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第90話 『無限の(アンリミテッド)体力(スタミナ)』

 私が作った森林の迷路に迷い込み、レッドラムはゆっくりと私を追いかけていた。銃を構えて、人影を射撃する。歌を歌いながら、鬼ごっこを楽しむように私を追いかけていた。武器の威力が強く、次第に森林も見渡せるようになり始めていた。


「頭がボン! 胸がキュン! お尻がバン!」


 レッドラムは、得意の射撃で邪魔な枝を次々と無くしていく。ローレンの姿はチラホラ見えるが、彼女は気にせずに自分の周りを広く空けるように、葉の付いた枝を重点的に撃ち抜いていく。すると、彼女の一帯にだけ草木のない場所ができ始めていた。


「突然の私のアプローチ、あなたを驚かせちゃったみたいだね。でも、本当は私も恥ずかしがり屋なの。緊張しちゃって、上手く言葉にできない。だから、慣れるまでは優しく接して欲しいなぁ♡」


 レッドラムは、火炎放射器をコートの内側から取り出した。自分の安全な場所を確保して、一気に森林を焼却するのが狙いのようだ。草木も一気に燃え上がり、辺り一面を焼け野原にする狙いがあった。


 私は、火が見え始めた時点で森林から脱出して、火の手が来ない場所に移動する。森林の隣は、広大な荒野であり、そこならば火の手も届かない場所だった。私は、森林が燃えて行く様を見つめている。すると、木の間からレッドラムが飛び出して来た。


「次のデート場所はどこにする? あんまり遠くへは行きたくないなぁ。近場のデートスポットで我慢してね♡」


 レッドラムは、態と私を荒野へ誘導するように攻撃していたようだ。火を放ったのも、私の逃げ道を限定して、広い場所でバトルができるようにするのが狙いだった。私は、彼女の歌を聴いて、とても上手いと感じていた。


「山奥? 山奥? 手だけを残して体は土の中、1人寂しいだろうけど、私はあなたを忘れないよ。時々思い出して見に来てあげるね」


 私は、息を切らしていたが、レッドラムは息切れ1つしていなかった。私は、彼女の揺れる茶髪や赤いコートを見て可愛いと感じる。近付いてくる彼女を銃を撃つフェイントをして、彼女の体力を奪おうとしていた。


「湖? 湖? 取って置きの良い場所があるんだ。大切なあなたの体をそこへ沈めたい。私という深い湖の底へ沈めてあげるわ。でもね、2度と浮かび上がって来ない底なしの沼だから覚悟してね♡」


 私の指先に反応して、彼女は火球を避けようと身構えていた。普段の相手ならば難無く射殺できるのだろうが、私には彼女を恐れる感情が無い。好奇心で彼女を見つめていると、彼女の動きも良く分かっていた。


「大海? 大海? 光の無い漆黒の闇へ連れて行ってあげるよ。でも大丈夫、そこにもきっと綺麗な景色が広がっているはずだから♡」


 私は、彼女の姿を見て、思わず呟いていた。私と彼女の距離が、かなり近くまで来ているにも関わらず、私が攻撃して来ないので不思議に感じていたようだ。私は、彼女の銃撃をひらりひらりと躱していた。彼女の動きをずっと見ていれば、避けるのは意外と容易い。


「可愛い♡」


「マシンガンみたいな私の激しい恋心、全部その身で受け止めて欲しいなぁ。じゃあ、私のキュートな笑顔で逝かせてあげるね。バイバイ、マイダーリン♡」


 彼女の決め技も、私は腕を払いのける事で躱す。私がのらりくらりとしているにも関わらず、彼女の攻撃が効かないので、彼女は驚いていた。私は、彼女の歌が上手くて、思わず拍手までしてしまった。興奮して彼女に抱き付く。


「歌上手い、思わず見とてちゃったよ!」


「うわぁ、ありがとう。でも、私は殺す気だったんだけどね。ぷっ、ローレンって変な奴。なんか、本気になり難いなぁ。危険な状況だって分かってる?」


「一応、ハンナちゃん達に危害を加える事は避けられたし、一対一ならそこまで脅威はないかなっと……。ごめん、さっきまではちょっと怖いと思っていたけど、歌を歌い出してからは可愛いとしか思わなくなった」


「ふう、なんか毒気が抜かれちゃったよ。実は言うと、私と出会った人達は、みんな私を怖がっていたから殺す意欲も出たんだよね。でも、こんな風に可愛いとか言われると、ちょっと照れちゃう」


 私は、レッドラムが近くで脅威を感じさせていないので、友達感覚に話し始めていた。まずは彼女に感じた疑問を尋ねる事にした。


「レッドラムちゃんの体力って凄いね! 歌を歌いながらあんなに早く動けるなんて。しかも、全然息切れ1つしていないし……。それがあなたの賢者能力アビリティー)なの?」


「うわぁ、気安く話しかけて来た。まあ、ちょっと秘密を話しちゃうか。別に、聞かれて困る事でもないし……」


 レッドラムは、顔を赤くして、髪を弄りながら話し出す。こんな風に、他人から関心を持たれる事も久しぶりのようだ。


「私はね、魔法技術マジックスキルが不明なの。キング、つまり私の恋人が未だに私の魔法技術マジックスキルを教えてくれないのよ。なんか、暗殺とか銃撃を極めていけば、いずれは物凄い魔法技術マジックスキルが発現するらしくって……。


 自分で魔法技術マジックスキルを自覚してしまうと、賢者能力アビリティーを開発する技術は伸びるけど、私自身の可能性まで決めてしまう事になるから、しばらくは無自覚で魔法技術マジックスキルを伸ばしていった方が良いって言われたの。


 だから、私はまだ賢者じゃないんじゃないかな? 賢者能力アビリティーの修行も一切していないし、魔法技術マジックスキルも何なのか分かっていないし……。射撃の腕だけは磨いて来たけど……」


「ふーん、無能力者なんだ!」


「カッチーン。ちょっとその言い方には頭が来たかな。ローレンとの決着は、ガンウーマンとして決闘で勝負しようかな。今まで第2章まで歌っても決着付かなかった事なんてないし、2人ともガンウーマンだしね!」


「ええ、結婚!? ガンウーマンだと、女の子同士でも結婚ができるの? たしかに、レッドラムは可愛くて頼り甲斐もあるけど、結婚はちょっと……。ハンナちゃんと言う気になる子もいるし、カステラちゃんも捨てがたい……」


「いやいや、結婚じゃなくて、決闘だよ! 私もキングという恋人がいるし、ローレンと結婚はちょっと……。それに、さりげなく百合の世界に入って行こうとしないでよ。私は、普通に女の子の感覚を持っているんだからね!」


「なんだ、おっさん萌えか……。私も、グロリアスの事とか気になっているし、ハンナもジャックの事が気になっているみたいだし良いけど……。じゃあ、決闘しようか! でも、決闘って何?」


「決闘って言うのは、銃をホルダーに収めた状態で向き合って、合図と同時に勝負を始める事だよ。銃をホルダーから先に抜いて、相手を先に倒した方の勝ち。通常は、コインを投げて、音を聞いたら勝負を開始するというのがほとんどだけど……」


「うん、良いよ!」


 こうして、私とレッドラムの決闘が決まった。ガンウーマンらしく、荒野での決闘という事になった。お互いに銃をホルダーにしまった状態で向き合っていた。

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