お店の前にいた猫
お店の前に自転車を止めた。その時、ふと小さなものが目に入った。
それは一匹の白黒の猫。
ギリギリのところで自転車はストップ。猫と眼が合う。
「……」
「……」
猫は逃げない。なかなか人なつこい猫だなと微笑みがこぼれてしまった。
お店の用の方が優先だったので、猫と顔を合わせる時間はそこまで。さっさと傘をたたんで入口まで行く。
店から出て自転車の所まで戻ると、猫は初めて会った場所から動いてない。
この時再び眼を合わせることになる―よく見ると、顔が結構汚れている。野良なのか。そこのお店で世話になっているのか―汚れ方から前者なのかなと思った。
「……」
季節は冬。ミゾレがちらついている。
でも、毛に覆われているから人間より温いのかねえ? などとにやりと笑って猫を見る。また眼が合う。見事に眼が合うものだからまるで、何かを訴えられているように錯覚する。
「寒いねえ。寒いよ」
息は白く、空は真っ暗。さっさと帰ればいいのに、なぜか帰らずそこにいた。
わずか一分にも満たない出会いだが、この猫に愛着を持ってしまった。
幸薄そうなところが自分みたいで、なんか共感できた。
はあ…買ったばかりの肉まんはいつも暖かいが、心はいつも寒い。
でも、今この時は傍に自分みたいなヤツがいて暖かい気がするよ。
「……」
ん? こっちがそう思っているだけで、この猫は実は幸せだったりするんだろうか?
「まあ…いいや」
誰にも聞こえないくらいの声でそうつぶやいて猫にこう言った。
「お互いがんばろうな」
しんしんと降るミゾレの中、自転車を走らせていく―。




