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13 未発見迷宮①



 フロンテラからイーストエデンへ向かう道中。

 俺達はふたつの迷宮に立ち寄る事にしていた。


 ひとつは「いばらの迷宮」イーストエデンの近くにある初心者向けの浅い迷宮。

 そしてもうひとつが今潜っている「月夜の迷宮」だ、塔型の迷宮で五階層もある。


 ただし、その中はほのかに明るい月光石という石で作られていて、階層数の割りに魔物も弱い。

 なので難易度的には水とかげの迷宮より下らしい。


 今回は総階層数と新たな特殊性能目的でここに来た。

 水とかげの迷宮より2.5倍も一回で稼げる、潜らない理由が無い。


 ランタンを持たずに探索出来るのは最高だった。

 常に掲げながら迷宮を歩き回るのって案外疲れるからね。

 

 今回は楽な探索、そう思っていた。

 

 一階層を探索している道中、物凄く中途半端なところに横道が現れた。

 

 この迷宮は順路を巡っていると突き当たりにT字、もしくは十字路があるパターンが続いていたのでかなり異様な感じがした。


 気になってそちらに進んでみる。

 特に変わった所は無いか、もう少し進んでみよう。


[あれ?バル?どこ行ったの??]


 突然、ドレッドノートが騒ぎ出した。

 何を驚いているんだ?


『ここにいるよ、急に騒いでどうしたんだよ』

[え?え?どこ?]


 俺は今ドレッドノートの真ん前にいる。

 だけどドレッドノートには俺が見えていないようだ。


『目の前にいるんだけど』

[む……もしかして、そういう事?]


 次の瞬間、ドレッドノートがこちらに向かって勢いよく飛び込んできた。

 俺は思わず受け止めようとしたんだが、こいつ……<銀壁>使ってやがった。


 恐ろしい硬度になって突っ込んできたドレッドノートが俺の胸に突き刺さる。

 思わず朝食を吐き出しかけた、酸っぱい奴が喉を遡ってきた。


『お前、何やってんだよ』

[見えない通路があったなら、そう言ってくれれば良かったのに!!]

『は?見えない通路?』


 俺が前を見ると普通にT字路が見える。

 俺達が入ってきた通路だ。


 ……待てよ?そういう事か?


『お前には、もしかしてそこに壁が見えるのか?』

[そりゃそうでしょ……バルには見えないの?]



 全然見えないよ。



 多分、前に水とかげの迷宮で手に入った特殊性能のせいだな。


 不可視の存在を見る事が出来るようになる力。

 確かに、生き物限定とは書いてなかったはずだ。


 迷宮のギミックにも有効だったんだな。

 だとすれば……!


『ふっふっふ、見えない通路の先ですって?お宝の匂いがしませんか?』

[良いバッタがいるといいわね]


 バッタはいなくていいのです。


 俺達は見えない通路の先を見に行く事にした。

 実は迷宮には石箱以外にもマジックアイテムを手に入れる方法がある。

 

 迷宮の奥地に置かれた宝物庫や宝箱からの入手だ。


 ただ、当たり前の事だけど、宝箱などは初回に潜った奴等が持っていってしまう。

 だからこそ、熟練の冒険者は誰も入った事の無い迷宮探しに躍起になるのだ。


 俺みたいな初心者が宝箱からマジックアイテムを手に入れようとするなら、恐ろしい程の幸運を発揮して隠し部屋を見つけるしかない。正直かなり無謀だけどね。今までこの迷宮に何人潜って来たんだって話だし。


『結構長いな』

[ひま]


 通路はずっと続いている。

 迷宮の中は、種類にも拠るけど空間が捻じ曲がっていて恐ろしく広大だったり道と道が不合理に繋がっていたり……する場合もあるらしい。もしかしたらここもそういうタイプか?最悪ドレッドノート先生の魔法で帰るしかないかもしれない。


『おっ?いかにもな扉だ』

[ゴールデンバッタ!]


 どんだけバッタ好きなんだよ。


 俺達の目の前に高さ2メートルほど、両開きの赤い扉が現れた。

 材質は……よく分からない金属?内開きなのか輪のような取っ手がついている。


 俺はドレッドノートを黙らせた後に聞き耳を立てた。

 扉の向こうに敵がいないかどうか、確認をする。

 ……音は無い。霊体(アストラル)系以外は多分大丈夫、いないはず。


 俺は思い切ってその扉を開けた!

 槍が飛んできた!しかし強化・猫ランク7によって高められた動体視力と身体裁きでその槍をどうにかかわす。


『ふう、危なかった』

[危なかったーじゃないわよ!罠の警戒!きちんとしなさいよ!]


 返す言葉も無い。

 正直油断していた、いつも警戒心MAXなつもりなんだが。

 ……致命的な場面でやらかすよなあ。


 視界が広がったり物音に敏感になった反動で慢心していた所はある。

 油断大敵、俺は心のハンドブックにそう刻み込んだ。


 

 気を取り直して部屋の中を覗いてみると──巨大な石畳の大部屋。

 その中央にぽっかりと開く大きな穴と地下へ続く階段。

 室内にはかつて兵でも詰めていたのか槍や盾をたてかけるスペースがあった。

 

 あっ、槍と盾は貰っておきますね。


 

『え?下への階段?』

[別に、階段なんて普通でしょ?]

『いやいや、ここは塔型の迷宮だから!あるのは上へ登るタイプの階段なはずなんだ』


 そうじゃないとおかしい。

 おかしくない?


[そんな難しい話でも無いわよ、つまりは]

『今だ誰も辿り着いた事の無い……未発見の階層だって事か?』

[もしくは……]



 ──今潜っている迷宮とは全く別の、未発見迷宮……!

おまけ


水とかげの迷宮の石箱産マジックアイテム、ティーカップ以外の五個を紹介

・水蛇の盾

【説明】

 水蛇の加護が込められた魔法の盾。

 水・土・火などの魔法に対する耐性を持つ。

 面白い効果は無いが無難な性能、盾としての性能も凡庸。


・ザーラのレインボーポーションボトル

 【説明】

 古の錬金術師ザーラさんが作ったポーションボトル。

 使っても使っても時間経過で中にポーションが生成される。

 5つのボトルに五色のポーションが入っている、虹を語るくせに七色じゃない。

 一本生成するのに約4時間ほど掛かるので過信は禁物。


・マリアの魔石殺し

【説明】

 特殊な刃を生み出し魔石のカッティングを行う為のナイフ。

 その切れ味は凄まじく、その名に恥じない性能を秘めている。

 マジックアイテム作成を志す君の心強い相棒になる事間違いなし。


・水精のつるはし

【説明】

 水の精霊の加護が宿っている特殊なつるはし。

 その刃は魔法石を傷つけない、その代わり土くれには効果絶大。

 ゴーレムなどの石材系の魔物に対してなら強力な武器にもなります。


・ノアの園芸用はさみ

【説明】

 その刃で切られた植物は、まるで切られていないかのように生き続ける。

 植物を枯らさずに持ち運ぶのに便利なはさみ。

 薬草ハンターのお供に欲しい一品。

 

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