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第91話 荒野での決闘

 レッドラムは、私と向き合いながら分析をしていた。今まで、彼女と互角に戦えた者はいなかった。ダイアナやハンナでさえ、遠距離から攻撃された事によって手も足も出なかったのだ。本来ならば、戦闘訓練も受けていない私では瞬殺されて当然なのだ。


(ローレンは、スピードというより反射神経が私と同じくらいに速い。おそらく彼女の賢者能力アビリティーと関係があるのでしょう。更に、足の速さもほぼ互角。スタミナもありそうだから、持久戦になると時間がかかって仕方ないわ。


 でも、私は近距離も得意なのよね。大半の敵が遠距離勝負でほぼ決まってしまう為に、近距離の戦闘能力の訓練をしたのに使えなくてつまらなかったわ。でも、ローレントだったら、少しはまともな勝負ができるかもしれない。悪いけど、本気で行くわよ!)


 ローレンがエイトガンをホルダーにしまっていると、先に銃をホルダーに収めたレッドラムが戦闘スタイルになり始めた。赤いコートを脱ぎ捨て、近くの地面に落とす。上に放り投げた時は気付かなかったが、下に落ち始めるとその荷重が異常である事に気が付いた。


「ふふ、私の赤いコートは、遠距離と中距離用の銃を収めているの。その為に、コートの重さは、数百キログラムにも及ぶわ。近距離ならば、私の愛銃の二丁で十分だしね!」


 レッドラムの言う通り、赤いコートは地面に引き寄せられるように、土埃を舞い上げながら地面にめり込んで落ちる。あまりの荷重の重さに、地面に直径50センチほどのクレーターができていた。彼女は、常時あの赤いコートを着ているのだ。


「格好良い!」


 まるで、少年漫画のような演出に、私はレッドラムを賞賛する。見た目はただの華奢な女の子だが、腕力や身体能力は化け物並だった。たとえダイアナやハンナ、アリッサでさえあれほどの身体能力は持っていないであろう。


 彼女は、身体能力だけなら最強レベルに達していた。それに、防弾チョキを上に軽く羽織っていた。戦う女の子の軽装は、ゴスロリ服やメイド服とは違った可愛さを見せていた。タキシードのように正装を装いながらも、体のラインがはっきりと見える。


「ふふ、動き易さと防御力の両方を兼ね備えた格好だよ。ただし、ローレンの攻撃力の前にはあまり関係ないけどね。それでも、半端な攻撃力ではダメージを与える事はできないよ。ローレンの攻撃できる回数は、残り3発。外したら後がないよ?」


「うう、私でも弾数が分かってなかったのに、レッドラムの方が私の攻撃方法を知ってる!? でも、私だって一応考えているんだからね。オッパイの大きさと身長や腕力が上だからって、バカにしないでよね!」


「あっ、本当だ。ローレンはAカップか。私はBカップだもん。女の子としては、私の方が勝ちかな!」


「どれどれ? おお、柔らかい! でも、ハンナちゃんの方が大きいかも……」


「ふふ、私の弾を避ける時に、ぶるんぶるん揺れてたわ。ダイアナさんとかいう女性よりも、あの褐色肌の女の子に殺意が湧いたものね。もしも、キングを誘惑していたら、絶対に生かしておかなかったわ。まあ、ちょっと恐怖を与えておいたけどね」


「ハンナちゃんをいじめちゃダメ! ハンナちゃんのオッパイを触って良いのは、私だけなんだから。ハンナちゃんをいじめたあなたを許すわけにはいかない。そのBカップのオッパイを揉んでやる! 泣くまで許してやらないんだからね!」


「おお、怖い! じゃあ、私も本気でやらないといけないようね。キングだけに許されるオッパイタッチを、あなたにさせるわけにはいかないわ。殺す気で行くから覚悟してね!」


 私とレッドラムは、銃をホルダーに収めたまま向き合っていた。合図があれば、お互いに撃ち合う緊張感が漂い出していた。広い荒野に居るので、風がふわりと土埃を上げる。私と彼女は、目が合ったまま時間が経過していた。


「でっ、どうやって開始すんの?」


「ああ、ごめん。私もあんまり決闘とかした事ないから忘れてた。キングと敵のガンマンが決闘するのを見てた程度だったわ。後、映画とかテレビで見た事があるような気がする。ドラえもんでのび太とジャイアンが撃ち合ったのだけ覚えているわ」


「ああ、そうなんだ。私達は、どうしようか?」


「私がコインを投げるわ。それが落ちた瞬間が開始の合図というのはどう!?」


 レッドラムは、500円玉を取り出してそう言った。私には、その方法は公平なバトルをする事はできないと判断する。500円玉を見たら、とりあえず足で拾おうとする仕草をしていた。レッドラムは、それを不思議そうに見ていた。


「ダメだ! それじゃあ、私が不利すぎる!」


「えっ、どうして!?」


「私もグロリアスも貧乏性だもん。小銭を投げたら、全力で取りに行っちゃうよ。お金もお菓子もダメ。予備の銃とか、爆弾とかにしないと……」


「じゃあ、爆弾でお願いします。小規模なやつにしてね。大きい音だとビックリしちゃうから……」


「注文が多いなぁ。爆竹並みの爆発に抑えておくからね。そこまで注意してあげるんだから、負けたら言い訳は無しだよ? 死んだら実力だと思って諦めてね!」


「うん、レッドラムも負けたら言い訳無しだよ?」


「私は、絶対に負けないから大丈夫!」


 勝負の方法が決まると、レッドラムは本気を出し始めた。彼女の出す緊張感で空気が揺れてピリピリし始めていた。ポルターガイストのように、付近でピシピシと音が鳴り始めていた。私も真剣になり、彼女の動きに注目し始めていた。


(ローレン、すごい集中力だ。この段階ですでに勝負が決まってしまうかと思ったけど、少しはやるみたいね。こっちも全力が出せるというのは久しぶりだね!)


(お腹空いた。レッドラムちゃん、お菓子とか持ってないかな?)


 緊張感とは裏腹に、私のお腹は鳴り出していた。早めに勝負を決めて、ダイアナの用意した料理を食べたいと思っている。残念ながら、パーティー会場は無残な姿になっており、美味しい料理も飲み物もない。食事の準備までに、後1時間はかかるだろう。


「じゃあ、行くよ!」


「あ、ちょっと……」


 私の言葉を遮るように、爆弾が爆発した。パンという可愛い音が響き渡る。私の事を考えて、レッドラムが微調整を加えていたのだ。音がすると、レッドラムが一気に私に向かって突撃して来ていた。

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