表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/106

第97話 ローレンVSジェンキンズ

 ジェンキンズがグロリアスに圧倒されて、しばらく距離を置いていた。その隙に、グロリアスは私の近くに来てこう作戦を告げる。強がってはいるが、実はもう賢者タイム寸前の状態までなっているのだ。


 賢者タイムになってしまえば、10分過ぎるまで能力が使えない。そうなる前に早めに私と合流して、奴を倒す算段を付けるのだ。


「ローレン、奴が無限賢者である理由が分かった。なんて事はない、ドリンク状の薬によるドーピングで、賢者タイムをムリやり回避していただけだ。つまり、ドリンクが無くなれば、奴の手札は尽きる。それに、奴自身は生身のままだ。


 お前の膨大な賢者能力アビリティーならば、奴の防御を掻い潜ってダメージを与える事も可能だろう。少なくとも、俺が賢者能力アビリティーを回復させるまでの時間稼ぎにはなるはずだ。どうだ、ジェンキンズを倒してみるか?


 この戦いをお前が賢者になる認定試験とする。ただ勝つだけじゃない。俺がお前を賢者になっても良い人間だと判断する事が重要だ。これにパスすれば、ハンナやカステラと同じ賢者としてお前を賢者学校に推薦しよう。どうだ、戦ってみるか?」


「無理!」


「無理? 親の仇でもあるジェンキンズだぞ? 確かに、殺すのは賢者としてふさわしくないと思うが、戦わないのもどうかと思うぞ。自分の両親を殺した男だ。捕まえなければ、新しい悲劇が増えると言ったのは、お前自身だぞ。捕まえなくて良いのか?」


「無理だよ。だって、エイトガンが壊れちゃったもん!」


 私は、バラバラに砕けたエイトガンのカケラをポケットから出して、彼に見せる。一応、全てのパーツを拾い集めていたが、手に持つ部分は砕けて細かくなっていた。その為、回収を断念して、ダイヤル部分の所だけを拾い上げて来たのだ。


「なるほど、エイトガンが砕けたのか。でも、グリップ部分だけだ。これなら、俺のオリハルコンで補えるだろう。ちょっと貸してみろ!」


「本当!? 直るの?」


「ああ、これでどうだ!」


 グロリアスは、壊れたエイトガンのパーツ部分をオリハルコンの補強で繫ぎ止める。グリップ部分も見た目こそ格好悪いが、なんとか使えるようになっていた。


「おお、ちょっと歪でカッコ悪いけど、なんとか撃てそうだ」


「即席だから仕方ないだろう。一言余計なんだよ、お前は……」


「痛い!」


 グロリアスは、私にデコピンして痛みを与える。ちょっと賢者能力アビリティーを使ったようだが、わずかな消費をしただけだった。作戦には大して問題はないらしい。再び、私にこう尋ねて来た。


「どうだ、ジェンキンズを倒してみるか? お前の賢者になれるかどうかの最期の試練だ。これで俺が賢者になっても良いと認めれば、お前を正式な弟子にしてやろう。賢者学校入学までの一ヶ月間、お前を立派な賢者の卵にしてやるよ!」


「私は、コイツを殺したいと思っていた。でも、みんなと出会って、少しばかり考え方が変わった。コイツは悪さをできないように拘束しておく。生きて、自分が犯した罪を償う事こそが、本当の私の復讐なんだ! コイツを生かして捕えるよ!」


「ふっ、必ずしも理想通りになるとは限らない。だが、その精神は正解だと言えるだろう。行ってこい、ローレン!」


「うん、勝ってくる!」


 私は、殺気の篭った目をした男の前へ姿を現した。グロリアスの攻撃に翻弄されていたのがイライラするのか、本気の目をしている。賢者タイムを抑えるスタミナドリンクを数本飲みながら、私の前に現れた。


「ちっ、ちょっと油断しちまったぜ。だが、奴も賢者タイム寸前のガス欠のはず……」


「ジェンキンズ、次は私が相手だ!」


 私は、エイトガンを構えて彼の前に立ちはだかる。ジェンキンズは、事態の状況を判断して笑い始めていた。


「はっはっは、小娘が相手をするだと!? なるほどな、グロリアスの奴はこんな小娘を使って時間稼ぎをしなければならないほど追い詰められているというわけか。どうやら、賢者タイムが近いらしい。残念だな、こんな小娘では10秒も俺の相手が務まるわけがない!」


「それはどうかな? よくも、私のレッドラムちゃんを……。まだオッパイだって揉んでいないのに……。それに、私のパパとママまで……。これ以上、あなたに犯罪行為を犯させるわけにはいかない! ここで止める!」


「はん! 正義の味方気取りかよ! その体を弄び、俺に逆らった事を体の髄まで刻み込んでやるよ! 手加減はしない、レッドラム同様泣き叫んで殺してやるよ!」


 私とジェンキンズとの戦いが始まった。彼は、明らかに圧倒的なパワーで押して来るだろう。賢者タイムを無くさせるスタミナドリンクがある以上、パワー勝負と持久勝負では確実に負けてしまうのだ。


 彼への対抗策はただ一つ。レッドラムちゃんが私との戦いで銃を移動手段に使ったように、機動力を生かして相手の攻撃を翻弄するのだ。スピードで撹乱した先にこそ、奴のスタミナドリンクを破壊する一撃をお見舞いする事が可能になるのだ。


「ふん、エイトガンでレッドラムちゃんから学んだ必殺技だよ。まずは、魔法マジックNo.(ナンバー)80『魔法の(マジック)ブルーム』だ!」


 私はエイトガンを火球にして、後方に小型の火球を撃ち出して、宙に浮きながら一気に加速をする。これは、レッドラムちゃんとの死闘で学んだ技だった。威力も調節して、まるで魔法の箒のように空中を飛び回っていた。


「なんだと!? 奴の動きが捉えられない!」


 グロリアスは、自分の賢者能力アビリティーを回復させながらも、私の戦い方を分析して感動していた。どうやら思っていた以上に急激に成長しているらしい。


「ふん、まさに魔法の箒を現代版にした感じだな。威力も調節されているから、奴と長時間戦える技量を身に付けたか。持久戦になれば、ジリ貧状態になるのはジェンキンズの方だぜ。これが、賢者タイムを本当に克服するという事だ。


 貴様のように賢者タイムをスタミナドリンクなどのドーピングで回避するのではない本当の強さというわけだ。レッドラム、ローレンはお前と会えて良かった。彼女の代わりに感謝しておくぞ。できれば、俺もお前と友達になりたかったがな……」


 グロリアスは、死体となったレッドラムに敬意を払って一礼する。殺人を犯して来た恐るべきスナイパーだが、それでもその実力は本物だった。あの年齢であそこまで強くなるには、相当の訓練を積んでいたのだろう。その実力に敬意を表していたのだ。


「けっ、スピードで撹乱させる作戦か? 甘いんだよ! 俺の嵐を前に、思い通りの動きができると思うな!」


 ジェンキンズは、私を拒絶するように竜巻を発生させていた。それを使い、私の接近を阻むのが狙いだった。彼も本能で分かっていたのだろう。接近した状態で、強力な火球攻撃を喰らえば、風の防御さえも突き破るほどの威力である事を……。


 私の急接近からの攻撃を防御するには、先に近付けさせない事が重要だった。風の暴風雨を浴びせられれば、スピードを弱める事ができるし、私の体力も急激に奪っていくのだ。私は懸命に強力な風の渦を避けて、彼への接近を試みていた。


「くうう、竜巻が邪魔で近付けない。ならば、先に竜巻の方を消してやる!」


 私は、ある程度まで接近してから、エイトガンで火球を放つ。グロリアスのオリハルコン製のグリップのせいか、エイトガンの制限リミッターが外れて強大な火球が発射されていた。いつもの3倍以上の威力を誇っている。


「あれ、なんか威力が強い!? 気のせいか……」


「うおおおおおおおおおおおお、気のせいじゃねえよ、バカ野郎!」


 ジェンキンズは、私の発射した火球を風球でなんとか凌いでいた。実は、彼の竜巻によって私の火球がパワーアップしていたのだ。発射した火球自体も2倍ほどの威力の物だったが、彼の風の力と合わさって、恐るべき威力を発揮していた。


 彼は、それを更なる自分の風によって防御したのだ。すでに、使っている賢者能力アビリティーでは、とっくに賢者タイムになっているほどの消費だ。それを、自分が持っているスタミナドリンクで回避している状態だった。


「ゴキュ、ゴキュ、ゴキュ、危ねえ! だが、無限賢者の俺の前には無意味だぜ!」


「クッソ!」


 見た感じジェンキンズに大した消耗はないように見られた。私は最大火球3個分を消費しても傷一つ付けられないのだ。残りは4発となっていた。レッドラムとの戦いに使った装填方法も、事前に装填していなかった為に今回は使えないのだ。


 ジェンキンズが無限賢者である以上、勝負が長引けば確実にこちらが不利な状況になるのだ。それでも、グロリアスは攻撃を続けるようにアドバイスする。スタミナドリンクを破壊する事を狙っているのだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ