第80話 殺人神父(マダーファザー)再び!
私は、風の賢者と一緒にいたが、城内の爆発音が気になって眠れなかった。それは、風の賢者も同じらしい。そこで、2人で少し会話を始めていた。昼の真っ只中であり、夜の9時にキッチリと寝る私にとっては、この時間で寝れというのは無理な話だった。
「眠れませんか。無理もありませんね」
「私もグロリアス達の役に立ちたい!」
「それは無理です。あなたのパワーは目に見張るものがありますが、技術を学んでいなければ役には立てませんよ。とはいえ、パワー自身が無くては、どんなに技術があっても意味はないんですけどね」
「技術って、そんなに重要なの?」
「ええ、パワーが強くても、燃費や使い用が悪ければ、大した賢者能力は作れ出しません。工場で言う所の機械ですね。電気があっても、機械が無ければ、物を作れないのと同じです。かといって、電気が無くても困りますけど……」
「ふーん」
「あなたは、パワーも凄いですが、技への応用も豊富にできますよ。普通の賢者は、20くらいの技を作り出せれば良い所ですが、あなたの魔法技術を見た所では、100以上は超えられるでしょう。
まあ、あなたが技を開発するか次第ですけどね。そんなに有ると、将来的に技を覚える事が出来なくなるという悪い点も有ります。なるべく早めに技を思い出して、発動させるようになる必要があるんです。魔術戦というのは、速さも重要ですからね」
「うへー、面倒くせ!」
「私の提案としては、魔法の属性ごとに区切ったこんな表を作成して覚えてみるのが、技の開発と覚えるのに良いかもしれません」
風の賢者は、受験生に記憶させるような表を作り出していた。定規でキッチリと線を引き、見ているだけで眠気がしてきそうな物だ。それに、私が作り出した技などを書き込ませるのが狙いのようだ。とりあえず、エイトガンの弾が書き込まれていた。
「うわー、覚えたくない……。あっ、でも、魔法No.(ナンバー)とかで数字を合わせれば、覚えられるかも……」
「良いかもしれません。数字と名前を合わせれば、格好良い技のような感じがします」
風の賢者は、ふっと優しく私に笑いかけた。すると、突然、私達の部屋が爆発された。私も風の賢者も爆発の直撃は受けていないが、巨大な瓦礫が降ってくる。風の賢者は咄嗟に私を庇い、瓦礫を背中に受けていた。
「ぐわあああああ、ここも攻撃され始めたようです。ローレン、とりあえずどこかへ避難してください。私は、大丈夫ですから……」
「うん、誰か呼んでくる!」
私はアリッサに援助を求めようとするが、彼女への通路も塞がれていた。声に出して叫んでも、小説の執筆に没頭しているのか返事がない。私は諦めて、お城の周りで助けになる人を探し始めた。ダイアナ達のいる部屋も爆発によって塞がれていた。
これは、実はアリスが仕掛けた罠だったのだ。私と風の賢者を攻撃して、ダイアナに千里眼を使わせるのが目的だった。遠い場所を見れる便利な能力だが、ダイアナ自身の注意力が削がれるという弱点があった。
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ダイアナは、アリスの特攻を喰らい、腹を押さえている。アリスの拳は、彼女の腹の前で攻撃を続けていた。爆発の威力を利用した特攻技だけに、直撃を受ければ胴体ごと体全体が吹っ飛んでいくほどの威力なのだ。
ダイアナは、なんとか吹っ飛ぶのを耐えてはいるが、重い攻撃を受けたように前屈みになっていた。おそらく彼女の綺麗なお腹には、醜い痣ができて来るだろう。形勢が逆転し、アリスが粋がり始めていた。
「ぐうっ、まさか、こんな方法で私に隙を作らせるとは……」
「はっはっは、勝負あったね。いくらあんたでも、千里眼を使いながら私の攻撃を受け止める事なんて出来なかったようだね。ちょっと卑怯な技だと思うけど、こっちはお行儀の良い賢者じゃないんだ。死と隣り合わせの世界で生きている暗殺者なんだよ。
あんたの敗因は、その他人を気遣う優しさと、足手纏いであるローレンとかいう小娘を城に来させていた事だね。彼女を切り札の賢者にしたいようだけど、今の段階ではただの小娘だ。
私達のように、個々でも安心して戦わせるくらいの信頼関係がないと、足を引っ張るだけなんだよ。まあ、この城に招くには、10年早かったというところかな?」
「ふん、たしかに、私は甘いかもしれません。他人の事を気遣っちゃうかもしれないし、ローレンちゃんも今は弱いかもしれない。さらに、ガードマンとして呼んでおいた風の賢者さんもガードの役目を果たせなかった。でも、あなたを捉える事には成功しましたよ?」
「何を……」
アリスは、ダイアナの姿を確認する。白衣を羽織ってはいるが、上半身はブラジャー以外は裸であり、下半身も短いスカートを着ているためにパンティーが見え放題だった。だが、その短い白いスカートの上部には、丈夫な牛革性のベルトが巻いてあった。
「ふん、私を捉えたなんて嘘を……。あんたは、私にボロボロにされる……、なに、これ、手!?」
ダイアナのベルトから、生白い手がニュッと伸びて、アリスの手首を掴んでいた。その手がアリスの攻撃を食い止めており、ダイアナは無傷のようだ。逆に、アリスの手が捉えられて、離れるに離れられない。その手が、徐々に姿を人型へと変えて行く。
「アリスちゃん、いえ、赤馬凛子さん、あなたを拘束したしました。私は見た目は華奢ですが、パワーは成人男性の大人程度には備わっています。ダイアナが1人だと思って油断していましたね」
「お前は、カステラ!? ダイアナのベルトに変化していたというのか?」
「その通りです。これが、私とダイアナによる防御型の布陣です。ダイアナの戦闘力に驚きつつも、敵がそれに対応して来たり、不意の攻撃に対処するようにしていたのです。このオリハルコン性の特殊な手錠をかけてしまえば、逃げ出す事は出来ません!」
「くっそ、放せ……」
コードネーム・『アリス』(本名:赤馬凛子18歳独身)は、カステラに捉えられて、立派な教師に成れるように調教され始めた。ダイアナとカステラの背後には、ムチやロウソク、その他の拷問道具が……。
「ふふ、傷付かない程度に痛め付けてあげる♡ ああ、綺麗な背中に、素敵なオッパイ、これなら生徒の心を掴む良い教師になりそうだわ♡」
「止めろ、私に触るんじゃない! ああん、なんてテクニックなんだ……」
ダイアナの必殺技『究極調教』により、徐々に理想の教師にされそうになっていた。伊達メガネをかけさせられて、ピッシリと高級なビジネススーツを着せられていた。
「止めろ、私は教師になんてなりたくない!」
「あらあら、結構イケるわよ。これなら、男子生徒も夢中になっちゃうんじゃないのかしら?」
ダイアナがアリスを教師スタイルに着替えさせると、ハンナがそれを見て同意する。パーマをかけた黒髪ショートのヘアースタイル、清潔感漂うビジネススーツ、キリッとした切れ長の目に伊達メガネが似合っていた。
「こんな女性教師がいたら、男子学生が性に目覚めそう……」
「うっさい! あんたのそのバストだって、同級生からしたら凶器なんだよ! 普通は、Aカップか、Bカップ止まりなのに、Dカップだと!? ふざけるんじゃないよ!」
「こればっかりは、本人の意思ではどうしようも……」
「私だって好き好んで着てるわけじゃないんだよ!」
アリスが、ダイアナとその仲間達に弄られていると、城の外から新たな賢者が姿を現した。ガラス窓を破って侵入し、彼女を助けようとする。その人物は、殺人神父であり、アリスから神崎真火流と呼ばれていた。




