないほどの一室についた。

 なんだここは?と俺が首をかしげていると二人は慣れた様子でその一室に入っていく。

 俺も二人に倣い部屋に入ると俺が入ってきた扉が閉まった。

 勝手に閉まった扉に驚いている間に浮遊感を感じ──部屋が下に下に落ちていく感覚を感じた。

 俺は困惑し周囲を見回すが二人は平然としている、何故だ?これって普通なのか?

 二人に今この部屋がどうなっているのか聞こうか迷っている間に部屋はその動きを緩め、やがて静止した。どうやら何処までも落ちていく訳ではないらしい。


「ふっふっふ、それでは行きますよ?」

「目を閉じててね、私が手を引いて先導するから」


 悪い笑みを浮かべたティアとアリア曰くどうやら目を閉じる必要があるようだ。

 何だか騙されている気がしなくも無いが、あえて彼女達の思惑に乗るのも一興だろう。

 俺は瞼を閉じ、アリアに手を引かれて部屋の外に出た。


 部屋を出て、アリアの柔らかく熱い手に導かれながらも俺の知覚は視覚以外で周囲の様子を読み取ろうと働いていく。何か、不思議な力を秘めた何かが飛んでいる。強化された聴覚が羽音を捉えた、恐らくその何かは空を飛んでいる。水が高い所から下に落ちる音が聞こえる、青い草の匂い、清涼な水の匂いもするな。足裏は柔らかな土の感触と石の硬い感覚を捉えている、土の床があり歩幅程度の間隔で石の足場があり、俺の足は目を閉じる事によってその石の足場を踏み損ねて度々土を踏んでいる感じか?より深く目を瞑り感覚を研ぎ澄ませ、魔力の気配をより細かく選り分け感知できれば……。


 石と土は含有している魔力の量と種類が微妙に違う。

 目を閉じた状態でも石の足場を感知し捉える事が可能だ。右足、左足、アリアの導く速度に合わせつつもタイミングよく踏みしめ──。


「ん?もしかして目開けてない?」

『……え?いや、開けてないけど』

「それにしては……気のせいかな?」

『まあ、兜被ってて分かり辛いからな。とにかくズルはしてないよ』

『そっか、なら良し』


 ──?

 先程何かを掴みかけたが、俺の中のその感覚は霧散してしまった。

 胸にもやもやしたものを覚えつつも、俺はアリア達に導かれていく。



「ふーっ!到着ぅー!」

「何かやっと帰ってきたって感じね」

『もう目を開けてもいいか?』

「まだー!もうちょっと!」

「こっちよ、来て?」


 どうやら室内に入ったようだ。

 でもどうやら真なる目的地はまだ先らしい。

 一歩二歩と進んでいくと外の気配を再び間近に感じた。

 そこで何となくこの二人のしたかった事を察したが、俺は口を噤み目を開ける許しを待つ。


「はい!それじゃあ!」

「もう目を開けて良いわよ」

『……っ、おおっ、すごいなこれは』


 目の前に広がるのは大きな湖と薄紫色の不思議な光。

 よくよく見てみれば上のほうに天井があり、そこに不思議な光を放つ水晶のような物が生えている。

 そして空を飛び交うのは羽を生やした可愛らしい小人、物語でよく語られる妖精という奴だろうか?

 金色の髪を靡かせながら輪になって踊ったり手を上げながら言葉を交わしている、妖精流の挨拶か何かか?幻想的な風景、非現実的な物語の中の世界を切り取った景色がそこにあった。


「すごいでしょ!超絶景!ベアヘッドの隠し名物妖精の泉だよ!」

「本当に妖精が住んでそうな幻想的な風景よね、私大好きなの」

『えっ』


 妖精が住んでそう(・・・・・)

 もしかして二人には見えていないのか?


『参考までに聞くけど、妖精ってどんな見た目をしてるか知ってるか?』

「うーん、何か緑色の服を着ているイメージ!」

「不思議な力を秘めた葉っぱで作った服を着ていると言われているわ、エルフに近い顔をしていたとも言われているわね」

『……そうか』


 これは見えていないな。

 俺は確信した。

 確かに妖精達の中には緑色の服を着用している者もいるが、結構色々な色の服を好き勝手着ていて別に統一されているという感じではない。

 顔も、確かにやや耳が尖り気味な感じもするがエルフに近いというほどのレベルではない気がする。人間とエルフの中間ぐらいか。


(これはあれか、また剣の特殊性能で見えているパターンか)

(思いのほか応用力のある特殊性能だな)


 俺がそんな事を考えていると、一匹の妖精が俺達に興味を持ったのかふわりと近付いてくる。

 大きさは掌サイズ、青い目に腰までありそうな金髪の髪、黒いドレスのような物を着ていて腰の辺りに何故か不思議な模様の透かしが入っている、妖精流ファッションか何かか?おへそまわりの白い肌がところどころ見えている。


 金髪妖精は興味深げに俺の目の前まで来ると首をかしげる。

 もしかして、俺が視線で追っている事を感じて興味を持ってくれたのかな?

 白く小さい手を俺に向けて振ってきた。


 俺が小さく手を振り返すと目をまんまるに見開いた後にきゃっきゃと喜びながら遠くへ飛び去っていった、仲間の妖精に報告へ行くのだろうか?何だか微笑ましい物を見たな。


「さてさて、それじゃあ夕食の時間まで各自ひとやすみしましょうか」

「うーーん、あっ!そういえば部屋割りはどうする?」

『部屋割り?複数の部屋があるのか?』

「そりゃそうだよー!なに?バルくん私達と一緒に寝たいの?」

「私はいいけどね」

『違う、ああ、あっちにあるのがそうなのか?』

「そうだねー、私が一番左側でアリアちゃんは大抵その隣だね」


 俺達が外を見ていたバルコニーから見て左側に4つほどの扉が見えた。

 どうやらあの4つがそれぞれ個室となっているようだ。


『じゃあ左から3番目の部屋にしておこうか』

「うーん、その部屋はアリアちゃんのいびきで寝れないんじゃないかなー」

「そんな酷いいびきかかないわよ!!……多分、え?うそ?かいてないわよね?!」

「……フッ」

「ちょっとー!意味深に笑うのやめてよ!ねえ!うそでしょ?!うそと言ってー?!!」


 どたどたと音を立てながら室内を駆け回る二人を無視して俺は自分の部屋に入った。

 最近無駄にこの二人の扱いにこなれて来たな、もうすぐお別れなんだが。

 二人との別れを若干寂しく思いながらも俺は鎧を脱いでいった。

 そして楽な服装に着替えるとハンドブックを開き、自分がこなすべき課題を改めて確認した。

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