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『賢者タイム』という科学的過ぎる魔法制限 〜賢者魔法のご利用は計画的に〜  作者: ぷれみあむ猫パンチ
第3章 『闇の(ダーク)道化師(クラウン)』との死闘
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第73話 主人(あるじ)様のご帰還!?

 グロリアスとジャック、ハンナが馬車から降りる。暗殺者の真火流まひるとアリスの2人は、彼らがカードキーを出すのを待ち構えていた。それを出す所を見れば、一気に攻撃を開始する予定のようだ。


 ジャックに悟られない数10メートル距離まで離れ、静かにチャンスをうかがっていた。彼らは銃のような武器を持参しておらず、人通りのある通りに紛れ込んでしまえば、さすがのジャックでさえも気が付かない。


「良いね、油断した所をジェット噴射で一気に接近するのよ。狙うのは、奴らのカードキーのみ。奪ったらさっさと逃げて、別の入り口から中に入れば良いんだからね。むやみに戦闘するのは得策では無い。


 戦闘は、とりあえず逃げ切れないと判断した時に、逃走を邪魔する奴を2人で一気に叩くからね。いくらなんでも、建物の入り口は共通しているはずだから、カードキーさえ奪えばお城のどこからでも侵入は可能なはずだよ!」


「まあ、そうですね。条件が五分五分の状態で戦闘をしても、勝つ見込みはありませんからね。それならば、ここは逃げに徹して、我々が有利な条件にしてから戦闘を開始した方が勝率も上がります。


 我々は、戦闘を楽しみに来たのでは無い。確実に、奴らのボスを倒すために来たのです。いずれは、ジャックと小娘を倒す気ですが、本当の目標である賢者協会のボスを倒す事が最重要項目です。賢者能力アビリティーの使用は温存しておかなければなりません」


 彼らが話している内に、グロリアスとジャックは城門のところに近付いていた。そして、周りを見回して警戒し始めていた。2回も3回も辺りを見渡して、周りに誰かいないかを必要に確認している。なかなか中に入って行かないため、ハンナが尋ねて来た。


「ねえ、そろそろ中に入りたいんだけど……。もう5分くらい門の前にいるけど、2人ともどうしたの?」


 暗殺者の2人も、自分達が気付かれたかと不安な顔をしていた。各々臨界体制である状態で待機する。確実に居場所がバレていると判断した場合のみ、全力で攻撃を仕掛けてくる気にようだ。グロリアスは、不安げな表情でジャックに問いかける。


「この門、どうやって開くんだ?」


「さあ、分からん! 自動ドアだと思っていたが……」


「近くの門番に聞いてみようと思ったが、誰もいなくて困っているんだ。まじめに、道行く人に聞いてみるしか無いのか?」


「でも、馬車の運転手もどこかへ行ってしまったぞ。事情が分かる人も居なさそうだし……」


「開けてくれるまで待つしかないか……」


 こうして、グロリアスとジャック、ハンナは体育座りで門が開くのを待っていた。さながら家の鍵をなくして家に入れなくなっている子供のようだ。ハンナが自分の持って来たオヤツを2人に恵んでいる。


「はい、『タラタラしてんじゃねえよ』とパチパチ君」


「済まない、ここに来るのは初めてなんで勝手が分からん」


「まあ、1時間もすれば、誰か来るだろう」


 こうして彼らは、数時間門が開くのをひたすら待っていた。ノックや返事をしても応答がない。待つしか方法がないようだった。少女の持って来たお菓子を徐々に食べていき、1時間ほどで食べ切ってしまった。


「お腹空いた」


「ダイアナのお母さんは、まだ気付いてくれないのかな?」


 暗殺者2人は、その光景を眺めて呆れていた。お前らがタラタラしてんじゃないよ!と……。そして、1時間で痺れを切らしてキングに電話をかける。グロリアスとジャックが城の中に入れない事を喋ってしまった。


「はっはっは、お前ら、今がチャンスだぞ。攻撃しないのかよ?」


「いや、こんな状態の彼らを攻撃するのは気が引いてしまって……。まるで締め出された子供のようだ、。グロリアス城とかいう名前なのに、その本人が入れないなんて可哀想だよ。最後のオヤツも食べ終わって、地べたに座ってトランプで遊び始めたよ……」


「まあ、元々の主人あるじは、俺だからな。そこは、本当はキングである俺の城だったんだ。奴らが中に入れなくても仕方ないさ。だが、俺なら自分のカードキーを持っている。主人あるじなら、正面玄関から堂々と入ってやるさ!」


「さすがはキング! 奴らとは違って頼もしい! そう思っていたら、奴らが城の中に入って行ったよ。ようやくダイアナお母さんに気付いてもらえたらしい。ちょっと切なくて涙が出ちまったよ……」


「ふん、俺達もすぐに合流できる。それまで大人しくしていな!」


 こうして、キングという男と赤い帽子を被った女の子が、2時間後に彼らの前に姿を現した。その時間まで城下町を満喫しており、たこ焼きや焼きそばを持って現れた。


 少女の手には、ウサギのぬいぐるみが握られており、キングにねだって取って来たような代物だ。キングという男の顔には、少女のキスマークが付けられていた。


 見ているだけで殺意を抱かせるような光景だった。真火流まひる)とアリスの顔に、笑顔が消えて、残酷に仲間さえも殺せる冷酷な暗殺者の顔になっていた。


「いやー、すまんすまん。なかなか楽しい催し物が多くてな。思わずいろいろ買ってしまった……、じゃなくて道が混んでてな。まさか、馬車で渋滞に合うなんて付いてないよ!」


「じゃーん、これ見て! 綿あめとか、焼きそばとか、お面とかキングに買ってもらったの! りんご飴もあるんだよ!」


「おいおい、俺がせっかく華麗に隠蔽いんぺいしようとしてたのに、いきなりネタバレすんなよ。コイツらが、今日はやめて明日にしようかとか言い出したらどうするんだよ?」


「キングと一緒なら、ここで永住しても良いくらいだよ?」


 キングと呼ばれるオッさんは、超ニヤケ顔で困っている振りをしていた。いくらクールで格好良く決めていても、美少女に抱き付かれておねだりをされたらこうなってしまうのだ。すぐ近くに脅威が迫っている事にも気付かず、しばらくラブラブモードでいた。


「おい、何やってんだ!?」


「おお、アリスちゃん怖い! ごめんごめん、別にアリスちゃんを忘れていたわけじゃないんだ。ほら、ウサギのぬいぐるみだぞ。アリスちゃん、こういうの好きでしょう?」


 キングが可愛いぬいぐるみをアリスに渡すと、赤い帽子の子がごねる。どうやら彼女も気に入っていたらしい。目を付けていたのを、年上の女に奪われようとしているのだ。


「えー、それ、私にくれたんじゃないの? 気に入っていたのに……。今晩抱いて寝ようとか考えていたのに、もうプンプンだよ!」


「馬鹿、空気を読め! アリスちゃんが祭りに行けなくて悲しんでいるんだろうが。こういう時は、ちょっと大きめのプレゼントを渡して機嫌を取るんだよ。俺の命がかかってるんだ。察してくれよ!」


「もーう、じゃあ、私はクマさんのぬいぐるみで我慢する!」


「馬鹿、そいつは神崎かんざき真火流まひるだったか? そいつにやるんだよ。クリぼっちで、俺に憎しみのこもった顔で睨みつけてんじゃないか。


 あいつは、カップルで予約一杯のホテルに、1つでもカップルを気不味くさせる為に数部屋を占拠するタイプだぜ。


 形だけでも、アリスちゃんとおそろいという妄想シュチュエーションを付けてやらないと、何をしてくるか分からんぞ。


 いきなりホモに目覚める可能性だってあるんだ。最近は、腐女子とかいう奴らが多いからな。少しでも人気になろうと、無茶振りしてくるかもしれん!」


「いやーん、キングと真火流まひるが抱き合っても、私にはなんの得もないのに……。せいぜいアリスちゃんが、へへへへ、イケメンのキングが攻めで、嫌がる神父が受けだな!とか言って、夜中に漫画を描いてるくらいよ。まあ、見ちゃうけど……」


「見んなよ。俺とアリスちゃんやお前なら、童貞共が食い付くが、俺と真火流まひる)じゃあ、キモいだけだぜ。せめて、俺が受けでないと……」


「いやーん、攻められるキングも見てみたいかも……」


 アリスは、2人の会話を聞いて怒りが倍増する。真火流まひる)は、ちょっと気分を悪くして吐きそうになっていた。つわりのような色っぽい表情で満更でもないという表情だった。真火流まひる)にわずかばかりの恋心が芽生えていた。


「お前ら、さっさとカードキーを出せ! これ以上ふざけていたら、お前らから爆発させるぞ!」


「ひええええええ、鬼だ! 調子に乗ってすいません! アリスちゃんをメインとした恋愛小説をコイツに書かせますんで、それで勘弁してください!」


 キングは、赤い帽子の少女を盾にして、彼女にお辞儀させるポーズを取らせる。どうやら、彼女をないがしろにしているのを怒られたと思っているらしい。


 彼女をメインとしたキングと真火流まひるの取り合いをいう感じの小説を少女に書かせる気らしい。


「ええ、私が書くの? じゃあ、教師と生徒という感じで演出して行くよ?」


 少女が一瞬にして、小説のプロットを書いていくと、アリスがその紙を奪い取る。そして、ビリビリに破いてしまった。


「いやあああああ、超テキトーに考えたシナリオだけど、気に入らなかったみたい」


「超テキトーじゃあ、行けねえよ。アリスちゃんは、超真面目タイプ。何事にも真剣に取り組まなければ、気が済まないタイプなんだ」


「それなら、この世界に理不尽に捨てられて、売春婦として売られてしまった美女という設定にしよう。そして、格好良いイケメンによって、彼女は現金一括で買われてしまうの。そこから始めるラブストーリーなら、アリスちゃんも気に入って……」


「やらねえよ!」


 再び書き始めたプロットを、アリスちゃんにまた破られてしまった。もう、何を書いても許してもらえない。少女の顔に、不安と絶望が過ぎる。


「いったい、どんな話なら満足するの? さっきのは、少女漫画ではよくある鉄板ネタなのに……」


「小説のネタじゃねえよ! さっさとグロリアス城に侵入して、胡散うさんくさいボスを抹殺する予定だろうが! お前らのせいで、さっきまで死闘をしていた緊張感が嘘みたいじゃねえかよ!」


 アリスちゃんの怒りの言葉に、少女が答える。どうやら意味が分からなくて聞き間違えているようだ。


「えっ、うんこ臭い?」


「おいおい、いくら敵が悪い奴でも言って良い事と悪い事があるぞ。お漏らししたなんて周りに知れたら、社会的に抹殺されるレベルなんだぜ? 50代の格好付けてるイケメンに、そんなレッテルを付けたらイメージが台無しじゃねえか!


 まあ、俺は15歳の時に脱糞だっぷんをしちゃったけどね、テヘペロ。近くにコンビニがなくて、ガソリンスタンドとパチンコ屋が有ったんだけど、学校に着くまではもつだろうと思ったら、結果は……」


「いやーん、うんこ臭いのはキングじゃない! でも、過ぎ去った過去の思い出は、次第に武勇伝へと変化して行くのよ。トイレが我慢できずに漏らしてしまった多くの人々に支持される結果になるわ。賢くてイケメンのキングでも、そんな失敗があるんだと……」


「そうか? 実際は、社会的に抹殺されるかとヒヤヒヤもんだったんだぞ! 引きこもりにならなかった自分を褒めてあげたい!」


 アリスと真火流まひるは、はしゃぐオッさんと少女を無視して話し始めた。今、何を言っても奴らを暗殺者の顔に戻す事はできない。頭の中は、修学旅行中のバカップルと同じ知能なのだ。それでも、奴らしか城の鍵を開ける手段を持っていないのだ。


「もう、コイツらが好むキーワードを教えて、城の中を探索させるしかないな。普通に交渉しても、今のコイツらには伝わる事はないだろう」


「分かりました。私に任せてください!」


「おお、自信有りか?」


 真火流まひるは、頭の中が中2の2人に近づいていく。2人は、外の木に飾ってあるイルミネーションを見てウットリしていた。そこに、2人に鍵を開けさせるヒントが隠されていたのだ。


「お城の中では、すでにパーティーが始まっていますよ?」


「パーティー? 行きたい、行きたい! ケーキ、ケーキ!」


「この城の鍵さえ開けられれば、豪華なごちそうとケーキが待っていますよ?」


 キングという男は、真剣な顔付きの表情になる。40代のオッさんだが、出来る男の顔をしてふところに手を突っ込む。おそらくそこに、カードキーを収納しているようだった。


「ふん、コレが、俺こそがこの城の主人あるじである証拠さ!」


 彼は、誇らしげにカードキーを空に掲げていた。格好を付けていても、やはり心は中2の修学旅行で止まっているようだ。まあ、この城の鍵が開けれれば、彼の思い出とかどうでも良い。アリスは急かすように彼をあおる。


「早く、早く!」


「おいおい、ケーキを貪り食いたいからって焦るなよ。ケーキは人数分均等に分けるんだぞ。ちゃんとミリ単位まで測って……」


「どうでも良いから早くカードキーを門のセンサーに近付けて反応させろ!」


「はいはい、アリスちゃんが興奮しているから急ぎますよっと!」


 キングがセンサーにカードキーを当てると、ピッという音がなった。これで扉が開いてしまえば、グロリアス城は一気に戦場になってしまうのだ。

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