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『賢者タイム』という科学的過ぎる魔法制限 〜賢者魔法のご利用は計画的に〜  作者: ぷれみあむ猫パンチ
第3章 『闇の(ダーク)道化師(クラウン)』との死闘
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第70話 グロリアス城へ向かう途中で

 私とカステラのコンビネーションによって、なんとか恐るべきスナイパーから逃げ出す事ができた。2人の賢者は怪我をしているが、大怪我ではないようだった。私の判断力を認めたようで、生意気な態度だった炎の賢者も少し優しくなっていた。


「ふう、助かった! ローレンとか言ったか。お前がスナイパーと目が合った時は死んだかと思ったぜ。完全に窓ガラスの目の前だったもんな。まさか、火球を撃って目隠しにするとは思わなかったぜ。お陰で、他の馬車に飛び移る時間が作れた」


「全く、とっさの判断にしては上出来ですよ。一瞬にして形勢が逆転し、今度は奴らが逃げなければいけない状況になった。おそらくスナイパーの2人は思わぬ火球攻撃を受けて即死したと思いますが……」


 炎と風の賢者の経験からすると、あのタイミングで火球攻撃を喰らえば、大抵は逃げ切れずに焼け死んでしまうのだ。しかし、遠くから敵の声を聞き取れるカステラがそれを否定した。火球で視界が妨げられても、2人の会話は続けられていたのだ。


「いいえ、まだ終わってませんよ。敵の賢者能力アビリティーなのかは不明ですが、どちらかに相当素早い人物がいますね。まるでキマイラ並みのスピードを持っているようです。更に、別の敵が私達をピッタリとマークして来ています!」


「何、馬鹿な……。完全に巻いたと思ったのに……」


「どうやら、飛行能力を持つ人物のようです。火の匂いがずっと付いてくるのを感じます。1時間ほどすれば賢者タイムが来るのでしょうが、それまでは追跡は逃げ切れないでしょうね。どうしましょうか?」


「ほう、火の匂いを感じるか……。ならば作戦は簡単だ。人気のない場所まで奴を引き付けて、同じ炎の賢者である俺が出て行く。奴は賢者タイム寸前だし、俺の有利な条件だ。城には後で追い付くから先に行け!」


 炎の賢者が死亡フラグを立てながら格好良く宣言すると、風の賢者が心配する。もうコレは、城に戻って来れない可能性が高いのだ。私とカステラも彼の死亡フラグを感じ取っていた。


「私も一緒に戦いましょうか?」


「いや、俺も炎の賢者の端くれだ。同じ属性の敵が現れた以上、ガチで戦って勝ちたいんだ。ぶっちゃけ、お前やグロリアス、ジャックやダイアナに比べると俺は貧弱だ。家族をないがしろにして、ようやく手に入れた四天王『風林火山』という地位だ。


 ここらで同じレベルの敵と戦って、賢者能力アビリティーを向上させたいと思っていた。俺には、まだ13歳の娘がいるんだ。そいつを残して、死ぬ気はさらさらないぜ。それに、最近は会ってさえもいない。最高レベルの賢者達に付いて行くのに必死でな。


 ここで強敵を1人倒して、自分の娘に胸を張って帰るぜ。自分は、史上最強の炎属性の賢者だってな! そうしたら、俺の宝物の娘を、大切に大切に育ててやるつもりだ。ローレンやカステラにも負けない最高レベルの賢者をな。


 だから、お前らには生きて貰わなければ困るんだよ。分かったら、俺を可能な限り治療して、さっさとグロリアス城に向かえ。絶対に、この戦いで死ぬんじゃねえぞ。俺の宝物のライバルになる人物なんだからよ!」


 炎の賢者は、死亡フラグを無数に立てながらそう言っていた。もう、コレは助からないだろうと感じるが、男のプライドというべきなのか、風の賢者も阻止する事はしなかった。怪我の治療をして、彼を戦場へと向かわせていた。


「これ、もうダメだ!」


「なんで死亡フラグを立てまくるんだろうね?」


 私とカステラは、炎の賢者は死ぬ者と考えていた。それは、当の本人さえも覚悟していた事だった。風の賢者に小声でこう語る。


「お前の方が賢者能力アビリティーとしては優秀だ。だが、炎と風の対決ならば、炎の方が圧倒的に有利だ。ならば、俺1人が奴と戦い、お前らを逃す方が良いだろう。このままグロリアス城まで着いてしまえば、真っ先に殺されるのは彼女達だ。


 ならば、できるだけ足止めをして、お前らを逃した方が生き残る可能性は高いだろう。それに、俺が成長する可能性も残っている。今、全員が生き残る可能性が高いのは、この方法しかないと踏んだだけだ。早く行け!」


「ふん、世界一の炎の賢者になって城へ来い!」


 こうして、敵の『殺人神父マダーファザー』を引き付けながら、戦い易い場所を選ぶ。他の者に被害が出ず、炎の賢者が有利になる場所を探していた。30分ほどして、炎の賢者が覚悟を決めていた。


「じゃあ、勝ってくるぜ!」


 炎の賢者は、走行中の馬車の扉を開けて、『殺人神父マダーファザー』と同じようにジェット推進の技を使って空を飛んで行く。10秒ほどで『殺人神父マダーファザー』と相対していた。


「ほう、私が炎の技を使うと知って、あなたが対抗と足止めの為に出て来ましたか。言っておきますが、私もあなた達の賢者能力アビリティーを侮っているわけではありません。私があなた方と戦うとなれば、真っ先に戦うのはあなただと予想していましたよ」


「そうかよ。なら、お前はここで終わりだぜ。俺がお前を消し去って、潜伏先へ戻るだけだ。お前らの人数は少ない。1人消しただけでも、かなりこちらが有利になるからな。悪いが、全力で倒させてもらうぜ!」


「受けて立ちましょう!」


 広大な荒野の上空で、2人の炎の賢者が激突し始める。空中戦になるかと思ったが、『殺人神父マダーファザー』は意外な行動をして来た。ジェット噴射を止めて、広い荒野の大地に降り立ったのである。


「なんの冗談だ? 制空権がある方が有利じゃないのかよ?」


「ふふ、私はあなたと違って、さっきまで飛んでいたんですよ。ならば、空中戦は不利になる可能性が高いです。なので、地面に降りて燃料の消費を抑えさせてもらいますよ」


「そうかよ、なら遠慮なく行かせてもらうぜ!」


 炎の賢者は、勝利を確信していた。空中戦で戦えれば、彼が圧倒的に優位に立てるのだ。彼が攻撃しようとしていると、『殺人神父マダーファザー』が顔を赤くして照れながら自己紹介する。何か、良い事があったようだ。


「実は、私にも本名が有りましてね。『神崎かんざき真火流まひる』と言うのです。あなたの名前を聞いておきましょうか?」


「ふん、ニコニコ笑って、気持ち悪いな。冥土の土産に教えといてやるよ。史上最強の炎の魔術師『ベネット・カーター』だ!」


「そうですか。では、心置きなくあなたを殺せる!」


 ニコニコと笑っていた男とは思えないくらいに、一気に顔の表情が険しくなった。この戦いは、命とプライドをかけた男の勝負なのだ。


 絶対に勝たなければいけないという事を、2人の賢者は理解していた。カーターも攣られるように真剣な顔つきになり、炎の攻撃を空中で繰り出していた。彼は、機動力を利用して、一気に勝負を決めるつもりのようだ。


(奴が地面に降りた以上、空中での長期戦は俺が不利になる。ならば、機動力と確実な攻撃で一気に奴を叩く。炎系において、最も打撃力が強いのは、炎と土を合わせたマグマタイプだ。空中から重力とジェット噴射を合わせた最大加速を使い、一撃でこいつを粉砕する!)


 カーターは、両腕を岩石に変えて、体は鉄という攻守のバランスの取れた姿になった。並大抵の攻撃力では、カウンター攻撃を食らってもダメージを受ける事はない。彼の必勝パターンといえる姿だった。


「これで終わりだ!」


 空中から急降下して、余裕の表情を見せる真火流まひるを頭上から攻撃して来た。空気の摩擦と炎の能力により、彼の両腕が変化する。触れると鉄まで溶ける高温の拳をまとっていた。


「灼熱の(バーニング)爆発ブラスト!」


 しかし、真火流まひるはやはり余裕の表情をしたまま、彼が急降下して来るのを誘っているようだった。カーターは勝利を確信して、真火流まひるの頭上を全力で突っ込んで来る。

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