第93話 レッドラムVSローレン 決着!
レッドラムは、さっきまでと同じように銃で空中を自在に移動する。弾数という制限はあるが、彼女は習慣になっているのか暇になる時はすぐに弾をリロードさせていた。私との会話時も話しながら弾を込めていたので、片方の銃で残り6発くらいある。
「おお、凄い! 私もやってみよう!」
私も彼女から逃げるように銃を発射させてみた。彼女よりも威力があるのか、火球が小さい割りにスピードは出る。私は、エイトガンのグリップが割れた事により、威力を割れない程度に調節していた。10センチほどの火球が銃口から飛び出していた。
「ふふん、あなたも銃の威力を調節できるようになったみたいね。でも、その火球じゃあ私を倒せない。私の勝ちは確定したも同然よ!」
私はレッドラムから離れるように銃を撃つ。どうやら威力が大きい分、私の方が宙を浮くのがやり易いようだ。更に、少しだけスピードも上だった。小回りという面では彼女の方が扱い易いが、単純な銃の威力だけなら私の方が上だ。
(ローレンの弾は威力が強い。ならば、肉弾戦を仕掛けてくるのかな? 私のスピードに彼女のカウンターを合わせた攻撃ならばかなり強い。まあ、私も機動力が上ならば当たる事はないけどね。すでに弾数は尽きた。
最大火球以外ならば、たとえ当たっても大したダメージにはならないわ。反撃の一撃を加えれば、彼女を殺す事ができる。後は、適度に彼女と追いかけっこをして、無駄弾を撃たせれば終わりよ!)
レッドラムと私は、追い駆けっこをするように銃で距離を取り合っていた。私はレッドラムに追い付こうとするが、彼女がそれを嫌っていたのである。
「うーん、同じ技を使ってもローレンには効かないかも。銃の移動スピードがほぼ同じなら、彼女にも大ダメージを与えるのは難しいか。ならば、最大火力の必殺技をお見舞いさせてあげるよ!」
レッドラムは、私に火球がないと思い、一気に突撃して来る。私の銃による反動で飛ぶ技を超えたスピードで近付く。彼女は、銃が二丁あるので交互に撃って、スピードを加速させていた。この空中戦の鬼ごっこも、私が追い付かれている。
「うわぁ、速い! あんな技もあるんだ!」
「ふふ、弾数がすぐに終わって、数分しか戦えないというリスクはあるけどね。まあ、私の最大火力『燃える(バーニング)血潮』を喰らって、ゲーム終了よ!」
レッドラムは、超加速で私の手前まで迫っていた。私は、射撃の方向を彼女に向かうように調整する。お互いにぶつかり合うような高速で近付いていた。
「うわぁ、追い付かれちゃう! なら、こっちも向かって行くしかないね!」
「そう来ると思った!」
レッドラムは、斜め下方向に銃を撃って、私の直前の地面に着地していた。私と地面との距離は、わずか1メートルほどの高さだ。彼女は、自分の化け物並みの脚力を使い、自分の体重と加速の衝撃を耐えていた。
「喰らえ、火山をモチーフにした必殺技『燃える(バーニング)血潮』!」
彼女がジャンプすると、今まで加速していた力量が反動によって、一気に彼女自身を加速させていた。下から私を狙った銃による打撃技だ。彼女のジャンプ力と加速した力量、それらが1つに集中する事で恐ろしいほどの威力を持っていた。
「ふふ、この距離と体勢では躱せない。勝った!」
彼女の銀色のリボルバー銃が、私のアゴに向かってアッパーのような動きをしていた。喰らえば、恐らくアゴが破壊されるだけでは済まない。下方向からの反撃により、私も一瞬だけ彼女を見失っていた。
「消えた!? いや、しゃがんだだけか……」
「この刹那のタイミングでよく気付いたね。でも、もう遅いよ!」
「クッソ、反撃の火球を喰らえ!」
私は、彼女の銃に向かって火球を繰り出そうとする。彼女の銃が当たるだけで不味い事を直感していた。死に物狂いでも防ごうと躍起になっていた。しかし、それさえもレッドラムの考え通りの行動だった。
「ふふ、もう賢者タイムになってもおかしくない。後は、小型の火球が1発くらいかしら? でも、そんな火球さえも打ち消すほどの威力なのよね。脳天までトロけるような一撃を喰らって死になさい、ローレン!」
彼女の予想通りだろうとも、私には火球を放つしか防ぐ方法がない。相打ち覚悟で火球を放つ。レッドラムは、弾数を数えていたので撃って来る火球は小型の物と思い込んでいた。でも放たれた火球は、4メートル級の最大火球だったのである。
「嘘……、そんな火球が撃てるはずは、ない……」
レッドラムは、今までの私の攻撃を瞬時に思い返していた。この瞬時に状況判断できるのも彼女の才能なのだ。その時の集中力は、やはり化け物並みなのだ。
(城内で撃った最初の1発、トリガーを引いた後にかなり速く火球が放たれていた。まさか、ローレンの奴、最初の火球は装填した状態でいたという事かしら? 賢者タイム対策とはいえ、超危険な状態じゃない。異常だわ……)
そう、リボルバー銃を例にとってみると、通常は6発が限界とされている。しかし、弾を装填した状態ならば7発撃つ事が可能なのだ。エイトガンも最初に1発を装填しておけば、理論上は8発撃てるようになるのだ。でも、暴発する危険の高い行為なのだ。
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
レッドラムは、予想外の火球を喰らい、森林の向こう側まで吹っ飛ばされていった。生死は不明だが、かなりのダメージを食らった事は間違いない。私は、彼女の銃がアゴにかすって、わずかな切り傷を付けられていた。
「いたたたた……、アゴを掠った……」
私の記憶では、レッドラムも燃えるように吹っ飛んでいった。恐らく回復にも時間がかかると予想される。いずれにしても、レッドラムから城のみんなを守る事ができたのだ。私は、初めての勝利を感じてガッツポーズをする。
だが、私の唯一の攻撃方法であるエイトガンが私の放った火球の衝撃に耐え切れずにバラバラに砕けた。どうやら、ギリギリで火球を放てたらしい。さっきまでは注意して威力を調節していたが、彼女の攻撃を受けそうになって全力で攻撃してしまったのだ。
「ああ、エイトガンがバラバラだ……。まあ、修理すれば良いか。グロリアスか、ダイアナさんに頼もう」
私は砕けたエイトガンをポケットにしまい込んだ。まずは、レッドラムの行方が気になって追いかけてみた。まだ意識は取り戻していないので、セクシーな格好で倒れているかもしれない。




